脱出後の対策[ドメスティックバイオレンスをうけたら その7]
加害者と離れたからといって、油断してはいけません。加害者の世界観において、ターゲットがいなくなるというのはストーリーが破綻する非常事態です。ストーリーに整合性をつけるためにあらゆる手をつかいます。ターゲットを取り返そうと執拗に連絡を取ってきたり、あるいは何もなかったかのような普通のメールを送ってきたりします。また、お金やあなたの大事にしていたものを口実に接触しようとしてきたり、子どもや親などの身内、友人や職場関係の人をつかって、あなたに揺さぶりをかけてくる場合があります。そして時には信じられないような行動に出ます。しかし、あなたはそれに動揺してはなりません。
[ドメスティックバイオレンスをうけたら その6]でもあげた、警察や病院、連絡先を明かさないなどの対策をした上で、さらに有効だと思えるものをあげるとしたら、以下の3つです。
・DVとモラルハラスメントについて学ぶ
・第三者を挟む
・縁を切る準備をする
[DVとモラルハラスメントについて学ぶ]
ドメスティックバイオレンスやモラルハラスメントをうけると、自分が悪いからだと思い、なかなか被害を訴えることができません。加害者や加害者サイドの人間はそういう思考の隙をついて、あなたを責めてきます。そういう思考回路から離れられないとまた餌食にされてしまいます。今後の交渉を有利に進めるためにも、まずは相手のやり口を知りましょう。
ドメスティックバイオレンスやモラルハラスメントは精神的な病気や障害なのでしょうか? わたしにはよくわかりません。精神科医でも精神疾患の診断は困難です。わたしは、素人が安易に精神疾患かどうかを判断することは危険だし差別につながるので、あまりしない方がいいと思います。ただ、そのような知識を持っているのと持っていないのとでは、対策の取り方が変わってきますし、相手の行動を理解しやすくなることも確かです。なぜなら、相手の行動パターンがそれら症状と似ていることがあるからです。また、相手が「悪いとわかっていなくてやっている」のか「意図的に傷つけてそれを楽しむためにやっている」で対策は変わるので、それら行動パターンを知ることは脱出からのヒントになります。逆に実際にそういう病気だったり障害だったりした場合は、治療や受診が必要な場合もあります。あなたはそれをサポートしないと思うかもしれません。しかし、そんなことはないと思います。病気や障害と、あなたを傷つけた事実は別だと思います。それは切り離して考えた方がいいです。
また、生育歴が影響している場合もあります。これは、DVやモラハラ家庭で育った人は加害者になると言っているわけではありません。相手の家族にそういう気質の人がいた場合は、彼らからも脱出する必要があるからです。加害者の家庭がどんな環境だったかと彼らの性質を知っておくことは、対策のヒントになります。もし可能であれば、相手の家族や親しい友人や以前に恋人関係にあった人に、相手に暴力をふるわれたことがなかったか聞いてみてください。
ドメスティックバイオレンスやモラルハラスメント以外のキーワードとして知っておきたいのは以下のような言葉です。
境界例/毒親/人格障害/発達障害
心理学の勉強をするのではないので、難しい本よりも、まんがやエッセイなどの読みやすく具体的な体験談が載っている本や、そのような体験を記録しているブログ等がいいと思います。トラウマで読めなくなったりするので、加害者の描写があまりにリアルなものや加害者批判が強いものや加害者の主観で書かれたものはやめておいた方がいいでしょう。加害者がどういう行動に出たかと、それからどう逃れたか、どういう対策がきいたか、その人たちがどう立ち直ろうとしているかや立ち直ったかという部分を中心に読むといいと思います。
わたしが読んでいいと思ったのは、以下の本です。
『母がしんどい』(田房永子)
『人格障害かもしれない』(磯部潮)
『発達障害かもしれない』(磯部潮)
ブログは、
c71の一日
「夫の母が毒親でした」
「『毒親』『人格障害』と思う実母から逃走中の娘」
などが事例と対策が具体的でわかりやすく、文章が読みやすくてしっかりしていて、フラッシュバックが来たり加害者目線で傷つけられることがなかったのでよかったです。他人の文章や体験を読むことは、自分の事例を見つめることにつながります。
[第三者を挟む]
相手は何らかの形であなたに接触をはかろうとしてきます。その際、相手は二人きりになろうとしますが、絶対に第三者を挟むようにしてください。1対1で会わないことが原則です。
相手はさまざまな手をつかいます。たいしたことではなかったと思わせるために、何もなかったかのようにふるまう、以前のような関係が築けると思わせるためにあなたにやさしくして変わったと思わせる、あるいはもうあなたが戻ってこなくなるのがわかるやいなや攻撃的になる、自分が不幸な境遇であると強調して情に訴えかけるなどです。ひどい場合は自殺するとか危害を加えると脅したり、実際に行動を移す場合もあります。
あなたはそのたびに動揺し、不安定な気持ちになり、どうして自分がこんなことをされないといけないのかという悲しみや怒りにおそわれます。あるいは、自分が相手を傷つけたせいかもしれないと自己嫌悪や罪悪感にさいなまれます。
しかし、相手はいい大人であることを忘れてはいけません。あなたが相手の人生を全部背負い込む必要などないのです。法的にも道徳的にもあなたは何も悪いことはしていません。あなたがあなたの人生を生きることは正当な権利です。自分の思いどおりにならないからといって、相手を傷つけていい理由なんかないのです。決してやけくそになってはいけません。
相手から何らかの反応があった場合、決して一人で抱え込んではいけません。また、相手と一人で対峙しようとしないでください。全部判断に迷うときは、必ず専門家、警察等の力を借りてください。
[縁を切る準備をする]
