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処分性書くときどうする?ってはなし1

まず最初に結論から。
 書くべきことが書けてたら点数つくから気にしなくていいよ、書きやすいやり方でどうぞ!!!

なんじゃそりゃ、答えになってない!と思われるかもしれないし、いろんな人が「こう書け」って言ったり言ってなかったりするから不安になる人もいると思う。行政法の大家(塩野先生とか宇賀先生とか高木先生とか)に言われたらまだ安心できるかも(いやその権威思考まずくねって話は置いといて)しれないけど、お前誰やねんなわたくしめが何言っても「信じません!!!」となるのが普通。
 ということで、今からなんで「お好きにどうぞ」という結論になったかを説明します。めちゃくちゃ長いので、適宜読み飛ばしていただいてかまいません。いろんな書き方、考え方があるんだ、ということをお分かりいただけるといいかなーと書いたところなので。

 そのあと、「お好きにと言われても困る!おすすめを述べよ」というご要望があるかと思いますので、それぞれのおすすめポイントと気を付けるポイントを書きます。(これは2で)
 最後に、わたくしめが実際に答案に書いたやり方、今教えてるやり方をお伝えします(これも2で)。結局好みなんだなぁと思っていただければこの記事の意味はあったといえるでしょう。
注意:学問的な正しさには一切触れておりません。ローの先生から「こうしなさい」と言われたら、それに従ってローの答案は書きましょう。ローの先生が「こうしなさい」とおっしゃったということは、それがたった一つの正しい考え方だと思っておられる可能性が高く、それに従わないとローの点数がもらえない可能性があります。司法試験・予備試験では論理的に正しい答案が書けていて、書くべきことに触れられていればどのような立場からでも点数が出ると思われます。司法試験・予備試験のときはお好きにどうぞ、ということだと思ってください。

1 なぜ「お好きにどうぞ」という結論となったか

(1) 検討手法

 処分性の書き方を決めるにあたって、何を参照してどのように検討したのかを説明しておきます。今回はたまたま受講生さんから聞かれて、「書いてみるか」と気が向いたので書いてます。が、受験勉強中には自分で調べて態度決定をしないといけないことはいくらでもあります。そんなときに自分で考えてえいやっと決めることができれば、より気楽に受験勉強を続けてもらえると思います。

 まず、この問題が「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」がある問題なのかを検討しなければなりません。もし仮に「みんなが認めるたった一つの正しいやり方」がある問題の場合、それ以外の答えはすべて点数がつかない可能性があるからです。
 たいていの場合、「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」が決まっていることはありません。決まっていればもうその書き方について基本書・演習書が言及しているはずですから。ですが、自分のリサーチが足りなくて、もしくは基本書・演習書が当然の前提としているせいで「たった一つの正しいやり方」を把握できていない可能性もあります。そこで、私はとりあえず家にある基本書と演習書と入門書とコンメンタールを全部引っ張り出してきて、当該問題に関する記述部分をすべて読みます。仮に「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」があるとしたら、それは基本的なこととして共有されているはずなので、さすがに上4つのどれかには書いているし、違う話が出てくることはないだろうと考えているからです。
 ここでどの本を読んでも、同じことが書いてあると文章からわかる場合には、検討はここで終了です。どの本にも同じことが書いてあるということは、その通りにすることをみんなが承認しているということになると私は考えています。なので、上記条件がそろえば、これが「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」なんだと認定できるからです。めったにないですけどね!(20こ見て1つだけ違う場合は外れ値とみなして無視したりします。ここは皆さんの感覚次第な気がします。)

「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」がどうもないらしい、とわかった後は、「どの書き方で書くのか、どの書き方はまずいか」を検討していきます。
 上記を検討するにあたっては、司法試験の出題趣旨・採点実感・ヒアリング・予備試験の出題趣旨を確認します。だいたい最初の「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」を検討するための本読みの段階で、「こうやって書くのがよさそうだなー」というあたりがついていることが多いです。ただ、その書き方が一般的なものなのかがわからない(少数有力説なこともある)ので、司法試験予備試験が求めている書き方を確認します。
 最初に書いたように論理的に正しくかけていれば点数がくるのです。なので、どれで書いてもよいとその時点で結論づけてもいい気がします。が、どうせ試験で書くための準備をするんだったらその試験が求めてる書き方で書くのがいいんじゃない?ということで出題趣旨等を確認するんですね。
 順序が逆だと思われるかもしれません。司法試験に受かるためには出題趣旨だけ確認すればよい、と。もちろん出題趣旨を確認すれば必ず書き方が載っている、必ず一貫した書き方が採用されている、というのであれば先に出題趣旨でもいいと思うんです。が、字面だけ見ると矛盾というか、要望事項変わっているように見えたり、そもそもどういう書き方前提にしてるのこれ?っていう出題趣旨もあったりします。なので、私は検討する時には基本書等をガーっとみて、どういう書き方がありうるのか、ということを先に知っておくようにしています。そのうえで出題趣旨等をよんで「どうもこの書き方で書くことを前提にしているらしい」と分析しています。
 出題趣旨も「どれでもいいよ」と思ってそうな書きぶりになっていれば、私の結論も「どれでもいいよ」になりますし、どうも一定の書き方を前提としていそうだ、ということになれば「この書き方がよさそうだよ」という結論になります。

