福島県の農業の未来を統計数字からみていく
平成30年度版福島県勢要覧という本を入手しました。
福島県の統計課が毎年出版している、福島県のデータブックです。
統計調査をまとめて1冊にしたもので、平成27年時点での数字が色々と載ってて、ながめているとちょっと楽しいです。
●高齢化と後継問題が深刻な農業
日本の食を支える農業。
その農業ですが、後継者もなく高齢化が進み、廃業して耕作放棄地地が増えています。
じっさいに、私の周りでも雑草だらけの畑や田んぼが増えています。
じゃあ、どのくらい深刻な問題なのか、福島県勢要覧から、農業についての数字をピックアップしてみたいと思います。
あくまで統計上の数字なので、個別の実情に合ってるかどうかは別問題なのを前置きしておきます。
※注釈がない数字は、すべて平成27年のものです。
●福島県の就農者の数
福島県の人口は1,914,039人
15歳以上65歳未満の生産年齢人口が1,120,189人で、65歳以上の老年人口が542,384人。合わせると1,662,573人。
これが福島県の働ける人の数。
実際に働けるかどうかじゃなく、年齢的に就労できる人数ってことです。100歳で野菜を作りに畑に出てる人もいれば、若くして病気に臥せってる人もいますので、あくまで統計数字上ってことです。
ちなみに、農業収益が年間50万以上、もしくは経営耕地面積が30a以上ある農家を「販売農家」と言います。自宅の庭で食べる分だけ作ってますという方(自給的農家)との区別ですね。
その販売農家の人数が、65,076人。
つまり、福島県の15〜100歳の働ける1,662,573人のうち販売農家が65,076人ということは、農業に就業している割合が3.91%ということになる。
●年代別就農者数
福島県で販売農家をやってるのは、65,076人。
この中に若者はどのくらいいるんだろうか?
ということで、年代別の割合を調べてみる。
15〜64歳までの生産年齢で販売農家をやってる人は、20,933人。
65歳以上の販売農家数が、44,143人。
じつに2倍近くが65歳以上でした。
詳しくみていきます。
30歳未満の販売農家数 559人 全体の0.86%
30代の販売農家数 1,361人 全体の2.09%
40代の販売農家数 1,954人 全体の3.00%
50代の販売農家数 6,672人 全体の10.25%
60〜65歳の販売農家数 10,387人 全体の15.96%
これが、福島県で販売農家をやってる若い人の数であり、県全人口1,914,039人のなかにわずか1.093%しかいません。
●農家の収入
さきほどまでは、人数でみていきましたが、今度は販売農家をやっている1戸あたりの所得額をみていきます。
福島県の販売農家の所得平均額は約458万円。
このうち、農業所得が143万円。
農外所得(兼業農家の給与等)が138万円。
年金等所得が169万円。
農業生産関連事業所得が86万円。
農業以外の所得が64.4%を占めていることになります。
●耕地面積と所得の関係
※ここからは福島県ではなく、東北全体の平均値になります。
福島県の農家は、所得の半分が年金やら給与やらで補填されていると言っていいでしょう。
では、どのくらいの耕作地があれば専業でやっていけるでしょうか?
面白い数字が出ました。
耕作地が0.5ha未満の農業所得が101万、農外所得が168万、年金が247万。
耕作地が0.5〜1.0haになると、農業所得ががくっと減って43万円で、農外所得が206万になります。年金は160万。
耕作地が1.0〜2.0haになると、農業所得が58万になり、農外所得が101万にがくっと減ります。年金は207万。
0.5haくらいの、小さい田んぼなら兼業できるけど、1〜2haになると、どっちも中途半端になって、所得ががくんと落ち込むようです。
農業所得と農外所得が逆転するのが2.0〜3.0haの耕作地をもってからになります。
さらに、農業所得で300万をこえるには、5ha以上の耕作地をもたなければいけません。
耕作地が広くなれば機械の導入もスムーズなんでしょうけど、3haくらいだと、機械を入れるか入れないか、どの程度のスペックにするか、でかい機械はいらないけど、小さい機械だと割高になるし、など課題が出てくるようです。
●福島の農業の未来は?
以上の数字をみると、福島県の農業は年金をもらってる世代に依存しているように思えます。
第一次ベビーブームの68〜70歳の方達ですね。
年金収入たよらなければ、農業を維持できない。
兼業で農外所得がないと農業を続けられない。
こんな状況で、若い人の新規就農を推進しても、ほんの一握りの人しか残らないと思っています。
自治体は、新規就農者などに助成金や補助金を出しているけど、想定しているのは個人だと思う。
起業して農業をやろうとした場合は想定していないのか、そういった助成事業はみたことがない。
これからは、親の後を継いで3haくらいの耕作地をやっていくようなスタイルでは、やっていけないんじゃないかな。
休耕地を借り上げるなり入手する手段を容易にし、資金面をはじめ起業支援事業を手厚くし、個人経営ではない農業経営の方向にシフトさせていくのが、自治体の役割になってくるんだろうと思います。
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