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虫とバックボード

自転車で帰宅中、半開きの口に何か虫とおぼしきものが飛び込んできた。虫とおぼしきものは十中八九虫だ。虫を食った。喉の奥の壁にぶち当たったのがわかった。虫を飲み込んだ。

咄嗟にペッペッてしたけど出てこない。もしかしたら入ってないかも。入ったような気がしただけで、ほんとはもっと早い時点で吐き出しに成功していたかもしれない。でもそれも確証はない。なんか飲み込みきれない米粒のようなものが喉の奥に残ってる感じがするからだ。

もう一つ、飲み込んだであろう証拠に近い現象がある。半開きの口に飛び込んできたソレは、喉の奥の壁に当たってそのままゴールインしたということだ。

バスケットボールでは直でシュパっとゴールが決まるのも爽快だが、上手くバックボードの跳ね返りを使って入れるのも技アリで気持ちいい。入射角=反射角の性質を利用している。

僕の喉の奥はバックボードだった。半開きの口に直で放物線を描いて食道に消え入るよりも、バックボードプレイの方が確実にINする。何しろ入射角と反射角だ。喉の奥の壁にぶち当たった虫は、より正確に加速されて僕の体内に落ちたと言える。反射したソレが向かうベクトルは僕の胃を正確に捉えていた。

以上の状況証拠から、僕は虫を食ったと思われる。帰宅してシャワーしながら口に四本指を突っ込んで出そうとしたけど、出てこない。喉の奥に残る米粒ぐらいの位置まではソレが戻ってくるのは分かるが、それ以上ソレをおびき寄せることはできなかった。何せ自転車で帰ってきたもんだから、路面の振動でだいぶ奥への落ち込みに拍車をかけたに相違無い。何度か希望とあきらめを繰り返したが、もうソレは出てくることは無いとみて嫌々飲み込みきった。

僕はほぼ確で虫を食った。ちなみに昆虫食をトライする予定は今のところない。