 こんな感じで検討して結論を出してます。受験勉強中であれば、①お手持ちの基本書、演習書、予備校テキスト等を確認し→②出題趣旨等を確認する、というステップを踏んで考えるといいんじゃないかな、と思います。
 
 では、実際に検討していきましょう

(2) 入門書、基本書、演習書、コンメの記載検討

 今回は処分性の書き方が主題ですので、それに絞って書いていきます。また、司法試験対策のため、という目的から、受験生が読まなさそうな本はできるだけ省きます(コンメは省かないのか、という質問に対しては、大好きな岡村周一先生が書いてるから省くわけがないという回答をしておきましょう。日本評論社のコンメのみで、条解、注釈行訴や行訴研究はおとしてます。)。百選や争点も今回は検討対象から外します。処分性の書き方という総論を扱うので、個々の判例を扱う百選を読むと時間が足りなくなるのと、争点は、最近の受験生さんが読んでなさそうなので……。
 検討結果だけを書いていきます。一部引用もしますが、私が読んで考えて「こう考えてはるんかなあ」と思った内容をメモのようにぽんぽん書いていきます。別の読み方ができるよ!というのもあり得るところです。

ア 入門書

・大橋洋一「社会とつながる行政法入門(第2版)」115頁
 最判昭和39年10月29日民集18巻8号1809頁(以下、ごみ焼却場判決とします)があげた「行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」という文章が「最高裁の公式」として挙げられています。そして、この「公式」を「(a)法令に基づく行為であること(b)公権力の主体である国又は公共団体の行為であること(c)国民の権利義務を形成し、またはそのはんいを確定することが、法律上認められていること(d)(c)でいう権利義務の形成やその範囲の確定が国民に対し直接行われること」の4つの特色にわけています。処分性は「最高裁の公式」に照らして検討するとされ、この4つがすべて満たされているかをあてはめています。

・藤田宙靖「行政法入門」(第7版)200頁以下
 ごみ焼却場判決のうち「行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」との部分をあげている。この考え方を最高裁の「従来の公式」とよんでいる。「従来の公式」は要するに「行政行為」のことであり、ほかの行為は基本的には「行政庁の処分」ではないとする。「従来の公式」は原則であって、例外を許さないわけではないこと、法規定のあり方に照らして「従来の公式」に当らなさそうでも処分にあたる場合もある、としている。

イ 基本書

 原田尚彦「行政法要論」は学部の指定教科書でしたが最近はあまりみかけないので外してます。宇賀先生の3巻本よりかは1冊本の方が使われているのではないかと思うので、そちらを読んでます。橋本博之「現代行政法」よりも櫻井=橋本「行政法」の方が有名だと思うので、そちらの検討で済ませました。芝池義一先生の本も「行政法総論講義」「行政救済法講義」と分かれているバージョンもありますが、いかんせん古いので「行政法読本」の検討のみです。ストゥディアの扱いが入門書なのか基本書なのかわからないのでこちらにいれてます。「現代行政法入門」は入門とありますが内容が充実しているので基本書のくくりにいれてます。司法研修所編「行政事件訴訟の一般的実務的研究」は基本書ではないもののどのカテゴリにしていいかわかんない(けど押さえておきたい。だって司法研修所だから!)のでここで。
 

・宇賀克也「行政法」(第2版)286頁以下
 ごみ焼却場判決の文章をあげ、処分性が認められる典型的行為として許可・認可等を挙げる。上記文章を要素に分けて検討するのではなく、処分性が争われた個々の行為について検討を加えている。
 定義と関係させて検討しているところもあれば、判例の分析がかかれ、定義との関係が明示されていないところもある。

・大橋洋一「行政法Ⅱ 現代行政救済論(第4版)」16頁以下、48頁以下
 ごみ焼却場判決の文章を定義と説明し、前述の4つの特色に分けて検討するとしている。外部性/直接性=具体的規律性/法的効果/法律の授権の4要素にわけ、それぞれの要素について争われうる典型例・判例を挙げる。実効的な権利救済などの上記定義に入るかどうかで考え方が分かれる要素については、上記4要素の中で検討している。別立てでは書かない。

・塩野宏「行政法Ⅱ(第6版)行政救済法」103頁以下
 ごみ焼却場判決を定式とする。「定型的処分」「定型的非処分」以外の処分かどうかがよくわからない行為についてどう考えるかが解釈論の重要な課題とし、問題となりうる行為を類型化して検討する。定式には出てこない要素である不服申立て規定の有無等にも言及している。もっとも、最高裁判決は処分性の定式の枠内にあるとしている。

・野呂充ほか「有斐閣ストゥディア行政法(第2版)」176頁以下
 ごみ焼却場判決を①権力性②法効果③直接性又は具体性④法律の根拠があること、の四つにわけ、すべてが満たされることが処分性を認める上で必要とする。この4要素がそろっていないとされやすい行為類型についてあげ、それぞれの行為類型ごとに処分性が認められた判例について分析する。
 4要素と違う理由も付け加えて処分性が認められた場合は、その論理も付記している。

・櫻井=橋本「行政法(第6版)」263頁以下
 ①公権力性②国民の権利義務に対する直接具体的な法的規律の二つの観点に分ける。これと別立てで当該行為につき取消訴訟の対象性を認めるという立法者意思を示す規定があれば処分性が認められるとする。②についてはア直接イ国民ウ権利義務を形成しまたはその範囲を確定するエ法律上認められているの4要素に分けられるとする。別立てにされやすい紛争の成熟性についてはアに関連付ける。立法者意思については①と関連する要素ともされている。また、判定基準のところに記述はないが、実効的な権利救済については論証の補強として用いられていると整理する。

