脱出の準備[ドメスティックバイオレンスをうけたら その6]
共存はできない
ドメスティックバイオレンス、モラルハラスメントからは、離れることがいちばんの解決策です。何回も繰り返しますが、共存の道はありません。それは[ドメスティックバイオレンスをうけたら その4]、[ドメスティックバイオレンスをうけたら その5]で加害者の考え方、世界観でひととおり見てきた通りです。
ドメスティックバイオレンスをうけたら、モラルハラスメントをうけていると気づいたらすぐさま相手と離れることを考えた方がいいです。なぜなら一緒にいればいるほど相手の世界観に取り込まれ、あなたは肉体的、精神的、経済的なダメージをうけ、脱出する気力、体力、経済力が奪われていくからです。心理学用語で共依存と呼ばれる段階です。そうなると、気づくのも離れるのも難しくなります。
具体的な脱出方法
[脱出の相談]
基本的には一人ですすめず、専門家に一度相談して脱出の準備を整えるのがいいと思います。わたしはまずは身内や友人より、専門家に相談すべきだと考えます。なぜなら彼らはプロであり、かつ、被害者側に立って考えるという立場の人たちなので、建前上ではDVやモラハラへの無理解によって傷つけられる可能性が少ないです。もし身内や友人が離れることに反対の立場だったら、あなたはうまく言いくるめられてしまいます。そうならないためにもまずは専門家に相談し、身内や友人からうけるであろう脱出への反対意見についての、法的な根拠、理論的な根拠を得た方がいいと思います。
・地域の女性センターやDVの被害者支援の団体
電話相談以外に、面談での相談に乗ってくれたりします。すぐ動けないなら、メール相談をしているところもあります。
・法律相談
法テラスでは条件によっては無料で相談をうけることもできます。地域の女性センターや法律事務所でも、30分程度で無料で法律相談に乗ってくれるところがあります。「居住地」「法律相談」「無料」などの検索ワードで探してみてください。
・DV関係の被害者が集まる掲示板
なかなか動けないならこういうところで相談するのもいいと思います。欠点は情報が整理されていないので、余計に混乱する可能性があるところと、理解のない人の発言により二次被害をうける可能性があるところです。
・警察
DV防止法では基本的には婚姻関係にある男女の身体的暴力の場合を扱うので、限られてしまいます。しかし、最近ではDVやストーカー被害を防ぐために、地域の警察署に対策室があるところもあります。いざというときのために話をしておくのは重要だと思います。
・病院
身体的な暴力があったらまずはどんなに軽くても病院に行って診断書を取ってきてください。わたしはこれをしなかったので、あとから後悔しました。
精神的なストレスが出ている場合も、自分の状態を把握し、のちのちの証拠とするために、できれば精神科や心療内科に行った方がいいです。病院に行くハードルが高ければ、出ている身体症状を見てくれる科を受診してもいいと思います。たとえば胃痛とか動悸がするとかで内科に行くとかです。
また、自分で病気かどうか判断に悩む場合は、自治体で電話や精神保健福祉センター等で心の相談に乗ってくれることもあります。電話相談等もありますので、「居住地」「無料」「精神保健」などの用語で検索してみてください。
[持ち物の整理]
引っ越しは配偶者にばれないようにするために、できるだけコンパクトにまとめた方がいいです。わたしは引っ越しのために隠してためておいたダンボールが見つかって、ばれてしまいました。なるべく秘密裏に準備してください。
今だと、ネットオークションでたいていのものは販売できます。服、CDなどプレミア商品なら引っ越し代くらいは稼げると思いますし、ネットオークションが難しいなら買取サービスもあります。たとえばBOOK OFFなら、宅配で不要品を取りにきてくれます。
持ち物は以下を用意しておくといいと思います。特にお金や保険関係と個人情報についての書類は絶対忘れないでください。あとから取りに来れないと思った方がいいです。チャンスは1回です。
それから、連絡先がわかるものは絶対残さない方がいいです。相手に利用されそうなもの、相手の有利になりそうなものは残さないことが重要です。
