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忙しそうな定食屋さん

駅地下の飲食街でお昼に入った定食屋さんは、時間帯が相まってとても忙しそうだった。丼ものやおそばを主体にした、狭いけど雰囲気のある和の定食屋さん。主に調理するご主人風の人が厨房に、主に食器洗いのスタッフさんがシンクに、主に座席案内・注文取り・配膳・会計の2人がホールを回している。昼の12時半前、混み具合maxの時間に入った。空席はない。5分ほど待つ。

来客、会計、座席のアルコール消毒、下膳、次の配膳、お冷の減っている客へのお伺い。ホール係のお2人の所作は見ていて見飽きない。座席に案内されるまでの約5分、そういう・・・・YouTube動画を観ているようだった。

忙しそうだし実際忙しい。フル稼働だ。しかし気の毒には見えない。大変そうだけど気の毒ではない。見てられないとかそういう状態ではないのだ。焦る様子がない、待ち客が苛立つ雰囲気がない、ある程度待たせるのは仕方がないと割り切った上で途切れなく順番にきっちり対応する、待たせた客には丁寧にひと声掛ける。僕にはできないなぁ。

臨機応変さがある。空席の下膳と消毒がまだの状態で次の客が来た。
「少々お待ちくださいね。今お下げします」
お下げしようとした時に別の食べお終わった客がレジの方へ現れた。こういう時、飲食バイト経験のない僕は分からないのだが、「下膳と客案内」・「会計」、どっちを優先するのか。

スタッフさんは会計の客を優先した。その間にもう一人のスタッフさんが下膳して別の注文の配膳準備の為に一時中へ入った。下膳しただけで、テーブルの消毒清拭はまだ済んでいない。本来は消毒清拭が済んでからの座席案内だ。しかし待ち客はそんなことは知らない。あそこが空いていると見るや否や下膳された席へ、案内される前に着席する。会計対応していたもう一人のスタッフさんはその様子を見ていたが、それはもう良しとした。すでに着席してくつろぎ始めている客のところへ消毒液を吹きに行くことはしない。流れ的には消毒が望ましいのだろうけど、全体の動きや客の状況から、そのターンに関しては消毒のプロセスをカットしたのだろう。100%を目指せない時は80%のパフォーマンスでも良しとする。そんな臨機応変さがないと、その時間帯を乗り切ることはできないのだろう。優・良・可のうち、良でいいと。

なんであんなに失敗しないのだろう。なんであんなに狭いスペースで配膳下膳を繰り返し、ガシャーン、ドシャーン、ベチャーンなどどひっくり返したりしないのだろう。不思議だ。

僕ならきっとひっくり返している。夏ならまだいい。冬で厚手のコートなんかを座席の背もたれに掛けている客が多い場合、コートにお箸の先を引っ掛けたり、コートのせいで狭くなった通路に何かしらをこすって何かしらを倒したりするだろう。

秋も危ないかもしれない。地方都市とはいえJRの主要駅地下街。キャリーケースの観光客も増える。狭い店内の通路を更に狭くする。キャリーケースの上に積んだお土産の紙袋の端に何かしらをこすって何かしらを倒したりするだろう。

空席ができるまで5分、注文の品が届くまで結局30分ぐらい待ったけど、全然不満はなくむしろ満足だった。