・中原茂樹「基本行政法(第3版)」283頁以下
 ごみ焼却場判決を処分性の基本的定式とする。公権力と直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するの2要素にわけ、直接~を外部性・法効果・具体性の3つに分けていると思われる。公権力性の検討は立法者意思の探求によること、直接~のところと解釈手法が違うとする。直接~の部分は訴えの利益について検討するところであるとする。

・芝池義一「行政法読本第4版」295頁以下
 ごみ焼却場判決を引用し、これが行政行為とおなじものであるとする。そして、問題となるのは行政行為でない行政の行為が「処分」といえるかに留意するよう促す。公権力的事実行為と「法定の形式的処分」←立法者意思により処分と扱われるものは処分であることにつき争いはない。処分性が認められるか争われる個別の行為類型に合わせて処分性肯定の理由を述べる。

・高橋滋「行政法(第2版)」129頁以下
 ごみ焼却場判決を引用したうえで、処分性を3要素に分ける。すなわち、ⅰ公権力の主体による行為=行政庁の行為であることⅱ行政庁の行為が公権力を有するものであることⅲその行為によって直接国民の権利義務が形成されまたはその範囲が確定することが法律上認められていること、である。
 処分性を認めるためには定義のみならず、取消訴訟を提起できることによる救済拡張的効果と取消訴訟を選択せざるを得なくなるデメリットを考え、法令の仕組みの分析をすることが必要だとしている。各要素において問題となる行為類型をあげ、それぞれ処分性が認められる場合はどのようなときかを論じている。紛争の成熟性は定義とは別立ての要素としてとりあげられている。

・曽和俊文ほか「現代行政法入門第4版」219頁以下
 ごみ焼却場判決を引用し、この定義はa公権力性b国民の権利義務への直接的規律の2点をメルクマールとして処分性を判定する古典的アプローチであるとする。これらは現在では修正されており、修正の仕方については行為類型ごとに検討している。

・司法研修所編「改訂行政事件訴訟の一般的問題に関する実務的研究」15頁以下
 抗告訴訟の対象となる公権力の行使にあたるかは公権力性と法律上の地位に対する影響の2要件を満たすかによって検討する。公権力性が問題となる行為類型、法律上の地位に対する影響が問題となる行為類型に分けて検討している。これが書かれたのは行訴法改正前(平成12年の本)であるため、基本的な枠組みが参考になる程度。

ウ 演習書

・ 曽和俊文ほか「事例研究行政法第4版」60頁以下
 ごみ焼却場判決を処分性判断の出発点とする。定義のうち「公権力の主体たる」のところが抗告訴訟かそれ以外かの交通整理を、「直接」「国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」のところが訴えの利益にかかわる部分であるとする。公権力的事実行為と明文で処分性が認められるもの、私人間でも行われうる行為の処分性、救済上の必要性に基づき処分性が認められる場合とわけて検討している。定式のあてはめだけでなく、救済上の観点に基づく処分性拡張も検討すべきとし、別立てで救済上の必要性を検討することもあるよう。

・ 北村和生ほか「事例から行政法を考える」
 事例④ 58頁 権力性・法効果性・具体性・法令上の根拠の4つに分けて検討する。
 事例⑤ 76頁 公権力性・具体的法効果の2要素から検討する

・ 大貫裕之=土田伸也「行政法事案解析の作法(第2版)」190頁
 判定作法は2種類。まず、ごみ焼却場判決から導かれる具体性(直接性)、外部性、法効果性、公権力性の4要件が充足されているか、という解釈作法。もう一つが、①個別法の文言に着目②個別法によって不服申立ての対象とさていないか③個別法によって制裁の仕組みが整えられているか④個別法によって事前手続きとして聴聞が整備されているか⑤法の仕組みを考慮に入れる⑥取消訴訟の第三者効による紛争解決の実効性⑦救済の必要性という7種類の解釈作法である。前者が本筋であるため、①と⑤を前提に前者の4要件のあてはめをし、それで処分かどうかわからなければ②③④⑥⑦で処分性を肯定できないか検討する。

・土田伸也「基礎演習行政法(第2版)」
 おおむね事案解析の作法とおなじ。2要件でも4要件でも間違いではない、とコラムで明言

エ コンメ

・岡村周一執筆担当部分「コンメンタール行政法Ⅱ行政事件訴訟法・国家賠償法第2版」 34頁以下
 ごみ焼却場判決を処分の意義を明らかにしたものとして紹介。「行政行為以外の具体的な行為に処分性が認められるか否かは、当該行為の性質のほか、関係する国民の権利利益の性質、それが影響を受ける程度、当該行為が関係する一連の過程のなかでそれが占める位置、後の段階での訴訟提起の可能性等の諸般の事情にかかっている」とする。ごみ焼却場判決を演繹的に適用してこれのみをもって問題となる具体的な行為の処分性を決定することはできないとしたうえで、定義を前提とした行為の分類に従って処分性を検討している。

(3)「みんなが認めるたった一つの正しい書き方」はあったか

 上に書いた内容を全部読んでくれた人ならわかってくれたと思う。

 あるかそんなもん!!!!!!

