第三者の意見を聞く[ドメスティックバイオレンスをうけたら その1]
第三者の意見を聞く
配偶者から暴力をうけたとき、まずしなければならないことは、第三者の意見を聞くことです。なぜなら一度暴力受け入れてしまうと、相手は許されたと思い、第二、第三の暴力をふるうようになります。そして、暴力が当たり前になると、そこから逃げようという気力も体力も経済力も奪われていきます。
しかし、まず殴られたときに最初に思うことは「わたしが悪かったせいかもしれない」ということです。暴力をうけた状況というのは人によって違います。傍目に見た場合に、被害者の方が悪く見える場合もあります。そして、被害者自身も暴力が悪いと思えずに、「そういう状況をまねいた自分が悪かったのではないか」とか「たまたま相手の機嫌が良くなかっただけだ」とか「わたしの場合は違う」などと暴力を受け入れようとしたり、自分が被害者であることを拒否する心理が働きます。まずは「暴力は悪い」ということ、「自分はドメスティックバイオレンスをうけた」ということを認める必要があると、わたしは自分の体験から思いました。その際に参考になるのが第三者の意見です。
わたしの場合
些細なことがきっかけで、20××年の夏、配偶者からの暴力を受けました。いきさつはおいおい書いていきます。わたしはその日の朝、前日からの仕事で大変疲れており、毎日作っていた弁当を作れませんでした。それに腹を立てた配偶者に、背中ごしに蹴られ、たたかれました。そのことにショックをうけて泣いていると、うっとおしいとさらに頭をたたかれました。そのあと配偶者は出勤しました。
わたしは茫然自失になりながらもショックでしばらく頭が回りませんでした。そして、殴られたことをきっかけに結婚以来がまんしてきたうっぷんが爆発し、「こんなにひどいことをされた」と泣きながら、あまり考えなしに実家と義実家に電話をしました。しかし、相手によってはこういう態度のせいで印象が悪くなったりすることもあります。今ではまずい対応だったと反省をしています。
実家と義実家への伝え方には細心の注意が必要です。なぜなら、関係性や相手の考え方によっては、「あなたのせいだ」「殴られる方が悪い」という二次被害を受けたり、「今回はこらえてほしい」「うちには帰ってこないでほしいと」というような言葉によって判断力を鈍らされたりする可能性があるからです。離婚をする、経済的支援が必要である、実家に帰りたいなど、実家や義実家も巻き込む可能性がある場合になってから、冷静にこちら側の要望やお願いや方針を伝える方がいいと思います。
ドメスティックバイオレンスの支援団体の場合
わたしがいいと思うのは、ドメスティックバイオレンスに関する相談を受け付けているNPO、政府のホットライン、地方自治体の家庭相談センター等のDV被害者の支援をしている団体に電話相談をすることです。
やはり支援のプロなのでドメスティックバイオレンスをうけたときにどうすべきかという一般的な対策をご存知なので、方向性を考える材料になります。
しかし、もちろんデメリットもあります。デメリットについてわたしが感じたのは2点です。1つは、電話がつながる時間が限られていることです。特に24時間いつでも受付みたいなところはほとんどなく、たいていが9時−5時、場合によっては曜日指定の団体もあります。また、たいていの電話は相談が立て込んでおり、つながりにくく、相談時間も十分にとってもらえません。
もう1つは、相談員のタイプによって、二次被害をうけたり判断力を鈍らされたりすることがあるということです。
わたしの場合は、1回目でけががありませんでした。その話をしたところ、ある団体の方に「命に関わるようなことをされている人もいるんですよ」というようなことを言われました。そこからは、はっきりとは言われませんでしたが、「そんな夫婦喧嘩の延長のような小競り合いでここで電話してこないでください」あるいは「たいしたことないことを大げさに言い立てている」という雰囲気を感じました。わたしはこの対応に非常に不満を感じました。なぜなら、大事にならないと相談するなと言っていると感じたからです。大事になるというのはそうされるまでわたしががまんするということと同じです。そして、そうなったら、そもそも逃げるという気力だって奪われているし、その分困難も大きくなっているはずです。これでは相談しようという気力がなくなります。
ただし、そんな人ばかりではありませんので、安心してください。別のある団体の方には「絶対2回目があるので、離れるべきです」と言われました。ここの団体の方は前者の団体の方が「ご主人」というような言葉を使っていたのに対し「夫」という言葉を使っていたのも印象に残り、この団体の方の言うことを信じてみようと、離れる決心がつきました。
このように、団体によって対応に差があります。めんどうかもしれませんが、2〜3つに電話することをおすすめします。
経験者の意見
わたしはそれに加えて、ドメスティックバイオレンスの経験がある人の意見も聞きました。経験者でかつ、現在はドメスティックバイオレンスから離れ、それに対して否定的な意見をもっている友人から話を聞けたことは、大変救いになりました。
経験者にも、渦中の人、乗り越えた人、ドメスティックバイオレンスをうけたけど否定的ではない人など、いろんなタイプがいます。当人の性格や状況、配偶者(恋人)の性格や実家や義実家との関係、経済状況などで、意見はだいぶ変わります。このときに注意したいのは、あくまでも参考程度に聞くこと、そして傷つくことを言われた場合に相手をあまり恨まないことです。相手はプロではありません。あくまでも、今後どういう対応をとるべきかと、自分がドメスティックバイオレンスをされたということを受け入れるための参考に話を聞くのです。
わたしが、聞いておいてよかったと思ったことは、相手の性格、どういうことをされたか、逃れた人の場合はどうやって逃れたかと、そのときの注意点です。相手のタイプによってはストーカー化しますので、その際にとった対応とされたことを聞いておくことは、相手の今後の出方を予測する材料になります。
最後に
ドメスティックバイオレンスは誰にでも起こりうることです。暴力をうけたときの恐怖、いやな気持ち、自分を踏みにじられたと感じた気持ち、相手に裏切られたという悲しい気持ちをどうぞ大切にしてください。そして、自分が特別な経験をしたというふうに思わないようにした方がいいと思います。そういう態度は人の反感を買い、さらにあなたを傷つけます。
自分の正直な気持ちを無理矢理押し込めて、「もっと尽くせば変わってくれる」「わたしが変わればやめてくれる」「あのときあんなことを言ったりしなければ」「自分の男性を見る目がないせいだ」とは決して思わないでください。自分を責めたり、卑下することは、決してあなたのためにはなりません。
それから、もしあなたの周りにドメスティックバイオレンスをうけた方がいたら、どうぞその悲しみや恐怖や、その方の意見を否定するのは避けてください。この人ならそういうことをされてもしょうがない、というふうに、暴力をふるった側の立場で話を聞いたり、言葉をかけることは、さらに追い打ちをかけることになります。そのことはさらにドメスティックバイオレンスをうけた人を傷つけ、回復しようという気持ちを削ぐことにつながります。もしあなたがそういうふうに話を聞くことができないなら、せめて相談センターの連絡先や、こういった体験談、本の存在を教えてあげてください。その方が有用です。
※わたしはパープルホットラインに電話しましたが、現在では使われていないようです。
※「DV 電話相談 24時間」や「DV ホットライン」等の用語で検索するのも手です。
このようなまとめサイトもあります。
※また、「居住地」と「女性センター」や「家庭センター」「男女共同参画センター」という用語で検索すると、地域でドメスティックバイオレンスの相談に乗ってくれる公共機関が探せます。
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