自分が何をされたのか理解する[ドメスティックバイオレンスをうけたら その2]
チェックリストを利用する
ドメスティックバイオレンスをうけたときにまず必要なことは、自分が何をされたかということを理解することです。[ドメスティックバイオレンスをうけたら その1]で書いた支援センターへの電話等が難しければ、ドメスティックバイオレンスのチェックリストをやってみることをおすすめします。インターネットやDVをあつかった本には、さまざまなチェックリストが載っています。これをやると、第三者的な目から見て、自分がどういう状態にいるのかを客観的に判断することができます。
ただし、このときに注意したいことが2点あります。1つ目は「わたしの配偶者はこのタイプに当てはまるのか」という視点でチェックを行わないことです。ドメスティックバイオレンスをする人にはいろんなタイプがいます。もともとの性格の場合もあるし、精神的疾患や人格障害などを疑った方がいい場合もあります。しかし、素人目には判断できません。チェックが少ないからといって、ドメスティックバイオレンスをうけていないわけではありません。
2つ目は「ここまでされていない、ここまでの状態になっていないから大丈夫」という視点でチェックを行わないことです。チェックリストの項目には配偶者からされることの例として「行動を常に監視する」とか「働かせてもらえない」といった極端な例があがっていたり、被害者側の気持ちや精神状態について「いつもおびえている」とか「気力がわかない」とかあいまいでどの程度のことなのか判断がつかない質問が多いです。「DVをされていない」という予測のもとにチェックリストを使わない方がいいです。また、比較のために使うのもあまり意味がないと思います。極端な例と比較して今がそれよりましだからまだ我慢できるはずという気持ちでいては、相手に取り込まれます。まず自分が何をされたのかとどういう状態にいるのかという目安を把握するために使ってください。
典型例にとらわれすぎない
わたしが感じたのは、チェックリストというのは典型例しか載っていないため、判断が難しいということです。わかりやすいのは暴力をふるった後の反応です。リストによく出てくるのは「二度としない」とものすごくやさしくするというタイプです。しかし実際には、「相手が悪いからしつけのために」と言って暴力をふるうタイプ、「相手が悪いから暴力をふるって当たり前」だと思っているタイプなどさまざまな人がいます。
わたしの場合は、暴力をふるったことは悪いと思っているようでしたが、謝りもしないし開き直りもしませんでした。ひたすら無視をして、まるで何もなかったかのように日常を送ろうとし、わたしがそのことについて話し合おうとすると、うんざりとした態度をとり、わたしが根負けするまでひたすら逃げるという態度でした。このような例はチェックリストには出てきませんので、わたしは判断に悩みました。
しかし、典型的なタイプではないからといって、DVではないと判断するのは早すぎます。特に日本では男性が働き、女性が家事をするという家庭が多かったせいか、そういう家庭で起こりがちな事例が多いように感じます。しかし、実際にはカップルの性格、関係性や子どもの有無、どちらが経済的に家庭を支えているかなどによって出てくる事例とずれることが多くあります。場合によっては、DVに対抗しようとしたことがDVの事例にあてはまり、まるで自分がDVの加害者であるかのような錯覚に陥ることまであります。
わたしの場合
わたしの場合は、結婚1年半で暴力をふるわれました。子どもはいませんでした。経済的な分担は、配偶者が結婚してすぐに無断で仕事を辞めたために、そのあと配偶者が再就職するまで1年半くらいわたしが生活費を出していました。その後配偶者が再就職したあとは、生活費は全額うちに入れてもらい、小遣い制をとっていました。
金銭管理はわたしが行っていました。理由は、配偶者は欲しいものがあると必要な生活費を削ったり、友人や両家の祝い事を削ったり、借金をしてでも買うという、金銭管理にずさんなところがあったためです。
家事は最初は折半でしたが、途中でわたしが会社員から自宅で内職とパートをかけもちするようになってからは、主にわたしがやることになりました。配偶者が就職したあとは、まったくしてくれなくなりました。
わたしは最初チェックリストを見たとき、自分が加害者でその反撃に殴られたのではないかと感じました。なぜなら、わたしが生活費を払っている間に配偶者に浪費をされたときや就職活動をさぼっていた際に「誰のおかげで生活しているのだ」と言ったり、仕事を探すと言うのが口だけで全然行動しないときに、大声で怒鳴ったり、ひっぱたいたことがあったからです。しかし、それは今思えば配偶者がわたしに手を出すまでにしてきたモラルハラスメントに対抗するためにせざるを得なかったことだと捉えています。これらのいきさつについてはおいおい述べていくことになると思います。
自分の変化に注意深くなる
わたしはDVというのは表面に出ている現象だけを見ていると、わかりにくくなるものだと思います。「相手を支配して自分の思うように使いたい」というのがDVの本質です。そのための手段が暴力です。暴力は身体的なものだけではありません。また、その程度も関係ありません。言葉で傷つける、無視するといった精神的な暴力、お金を渡さないとか働かないとか借金をするといった経済的な暴力、無理やりセックスする、性的なからかいを言うといった性的な暴力も含みます。あからさまにやる人もいれば、巧妙にわからないようにやる人もいます。
そして、あなたがその暴力によって知らない間に相手の望むようなふるまいをしていたら、それはドメスティックバイオレンスをうけているということになります。自分がどんなダメージをうけたのかが重要です。暴力をうけてから自分が変化したところはありませんか? 人との比較ではなく、自分の変化に注意を向けた方が気づきやすいです。
一緒に居始めてからやせたとか、交友関係が狭まったとか、考え方が変わったとか、以前のあなたと肉体的、社会的、精神的に変わった点はありませんか? 友人や家族から指摘されたことはありませんか? それは気づくチャンスです。「そんなことないよ」とか「心配しないで」という前に、「どうしてそう思う?」とか「どんなふうに変わったと思う?」と聞いてみるといいと思います。わたしは何度も周囲の人に結婚してからやせたと言われましたが、そのことを深く人に聞こうとしませんでした。今思えば、ちゃんと聞けばよかったと思います。そのことをきっかけに、話せたかもしれないのですから。
※DVのチェックリストはインターネット上にいろいろなものが出回っています。「DV チェックリスト」などで検索してみてください。
※変化に目を向けたものとしては『新・気づいて乗り越える』(メディアイランド、2015)がよかったです。
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