 もちろん、共通点はあった。すべてごみ焼却場判決の示したあの文章からスタートしている。あの忌々しい文章。ただ、そこから先はもうバリエーションがありすぎて。

 まず、2要件か4要件かってはなしだったのに、3要件の先生もいる。 
 2要件にしたあとにそのうちの一つが4つに分かれる先生もいる。
 2要件+αもいれば、2要件オンリーもいる。
 そして、要件なにそれおいしいのな人もいる。

 ただ、しっかり内容を読んでいくと、結局検討している内容は同じで、それをどこに整理して分類していくかが違うだけなのである。事案解析の作法で出てきたあの7つの解釈手法も、みんな触れている。それを手法として取り出して見える形にしたか、文章の中で書いているかのどちらか。
 そうすると、あとは書きやすいように書けばいいんじゃない?どう整理しても書くべき内容を書いてあれば点数が入るんじゃない?と思うことができる。統一?むりむりむり。

(4) 出題趣旨等を確認する

・平成23年予備

(出題趣旨)行政訴訟の基本的な知識,理解及びそれを事案に即して運用する基本的な能力を試すことを目的として,旅館の建設につき条例に基づく町長の不同意決定を受けた者が,訴訟を提起して争おうとする場合の行政事件訴訟法上の問題について問うものである。不同意決定の処分性を条例の仕組みに基づいて検討した上で,処分性が認められる場合に選択すべき訴訟類型及び処分性以外の訴訟要件について,事案に即して説明することが求められる。

平成23年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨

条例の仕組みに基づいて検討しよう

・平成27年予備試験 出題趣旨

(出題趣旨)本問は,事案及び関係行政法規に即して,行政訴訟及び行政法の一般原則についての基本的な知識及び理解を運用する能力を試す趣旨の問題である。設問1は,河川管理者による河川区域の指定の処分性を問うものである。特定の者を名宛人とせずに特定の区域における土地利用を制限する行政庁の決定の処分性に関する最高裁判所の判例の趣旨を踏まえ,河川区域の指定の法的効果を河川法及び同法施行令の規定に即して検討し,処分性認定の要件に結びつけて論じることが求められる。

平成27年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨

判例の趣旨を踏まえること、法的効果を認定して処分性認定の要件に結びつけて論じることが要求されている。2要件でも4要件でも要件なし(判例まんま)でも法的効果の認定は必要なのでこの文章からは特定の書き方を推奨しているとは読めない。

・平成30年予備試験 出題趣旨

(出題の趣旨)設問1は,Y県消費生活条例(以下「条例」という)に基づく勧告と公表のそれぞれについて,その処分性(行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」への該当性)の有無の検討を求めるものである。まず,最高裁判所昭和39年10月29日判決(民集18巻8号1809頁。大田区ゴミ焼却場事件)などで示された処分性の一般論を正しく説明し,処分性の有無を判定する際の考慮要素を挙げることが求められる。また,最高裁判所平成20年9月10日判決(民集62巻8号2029頁。土地区画整理事業計画事件)などの近時の判例では,実効的な権利救済を図るという観点を考慮する場合もあるが,このような実効的な権利救済について指摘することは加点事由となる。その上で,勧告の処分性については 「公表を受け得る地位に立たされる」とい,う法効果が認められるか否か,条例第49条(※当初掲載した出題の趣旨では条,例第48条と記載していましたが 条例第49条の誤りでしたので訂正しました)に基づく手続保障の存在が処分性を基礎付けるか否か,勧告段階での実効的な救済の必要が認められるか否か,の3点について当事者の主張を展開することが求められる。同様に,公表の処分性についても,公表のもたらす信用毀損等が法的な効果に当たるか否か,公表に制裁的機能が認められるか否か,公表に対する差止訴訟を認めることが実効的な権利救済の観点から必要か否か,の3点について当事者の主張を展開することが求められる。

平成30年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨

 ごみ焼却場判決の一般論を説明し、処分性認定の際の考慮要素を挙げることが必要だとされる。とすると、2要件か4要件が推奨されているように思える。もっとも、要件なしで判例ままから説明する場合でも考慮要素には触れないといけない(〇〇は外部性が認められないのでは~とか)ので、考慮要素には触れられる。実効的な権利救済を考慮すると加点になる、とされているが、どの要素と絡めて、というところまでは限定されていないため、別立てでも、何かの要素に絡めてでもどちらでもよいと考えられる。書いてればオッケーというところですね。
 この出題趣旨との関係では2要件か4要件が書きやすそうではある。

・令和2年予備試験 出題趣旨

(出題の趣旨)本問は,都市計画法上の開発許可の事前手続を定めた条例(以下「条例」という。)の運用に際して,市と事業者の間で,事業者の開発制限に関する条項(以下「本件条項」という。)を含む開発協定が締結され,さらに,本件条項を前提にして,条例に基づく事前協議を受けることができないという市長の通知(以下「本件通知」という。)が発せられたという事実を基にして,行政契約の実体法的な制約,及び取消訴訟の訴訟要件に関する基本的な知識・理解を試す趣旨の問題である。……設問2は,本件通知の処分性の有無を問うものであり,処分性に関する最高裁判例を基に検討することが求められる。その際,本件通知の法的根拠の有無,本件通知が条例上の措置や開発許可との関係でいかなる意義を有するか,開発不許可処分の取消訴訟において本件通知の違法性を争うことができるか,などについて,都市計画法や条例の規定を基に論ずることが求められる。

