令和2年司法試験論文行政法 答案例作成時の思考過程
こんにちは、井上絵理子です。令和2年の論文を書いていて、行政法だけはまあまあ成功したんじゃないかな、と勝手に思っております(他は聞かないで…。)。
配点割合は設問1(1):45点、設問1(2):30点、設問2:25点。設問1(1)に3枚強、設問1(2)と設問2を2枚ずつ書く感じ。行政法は得意だし、好きなので、書きすぎる可能性が高い。そのため、「なんかたっぷり書きたくても、とりあえず3枚強、2枚2枚を肝に銘じよう」と言い聞かせる。自分に。他の科目だとビビるのに、行政法だと暴走するんだよなぁ。
行政法ではかならず付いてくる<法律事務所の会議録>ここで書くことが指定されているので、先にこちらを読む方がよい。わかってはいるものの、問題文を読みたいという欲に負けて問題文から読む。受験生の方々はできれば、会議録で答案構成の枠をつかみ、問題文でディテールを補い(処分性の時は先に条文見た方がいいけど)、条文の仕組みを分析するという順序で解いてください。時間のロスがこの方法だと減ります。
というわけで、通常のやり方からはずれて問題文から。
1段落目。農地。農地!!転用か!!とフィーバーする。よく出てくるし、実際に宅地にするために農地転用許可が必要な土地が今住んでいるところの周りにある。やばい楽しい。
問題文で、どの条文を使うかが細かく書かれている。珍しい。今までは、条文と首っ引きになりながら「ん?南条?どこ?どれ?」と嘆いたものである。この問題文を使えば単純な仕組み図は書けそうだ。難易度調整かな?
2段落目。土地改良事業!!!土地改良もキターーーーーー!よく出る事業だ、わくわく。今回は農業用排水施設の改修事業とのことなので、家の近くの田んぼの周りの排水路を思い出す。行政法の条文解釈のポイントの一つとして、その行政法がどういう社会問題に対応しようとしているかを考える、というのがある。この社会問題の解決がいわゆる目的なのだが、「目的」といわれると(わたしは)なにやらぼんやりして想像が膨らまないので、とりあえず対応したい社会問題について考えるようにしている。今回は、従来の用排水施設が老朽化し、大雨時の周辺農地の冠水や施設の維持管理労力が増加、とあるので、大雨で田んぼや畑が水浸し→長ネギがとれない、を想像することにする。今年の長雨のせいでネギが高くなりましたね・・・・ネギ焼(´;ω;`)。
施設の補修・改修は上流部分が平成20年末に終わり、残りは平成30年12月でおわ・・・おう?10年もかかるとはイレギュラーだなあ、ここは何かで使うのかもしれない(設問3でしたね。)。さて、8年経過するまでは計画変更ができない=農地として使おうぜ!ということは、どういうことだろう。お家きれいにリフォームしたばっかでなんで売る必要があるんだって感じかな?と想像する。お金出して農地として使いやすくしたのに、「あ、宅地にするんで」って言われたら、そりゃあ「農地としてもうちょっと使ってからにしてよ!」ってなるよなあ、それかなぁ。
3段落目。Xさん、担当課の回答を無視して申出書を提出。受け取り拒否。え、受け取り拒否?!返戻か、これ返戻か?!とざわつく。悪名高き返戻をここでするとは・・・!まぁ、理由付記が行手法で定められている&判例も出ているにも関わらず、まーだ雑な理由付記してるお役所あるもんなぁ・・・。行手法で返戻すんなって書いてあっても、返戻はするか。
郵送して、到達しても、返却してる!!!!!これ、申出が申請だったら完璧アウトな奴やん。まじか。え、所定の期間経過って形式的要件なんか??がっつり内容な気がするんだが。一年待っても通知なし、放置。・・・義務付けの訴えっぽいなあ。
さて、問題文を大興奮で読んだ後、設問に臨む。
設問1(1)抗告訴訟の対象となる処分に、計画変更と申出の拒絶が当たるか、という問題。処分性か、条文・運用からだけで判断しないといけないなぁ、と確認。個別事案によって処分か否かが変わることはありえないので、本件具体的事情を使ってあてはめられないんだよなぁ。あと、処分性の定義を書くかどうか。判例は、あの定義を参考にしつつも真正面からあてはめてないから書きにくいし、問われているのは仕組み解釈と個々の処分性否定理由が理解できているかということだろうから、最悪書かなくていいや!と腹をくくる。実際書かなかった。
設問1(2)提起すべき抗告訴訟、義務付けでしょう!・・・え、書くなって!!てことは、不作為の違法確認訴訟やないかい・・・。条文参照しながら書かないとこれはやばい。本案は大したことない(相当期間の経過)から、訴訟要件!準用条文!ヤバいあそこ嫌いなのに!択一(24年は行政法も択一あり。悪夢である)でも、出題しないでお願いって願掛けしてたくらいやのに!