・当面生活できる服や食器や身の回りのもの
・仕事に必要なもの
・通帳、印鑑
・パスポートなどの身分証明書やお金や保険に関する証書
・大事にしているもの(配偶者には関係のない思い出の品、パソコンなどの高価なもの)
・年賀状や学校の名簿等、自分や自分の友人関係の連絡先がわかるもの(相手に利用されないように)
・健康管理のために必要なもの(薬など)
[仕事]
いちばんあればいいのが仕事です。それがあれば経済的に独り立ちできます。経済力は自信になります。できれば結婚前の仕事は辞めない方がいいですし、いざというときのために何らかの資格をとっておいた方がいいと思います。
仕事をしていない人は、できれば仕事を見つけてから脱出する方がいいと思います。地域の女性センターやハローワークで仕事についての情報が得られます。厚労省の求職者支援制度を利用すれば、月々お金をもらいながら職業訓練がうけられます。
ブランクがあるからと変に卑屈になってはいけません。加害者はあなたが仕事に就こうとすると邪魔しませんでしたか。そしてあなたを役立たずだとか、お前なんかどこにも雇ってもらえないと言いませんでしたか? 加害者があなたを支配するために仕事をさせなかっただけで、あなたに能力がないわけではありません。自信をもってください。
[お金]
脱出には資金が必要です。新しい住居を借りる資金と生活雑貨をそろえる資金、2・3か月分ほどの生活費があると安心です。自分の貯金は夫婦で共通の貯金と別にしておいた方がいいです。また、結婚前にそれぞれの貯金を合算しない方がいいと思います。
仕事と別に、資格を取るとか副業とか、何か別に資金を稼ぐ手段を作っておいた方がいいです。株とかギャンブルは才能があるなしにかかわらず、リスクが大きいのですすめません。
[住居]
実家に帰れるなら帰ってもいいと思いますが、仕事や家族関係が難しい場合は、部屋を借りたり、母子寮やシェルターがあります。わたしはレオパレスを借りました。家具や家電がついていて、初期費用は20万円ほどでした。特に厳しい審査はなかったです。あとは、そこは永遠に住む場所ではなく、相手と離れるための仮のすみかと思っておいた方がいいです。
[引っ越し]
邪魔される可能性があるので、出張、旅行、帰省等できるだけ相手が確実に長期的に留守をするすきを狙ってください。
友人とか身内の手助けがあればいいですが、彼らの意見や都合にあまりにも左右されるようであれば、一人でやった方が早いと思います。民間の引っ越し会社は高いし相手の都合に左右されやすいのでおすすめしません。費用がかかるかもしれませんが、少ない荷物であれば確実に時間に来てくれる宅急便などを使ってすこしずつ運ぶ、宅急便会社の引っ越しパックを使う、赤帽などの運送屋さんなどを使うのがおすすめです。
[連絡先]
決して新しい居住地を相手に知られてはいけません。親族なら住民票を取れたりするので、閲覧を制限する制度があります。しかしこの制限は結構ハードルが高いようなので、最終手段と思っていた方がいいです。くわしくは「住民票 閲覧制限」などの言葉で検索してみてください。わたしは緊急の場合がなければ、住民票はしばらく移さなくてもいいと思います。
次に、新しい住所が決まったらすぐに転居届を出してください。郵便物が届く可能性のある人には新しい住所が決まったらすぐに知らせ、引っ越し日以降は必ず新しい家に届けるようにしてもらってください。なぜなら、あなたの引っ越し後に引っ越し前の家に郵便が届いた場合に、それを口実に相手が会おうとしてくるからです。
この時点では友人などに引っ越ししたことを伝えなくてもいいと思います。あなたが引っ越ししたことを知らせるのは必要最小限にした方がいいと思います。どこから居場所がもれるかわからないので、不用意に引っ越ししたことや引っ越し先について話さない方がいいです。
[携帯、インターネット、SNSの注意点]