令和2年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨

 なぜか一気にトーンダウン。法的根拠の有無、法令の仕組み、違法性の承継などの考慮要素を書けばオッケーということで、2要件でも4要件でも判例ままでも書くこと書いていればよいといえる。たまに暴走する先生いるのかしら…。

・平成19年司法試験出題趣旨

〔第2問〕本問は,留学の在留資格に基づいて日本の大学に在学する外国人に対し風営店でのアルバイトを理由として退去強制令書が発付され,収容されたことについて,当該外国人の弁護士という立場から論じさせるものである。問題文と資料から基本的な事実関係,法令の趣旨を読み解き,説得力ある理由とともに,適切な結論を導くことが問われている。法科大学院における基礎的な学習を前提として,具体的な事例で,適切な救済手段や訴訟方法を選択し,それと結びついた本案の主張を展開する力を試すものである。1設問 の(1)は,収容やその後に予定される送還を停止するための法的手段に関する基本的理解を問うものである。例えば,退去強制令書の発付が処分に当たることを説明した上で,その執行停止を解答する場合には,発付処分の取消訴訟を提起することに加えて,行政事件訴訟法第25条所定の要件に即して検討する必要があろう。同条第2項の「重大な損害」という要件については,学業継続の支障,事後的な損害賠償による損害回復の困難性,人格の尊厳への侵害など,具体的根拠を伴った解釈論が望まれる。収容の継続と送還とを区別した上でそれ,。ぞれの部分についての執行停止の要否 可否を論ずるといった配慮も期待されるところである以上のような発付処分の取消訴訟と執行停止の組合せではなく,それ以外の方法を選んで解答する場合には,その方法が現行法上可能かつ適切であり,その方法によって確実に収容や送還が停止できることを示すことが重要である。例えば,差止訴訟及び仮の差止めの方法を選択するのであれば,取消訴訟及び執行停止の可能性との関係をどう考えるかの検討は不可欠であろう。

平成19年新司法試験論文式試験問題出題趣旨

 書き方の説明はなし。ヒアリングも確認してみたが、処分性の書き方についての記述はなかった。

・平成20年出題趣旨・採点実感

〔第2問〕本問は,県知事が介護老人保健施設に対して勧告をした事案について,勧告を違法と考え従わなかった施設の代理人弁護士という立場から論じさせるものである。問題文と資料から基本的な事実関係を把握した上で,介護保険法や関連法令の趣旨を読み解き,適切な救済手段を選択し,それと結び付いた本案の主張を展開する力を試すものである。設問1は,勧告不服従の公表を阻止するための法的手段(訴訟とそれに伴う仮の救済措置)に関して,基本的理解を問う問題である。勧告や公表が処分に当たるのかといった検討を,介護保険法に即して行うことが前提となる。勧告に従わない場合には,公表や措置命令,業務停止命令,開設許可取消などがなされ得る法的仕組みを正確に把握した上で,勧告や公表の法的性格を分析することが求められている。例えば,処分性の定義を前提として,勧告が処分に当たることを具体的に説明した上で,その執行停止を解答する場合には,勧告の取消訴訟を論じることに加えて,行政事件訴訟法第25条所定の要件について検討する必要があろう。勧告の処分性を否定する場合には,勧告に対して公法上の当事者訴訟を提起するとともに,仮の権利救済手段として仮処分を検討することが考えられる。確認訴訟を利用する場合には,確認の利益を中心に詳細な検討が期待される。また,公表の処分性を肯定した上で,その差止め訴訟,仮の差止めを提案する解答もあり得る。この場合には,差止め訴訟の要件(行政事件訴訟法第37条の4)や仮の差止めの要件(特に,同法第37条の5第2項,第3項)について,法文の解釈や当てはめが的確になされていることが必要となる。さらに,公表の処分性を否定し,公表に対する民事の差止め訴訟ないし公法上の当事者訴訟を提案し,仮処分の可能性を検討することも考えられる。民事の差止め訴訟を選択する場合には,差止めを根拠付ける権利について詳細な言及が望まれよう。このように,様々な法的手段が考えられる中で,複数の法的手段を提案し,それらの比較を通じて最も適切と考える法的手段を提示しなければならない。

平成20年新司法試験論文式試験問題出題趣旨

処分性の定義を説明したうえで、とあるので、ごみ焼却場判決のあの部分は書く。それ以外はフリーである。

処分性の定義の形式的当てはめに終始し,問題事案における行政活動の性質の分析と必ずしもかみ合っていない答案が目に付いた。

平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(行政法)