設問2違法事由。8年は使うやろうなぁ。会議録を見ないとわからないかもしれん。会議録を見よう。
と、会議録にたどり着く。ここまで7分。せわしない7分である。
弁護士C第一発言:特記事項なし。設問1(1)から検討してくれる親切設計。ひどい年だと、設問2とかから始まることがある。
弁護士D第Ⅰ発言:下級審の判断がわかれている!ということは、「結論どっちで書いても怒らないよー」ということ。気を楽にできる。よしよし。
弁護士C第2発言:ここからが本番。答案構成にそのまま流用できる内容が載っている。
1 農用地区域を定める計画自体の法的性格、その中で、(1)~に及ぼす影響(2)ア用途地域判例イ計画としての性質・規制の程度、みたいな感じか。これを踏まえて(3)処分性、と。用途地域の判例は私の中では基礎判例やから、とりあえず①建築制限がかかってて、それは一般的抽象的法効果、開発制限もどうせかかってただろ(←ここはうろ覚え。書いてしまったけど、うろ覚えだからここはビビっていた。ただ、開発制限も書かないと、農振法と比較しにくかった。ので、腹くくって書いた。)。②判例には書いてたかどうかうろおぼえだけど、「建築確認時に争えば足りる」という救済の必要性もあったよなぁ、今じゃない、っていう。
弁護士D第2発言:承知しました。・・・今回の若手さんはグダグダしゃべらない人設定なのか・・・?
弁護士C第3発言:申出の拒絶に話が移る。職権により計画変更、ということは、申出は「申請」といえないということか?民事訴訟法の弁論併合みたいな感じ?そりゃまずい。
弁護士D第3発言:実務上申出が不可欠。実務を参照して処分性を論じて良いのかどうか、普通迷うのだろうけど、判例はあっさり前提にしてるから、わしもあっさり前提に(理由かかずに)してやろう。そういえば、なんで実務前提にしていいんやったか。関税定率法に基づく通知の時に調べたのになぁ、書いてなかった気もするしなぁ、厄介。運用指針は大活躍させましょか。
弁護士C第4発言:申出の性格は大事。申請にしよう。で、なんで最後に計悪変更の段階における救済の必要性の話を入れるの!それもうちょい前で書いてよ!まぁ、やっぱり必要やったんやなあ、用途地域との比較でも書ける。
弁護士D第4発言:承知しました。話の切れ目で承知しました、と言わされている気がする。いつもより優しい設定(以前は発言の最中に切り替えポイントがあり、かなりバタつく羽目になった。)。
弁護士C第5発言:行手上の問題。ええ、ありますよ、申請したんだから処理して!!
弁護士D第5発言:同じくらいに申出してたら先月に通知がくる。なぜ今Xに通知がこないの?放置してるでしょ。
弁護士C第6発言:ほぼノーヒント。書くべきことを列挙するのみ。設問1(2)は基本問題という位置づけか。
弁護士D第6発言:承知しました。やっぱりかい!
弁護士C第7発言:手続上の違法は除外。点数取りやすいのに。
弁護士D第7発言:第一の違法事由。農地の生産性向上がない・高台にあるから事業の恩恵は受けない→農振法13条2項5号を満たさない。・・・条文みないとわからんな。
弁護士C第8発言:本件計画の目的も踏まえて検討してください。条文解釈するときは目的踏まえないといけないから当然なのでは・・・?と思ったが、条文見てみると「書いてっていわれないと書けないな!」と反省
弁護士D第8発言:政令の一律適用が違法、とすると、個別事情配慮義務みたいなかんじかな?よくわからん
弁護士C第9発言:政令自体は有効・期間制限自体も妥当。農振法の趣旨目的を踏まえて政令の例外解釈を検討。そうすると、農振法の趣旨目的からして、機械的に事業終了の翌年度から8年待期期間があるわけではなく、自分の土地に関係する事業終了の翌年度から8年待機すればいいということか。
弁護士D第9発言:承知しました。これで、会議録も終わり。
条文の読み解き方については、答案例を読んでもらえればある程度想像がつくかな、と思います。…noteでどう説明しようか、難しいというのもあります。条文の仕組み図を書く→各条文の位置づけを把握する(どの条文とリンクがはってるか?)→どうやって社会問題に対応しようとしているか想像する、というのが普段やってる解釈方法です。また、説明の仕方を見つけたら、書きたそうと思います。