この3つの扱いには厳重に気をつけてください。特に加害者が主にパソコン設定をしていた場合は対策がおろそかになりがちです。これらは加害者から離れてもいつまでもあなたを追ってきます。そしてそれはきりがないので、あなたを大変消耗させます。恐怖をさけ、過去を早く忘れ、ストレスから解放されるためにも、これらの対策はきっちりとった方がいいです。
・携帯電話
できれば新しく買いましょう。そして、絶対に新しい連絡先を知られないようにしてください。相手は暴走すると電話、メール攻撃をしてきます。
もし、攻撃してきたら、メール、電話、着信履歴は証拠になります。気持ち悪いかもしれませんが絶対に残しておいてください。電話等の暴言はできるだけ録音してください。あなたを傷つける言葉に心を揺るがせないように気を強く持ってください。
2台持ちをおすすめするのは、相手との連絡用の1台と、その他の連絡用の1台に分けることで、ストレスが軽減されるからです。1台しかないといつも見る携帯電話がストレスの元となり、証拠となるメールや着信履歴を衝動的に消去したくなるからです。わたしはそうでしたし、証拠がなくなったので後悔しました。
わたしの場合は、相手が2台持ちで契約した1台をもっていたので、解約に手間がかかり、非常に厄介でした。
・インターネット
ネットショッピングやSNSのパスワードを相手が気づいている可能性があります。乗っ取りや勝手にお金を使われるのを避けるためにも脱出が決まれば全部変えて下さい。
また、パソコンのインターネットの設定やプリンタの設定や共有設定にフォルダに気をつけてください。どこから情報がもれているかわかりません。同じくグーグルドライブ、ドロップボックス等のファイル共有サービスにも気をつけてください。
わたしの場合はこれで失敗しました。相手にパスワードがばれていて、勝手にメールを見られたり、勝手に全部のメールを消去されました。相手はあなたを攻撃するためにどういう暴挙に出るかわかりません。くれぐれも注意してください。
・SNS
まずは相手とSNSでつながらない方がいいです。やっていたらそのことを知られないようにしてください。つながっている場合は相手が見られない設定にする、見ているだけで発信はしないなど、あなたの情報を出来る限り相手に与えないようにしてください。重要なのは、あなたがどこにいるのかというヒントを相手に与えないことです。また、パスワードは絶対にすぐに変えてください。わたしはこれでも失敗しました。パスワードがばれて、アカウントを乗っ取られました。
さいごに
準備をしながらどうして自分が被害者なのに、失うものが多いのだろうと悲しみや理不尽にいらだつことがあると思います。自分が大切にしてきたもの、好きな生活用品、行きつけのお店、共通の友人などと別れたり手放したりするのは悔しいし、悲しいと思います。相手が変わってくれるかも、わたしががまんすれば、そんな思いもよぎると思います。でも、相手が変わるのを待っていたら犠牲はどんどん大きくなります。相手の取引の材料が増えていきます。それなら家を出た方が早いです。
人にどう思われるだろうか、やっぱり脱出しない方がいいかもと迷いが生じることもあると思います。でも、もしあなたを批判する人がいたら? でもその人があなたの人生に責任をとってくれるのでしょうか。あなたの悲しみ、辛さ、恐怖はあなたのものです。あなたにしかわからないし、ほかのだれかと比較されるものではありません。あなたの辛さを理解してもらえなかったり、余計に傷をえぐられるようなことを言われたりされるなら、その人とのご縁がなかったのだと思って、そっと離れてもいいと思います。もしご縁があればまたおつきあいできるかもしれません。
失うものよりも、脱出することで得られるすてきなこと、いいことを考えましょう! 毎日安心して眠れますよ。食事も行きたい場所も自分の自由にできますよ。お金だって、今よりもっと貯められます。何よりあなたはもう自分のことをだめだとか、何もできないなんて思う必要がないんですよ。あなたは今までの生活を失うのでも、今までの生活に失敗したのではないんです。新しい人生を選ぶんです。だから未来が明るいと信じて、前を向いて堂々と新しい生活に踏み出してください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?