 2要件でも4要件でも要件無しでも陥る可能性がある。書くべきことさえ書けばいいの裏返しに思える。
 ヒアリングには処分性の書き方についての記載なし

・平成24司法試験出題趣旨・採点実感

設問1は,Q県が都市計画を変更せずに存続させていること(以下,単に「計画の存続」という。)の適法性を争うために,Pがどのような行政訴訟を提起できるかを考える前提として,都市計画決定の処分性を検討させる問題である。全体としては,【資料1】に示された土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を認める大法廷判決の論旨をよく理解した上で,都市計画決定の処分性を判断するためのポイントを押さえること,及び,処分性の判断に関わる都市計画決定の法的効果を,後続する都市計画事業認可の法的効果と関係付け,また比較しながら的確に把握することが求められる。個別にいえば,都市計画決定が権利制限を受ける土地を具体的に特定すること,都市計画決定が土地収用法上の事業認定に代わる都市計画事業認可の前提となること,及び,都市計画が決定されるとその実現に支障が生じないように建築が制限されることを,都市計画法令の諸規定から読み取らなければならない。その際,都市計画決定と都市計画事業認可の関係図書等や法的効果等を比較することを通じて,都市計画決定においては,収用による権利侵害の切迫性が土地区画整理事業の事業計画の決定に伴う換地の切迫性よりは低いことも,併せて考慮することが求められる。大法廷判決が,建築制限について,それ自体として処分性の根拠になるか否かを明言していない点にも,注意を要する。そして以上の考察を踏まえて,権利救済の実効性を図るために都市計画決定に処分性を認める必要性について,都市計画事業認可取消訴訟,建築確認申請に対する拒否処分取消訴訟及び都市計画に関する当事者訴訟など他の行政訴訟の可能性及び実効性を考慮して,判断することが求められる。

平成24年司法試験論文式試験問題出題趣旨

 2要件でも4要件でも要件なしでも同じ書くべきことを書けばよいことがわかる。むしろ要件に引きずられて土地区画整理事業の事業計画決定の処分性を認めた大法廷判決の論旨を書けない方が怖い。

3 答案に求められる水準
(1) 設問1
 土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を認めた最高裁判所平成20年9月10日大法廷判決,民集62巻8号2029頁(以下「大法廷判決」という。)を前提にして,都市計画施設を定める都市計画決定(以下「都市計画決定」という。)の法的効果を的確に把握し,これを基礎にどれだけ説得的に処分性について論じているかに応じて,優秀度ないし良好度を判定した。都市計画決定における建築制限の効果と収用の前提となる効果とを把握した上で,いずれかの効果について処分性を認める根拠になるか否かを検討していれば,一応の水準の答案,両者の効果について都市計画事業認可の効果との共通性と差異に着目した上で処分性を認める根拠になるか否かを検討していれば,良好な答案と判定した。さらに,都市計画決定と収用手続との関係と,都市計画事業認可と収用手続との関係を,関係規定を丁寧に参照しつつ正確に比較して都市計画決定の処分性について論じているか,又は,都市計画決定及び都市計画事業認可の取消訴訟以外に想定される訴訟を具体的に挙げつつ,権利保護の実効性の観点から都市計画決定に処分性を認めることが適切か否かを説得的に論じていれば,優秀な答案と判定した。
【中略】
(2) 設問1
・ 大法廷判決の要旨は記述しているにもかかわらず,それが本件の処分性の考察にほとんど活かされておらず,大法廷判決を暗記しているだけで実質的に理解していないのではないかと疑われる答案が相当数あった。
・ 大法廷判決が土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を認めた理由として,建築制限の効果のみを挙げる答案が予想外に多かった。少なくとも法廷意見においてそれが主要な理由とされていないことは,基本的な学習事項の範囲内である。
・ 都市計画決定における建築制限の効果と収用の前提となる効果を正確に理解しておらず,例えば,都市計画決定の建築制限の効果は都市計画事業認可の取消訴訟において争えば足りるとするような答案が相当数あった。

平成24年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第2問)

2要件か4要件か要件なしかは触れられず、もっぱら事業計画決定の大法廷判決が理解できているか、それを今回の都市計画決定に応用できているかが問われている。

・平成25年司法試験出題趣旨・採点実感

〔第2問〕本問は,賦課金の新設を内容とする土地区画整理組合(以下「組合」という。)の定款変更の認可(以下「本件認可」という。)に対し,組合員が取消訴訟を提起する事案における法的問題について論じさせるものである。問題文と資料から基本的な事実関係を把握し,土地区画整理法(以下「法」という。)の趣旨を読み解いた上で,取消訴訟の訴訟要件及び本案における違法事由を論じる力を試すものである。設問1は,本件認可の処分性を検討させる問題である。組合に行政主体としての法的性格が与えられていることを法の規定から読み取った上で,本件認可が組合員の法的地位に変動を及ぼすか否かにつき,賦課金の仕組みに即して,丁寧に検討することが求められる。解答に当たっては,その前提としてC県側の主張を正確に理解しておくことが必要であることから,行政機関相互の行為で行政組織外部に対する効力を有しないものは処分に当たらないという考え方(いわゆる内部行為論)にC県側が立脚していることを明らかにすることが求められる。具体的には,組合につき強制加入制がとられていること(法第25条第1項),賦課金及び過怠金の賦課徴収及び滞納処分申請の権限が組合に付与されていること(法第40条,第41条),及び,換地処分の権限が組合に付与されていること(法第103条第3項)を,法の規定から読み取り,これらが組合の行政主体としての法的性格を示すものであることを説明しなければならない。また,C県の立場に立った場合には,例えば,知事の組合に対する監督等について定める法第123条,第125条は,知事と組合との関係が上級行政機関の下級行政機関に対する指揮監督関係であることを示すものと解され得ることなどを指摘すべきである。そして,内部行為論について説明した上で,本件認可が外部に対する効力を有するか,すなわち組合員の法的地位に変動を及ぼすかに関して,以下の点を検討することが求められる。すなわち,費用の分担に関する事項を定款に記載しなければならないとする法第15条第6号の規定を受けて,本件定款変更において,賦課金の収入を本件事業の費用に充てること,並びに,賦課金の額及び徴収方法は総会の議決に基づき定めることが規定され,さらにこれを受けて,賦課金の額の設定方法が「賦課金実施要綱」に定められ,これに従い賦課金の賦課徴収が行われる。このような賦課金の仕組みに着目すると,一方で,本件定款変更自体は,個々の組合員に対して具体的な賦課金納付義務を課すものではなく,組合員に個別具体的な権利変動を生じさせるものではない(成熟性に欠ける)とのC県側の主張が考えられる。他方で,これに対する反論として,本件定款変更により組合員は特段の事情がない限り賦課金を徴収される立場に立たされるから,本件認可は,組合員の法的地位に変動を及ぼすものとして処分性が認められる等の主張が考えられる。その際,C県側が,市町村が土地区画整理事業を行う場合には条例で施行規程を定めることとされていることを指摘し,条例の制定行為が処分に当たらないのと同様に本件認可は処分に該当しないと主張しているので,C県の指摘の根拠とされている法第53条を挙げた上で,C県の主張の理論的根拠を分析し,反論を加えることが求められる。