相手はあなたにゆさぶりをかけてきます。難しいかもしれませんがなるべくそれに左右されないで、これからのことを考えるようにしてください。まずは相手となるべく早く縁を切りましょう。電話番号、アドレス、住所などを変えられるようなら変えた方がいいと思います。
もし結婚している場合は、相手方の家族、親族等とはすみやかに離れましょう。その人たちがどれほどいい人でも、今までお世話になっていても、迷惑をかけていても、病気やけがや金銭的な理由であなたの援助を求めていても、ずるずると付き合いを続けてはいけません。
子どもがいるとか、決めにくいならすぐではなくてだんだん離れていくのも手です。その人たちが今までに少しでもあなたを傷つけたり、本心では相手の味方であるそぶりを見せたことがあるなら、縁を切った方がいいと思います。加害者は悪くないとか、老後が心配とか、悪者になりたくないという理由であなたにいい顔をしているだけかもしれません。そんな自分を冷たいとか人でなしとか情がないと思いますか? 結婚相手の親や親戚は他人です。離婚したら縁が切れるものなのです。そこまで考える必要はないと思います。
共通の知人や思い出の場所を少なからず失うことになるかもしれません。相手があなたの悪口を言っていて、向こうから離れていく場合もあるかもしれません。それをいちいち気にしない方がいいです。どこかで「いい人と見られたい」とか、「冷たいと思われたくない」という気持ちをもっていませんか? 寂しいのも、いい人と見られないのも一時的なことです。あなたのそういう面は仕事上やお友達にとってはやさしさや面倒見がいいという長所になりますが、今のあなたにとっては、命とりにもなりかねません。相手の関係者とは絶縁するという前提で行動した方が、のちのちのあなたの人生にとってメリットになると思います。
わたしの場合
[離婚前]
わたしの場合は別居中はほとんど連絡がありませんでした。たまに趣味のイベント等に一緒に行こうというメールがきました。相手は「わたしはいつまでもつまらないことで怒っている」「いつまでも怒っているから話し合いができない」という立場だったので、謝罪は一切ありませんでした。
話し合いの場を設けて、今後暴力をふるわないと確約すれば、帰ってもいいと考えていたのですが、相手が一向に応じる気配がありませんでした。離婚するか決めていませんでしたが、配偶者の前の恋人にも暴力をふるったことがわかったので、改善する見込みはないと判断し、離婚の決意をしました。
長期戦になると思っていたので、まずは別居を3か月した上で、離婚に同意できないなら、調停に持ち込むつもりでした。3か月別居していれば、婚姻関係が成立していないと見なされるので調停が優位にすすむと考え、まずは別居している事実を作ることにしました。
お金については、相手に慰謝料の支払い能力がないのと、一刻も早く離婚したかったので、請求しないことにしました。離婚届は郵便で実家を介してやりとりして、直接連絡をとらないですむようにしました。相手も書類に記入したので、離婚に同意したものとみなし、わたしが一人で離婚届を提出して離婚が成立しました。
[離婚後]
離婚後は毎日嫌がらせメールがきました。わたしはすぐに着信拒否設定と受信拒否設定をし、警察に伝えました。相手は携帯で着信拒否、受信拒否されていることがわかると、今度はパソコンのメールに嫌がらせのメールを送ってきたり、SNSのアカウントの乗っ取りを始めました。それが犯罪であると言うとやめました。着信拒否設定と受信拒否設定は便利ですが、相手を刺激することにもなりました。いい方法だったかはわかりません。
電話とメールの連絡ができなくなると、今度は残っている荷物や、携帯のことなど理由に、会おうとしてきました。わたしはなるべくパソコンのメール等で連絡をとり、どうしても会わないといけないときは自分の親族と一緒に会うようにして絶対に2人きりにならないようにしました。
どの手も有効でないとわかると、最終的に自殺するというメールを送ってきました。わたしはもし実際に自殺していて、自分のせいにされたら嫌だという思いがあり、警察に電話しました。警察の方は、自殺の可能性があるからということで安否確認をしてくれました。元配偶者は自宅で寝ており、口頭で注意をしてくれたそうです。相手はわたしに愛想をつかされるためにそういうことをしたそうです。
[絶縁]
それまでの嫌がらせでだいぶ消耗していたわたしは、それをきっかけに本当に嫌気がさし、相手とも相手の両親とも絶縁を決意することにしました。
相手の親と絶縁できなかった理由は2つあります。1つ目は一方の親が闘病生活を送っていたこと。そしてそのタイミングが離婚と重なったこと。2つ目は元配偶者の無職時代に金銭的な援助をうけていたことです。相手の親はあからさまではありませんでしたが、わたしに見捨てられたらだれにも頼る人がいないとか、離婚のせいで体調が悪化したというような言い方をしました。わたしはそのせいで罪悪感をもってしまい、なかなか離れられませんでした。しかし、自殺する電話事件のあとわたしに謝罪の言葉がなく、わたしの離婚のせいで落ち込んでいるからだというようなことを言われたので、もうやっていけないと思い、二度と電話しないでくれといって、連絡を断ちました。
絶縁方法は以下の通りです。まず、携帯電話、パソコンのメールアドレスを変え、パートをやめてそれまで住んでいた引っ越しました。パソコンのアドレスは解約までに時間がかかり、その間しばらく元配偶者からは、元配偶者の親の病状を知らせるメールが毎日来ましたが、全部無視しました。パソコンのアドレスの連絡が完全につかなくなり、連絡は途絶えました。離婚後に亡くなったことを知りましたが、関係ないので、葬儀には出ませんでした。
絶縁後は、相手のSNSを監視の意味でときどき見ていました。わたしへのあてつけをときどき書いていましたが、そのうち書き込み自体がほとんどなくなりました。また、同じく監視の意味もこめて、共通の友人からときどき様子を聞いていました。
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