平成25年司法試験論文式試験問題出題趣旨

書き方というよりも、会議録で示された書くべき内容についてかけているかが求められている。

3 答案に求められる水準(1) 設問1問題文及び法律事務所の会議録からC県側の主張を正確に理解した上で,B土地区画整理組合(以下「本件組合」という。)の法的性格,賦課金の新設を内容とする定款変更(以下「本件定款変更」という。)の認可(以下「本件認可」という。)の具体的な法的効果を分析し,関係法令の規定を適切に挙げながら,本件認可の処分性について,丁寧に説得的に論じているかに応じて,優秀度ないし良好度を判定した。C県側が本件認可の処分性を否定する論拠として,内部行為論と紛争の成熟性の欠如の二つを挙げていることに言及した上で,組合員に対する賦課金の賦課に着目することにより,それぞれに対して反論の可能性があることを理解できていれば,一応の水準の答案とした。加えて,C県側が本件組合を下級行政機関と主張する根拠を具体的に挙げるとともに,賦課金の仕組みを具体的に考察して処分性の検討につなげていれば,良好な答案と判定した。さらに,C県側が主張する組合の行政主体性の根拠を多面的に分析するとともに,条例制定行為には処分性が認められず,また,条例制定行為と本件認可とは同様の性質を有するというC県側の主張について,反論を具体的に検討することができていれば,優秀な答案と判定した。
【中略】
(2) 設問1
・ 内部行為論と紛争の成熟性の欠如について,相互の論理的・機能的関係を的確に把握していないと思われる答案が相当数あった。
・ 土地区画整理法(以下「法」という。)第25条第1項を本件組合が行政主体ではないことの根拠として挙げる答案が多かった。強制加入制という,民間団体には通常見られない例外的な仕組みになっていることにも注意すべきである。
・ 処分性の定式を記載するにとどまり,法令の規定に関する分析が不足している答案が見られた。処分性の判断に当たっては,関係法令に照らして,本件認可の法的効果を具体的に分析することが必要である。
・ 法第53条第1項は,組合施行の場合にも条例で施行規程を定めることとしていると誤解して記述するなど,関係法令や会議録の記載を正確に読んでいないと思われる答案が散見された。
・ 内部行為論や紛争の成熟性の欠如といった論点自体については,大多数の受験者が基本的に理解していた。自らの思考過程を的確に文章にして表現する力が,答案の出来に大きく影響していたように思われる。

平成25年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第2問)

処分性の定式を示すだけではなく、具体的に法効果を分析することがもとめられている。要件をどう設定するかよりも、問いに答えることができたかどうかが点数にかかわっている。

・平成29年司法試験出題趣旨・採点実感

〔設問2⑴〕は,取消訴訟の訴訟要件である処分性に関する理解を問う問題である。Y市長が道路法第10条第1項に基づき行うことが想定される本件市道の路線の廃止が,行政事件訴訟法第3条第2項に定める「行政庁の処分その他公権力の行使」に当たるかどうかを検討することが求められている。設問に示されているD弁護士の指示に従って道路法の規定を分析して,道路の区域決定・供用開始が敷地所有者及び道路通行者に対してそれぞれどのような法効果を及ぼすかを検討し,道路法第10条第1項に基づくY市長による本件市道の路線の廃止が,それらの法効果を一方的に消滅させるものであることについて論じること,道路通行者については,当該市道を生活上不可欠な道路として利用していた通行者の生活に著しい支障が生ずる場合があることを踏まえた上で論じることが求められる。

平成29年論文式試験出題の趣旨

書き方の指定としてはD弁護士の指示に従って書くように求められている。

⑶ 〔設問2〕⑴
・ 処分性の定義を適切に提示した上で,道路区域の決定及び供用開始の法的効果についての検討を行い,路線廃止はこれらの行為が道路敷地所有者に対して有する法的効果を解除するという法的効果があることについて検討し,路線廃止の道路通行者の法的地位に対する影響を検討している答案は,一応の水準に達しているものと判断した。
・ 上記の区域決定・供用開始の法的効果に関し,道路区域が決定されると,道路敷地の所有者の法的地位に関し,道路管理者による権原取得前でも,土地の形質変更や工作物の新築等につき,道路管理者の許可を要することとなること(道路法第91条),道路が供用開始されれば,道路敷地の所有者に対して,私権が行使できなくなる法的効果があること(同法第4条)を具体的に論じ,加えて,路線廃止の道路通行者の法的地位に対する影響に関し,当該市道を生活上不可欠な道路として利用していた通行者の生活に著しい支障が生ずる場合があることについて検討している答案は,良好な答案と判断した。
・ さらに,本件市道を生活上不可欠な道路として利用していた通行者の生活に著しい支障が生ずる場合があるという観点から,前記⑴の最高裁昭和62年判決に言及している答案は,優秀な答案と判断した。
【中略】
⑷ 〔設問2〕⑴
・ 処分性の定義は,ほとんどの答案が適切に論じていたが,公権力性についての当てはめの検討(路線廃止が道路管理者の道路法に基づく管理権限行使としてされたこと)を行っていない答案が多く見られた。
・ 「道路の区域の決定及び供用開始や路線の廃止が道路敷地の所有者の法的地位に与える影響」について,関係する規定(道路法第91条第1項・第2項,第4条)を指摘した上で正確に論じることができていない答案が少なくなかった。道路法の条文がほとんど初見のためか,誤読や読み落としが少なくなく,特に,区域決定・供用開始それぞれの法的効果が十分区別されていない答案が多く見られた。また,ごく少数ではあるが,会議録中の弁護士Dの発言にあるように,本件市道の敷地の所有権がY市にあることを理由として処分性を否定した答案も見られた。
・ 敷地所有者の法的地位はほぼ全ての答案で論じられていたが,通行者の法的地位については,会議録の誘導があったにもかかわらず,検討されていない答案が少なからず見られた。通行者の法的地位について論じるとしても,単に通行できなくなる効果がある又は通行権を失うとするにとどまるものが圧倒的に多く,通行者にとって本件道路が日常不可欠なものであるか否かや通行できなくなることによる日常生活上の影響の程度について検討している答案はごく少数にとどまった。単に通行者というだけで通行し得る法的地位が保障されているといえるのか,当該道路の通行を日常生活上不可欠とする者等に対してしか,通行し得る法的地位は保障されていないのではないかについても考察することが期待される。
・ 路線廃止が,道路敷地所有者の法的地位に対する制限・禁止を解除する法的効果を有することについては,おおむねよく記載されていた。

平成29年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第2問)

 処分性の定義を書くことは求められているが、それ以上に要件を限定するような話はされていない。

・令和2年出題趣旨・採点実感

まず,【設問1】(1)は,いわゆる処分性を問うものであるが,農用地区域の設定や除外の処分性については,なお,下級審判決は分かれている。まず,農用地区域の設定自体については,その法的効果として,農振法等により,様々な農地の利用制限が規定されている。こうした土地利用を規制する計画の法的性格については,都市計画法上の用途地域に関し,これを法令類似のものであるとする判例(【法律事務所の会議録】に掲げられた最高裁判所昭和57年4月22日第一小法廷判決)がある。しかし,その適用範囲や規制の強度等を考えると,これと農用地区域の規制を同視し得るか否かは問題となろうし,さらに,その範囲の点からも,個別の農地についての農用地区域からの除外について,同様に解してよいかについては,別途,検討を要する。さらに,本件の事例においては,B市の内部規程とはいえ,運用指針には,農用地区域からの除外の申出と可否の通知が制度化されており,これを農振法の趣旨を具体化したものとみて,農用地区域からの除外について,農地所有者等の申請権を読み取り,本件申出に対する可否の通知に処分性を認める解釈もあり得よう。さらに,処分性の判断においては,救済の必要性に関する実質的考慮も求められることから,本問の事案においても,後に予想される農地法第4条第1項に基づく農地転用許可の拒否処分に対する取消訴訟の段階での救済可能性の評価についても,言及が求められている。

令和2年論文式試験出題の趣旨

救済の必要性に言及することは求められているが、要件をどうして、どこに書くべきかまで指定されているわけではない。

令和2年度採点実感は量が多すぎるので、必要箇所は太字にした。

3 答案に求められる水準
⑴ 設問1⑴
最高裁判例で示された処分性判断の定式を示した上で,農用地区域を定める計画自体の法的性格について,農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」という。)ないし農地法の関係規定を挙げながら,農用地利用計画にいかなる法効果が付与されているか,計画の変更によりこれがいかなる影響を受けるかを検討し,本件計画の変更の処分性を論じ,また,申出の拒絶の処分性について,申請権の法的根拠を挙げながら論じた上で,成熟性に言及して結論を導いているものなどは,一応の水準に達しているものと判断した。
・ これに加えて,都市計画法上の用途地域指定についての判例(最高裁昭和57年判決)の理解を正確に示した上で,農振法等に基づく農用地利用計画の法効果との異同を検討するもの,また,成熟性について,転用許可拒否処分取消訴訟等の別訴を提起した場合に考えられる帰結を挙げ,それとの差異に言及しながら,本件計画の変更段階での救済の必要性を実質的に検討しているものなどは,良好な答案と判断した。
・ さらに,最高裁昭和57年判決が前提とする用途地区と比べた農用地区域の特殊性や利用強制など土地利用制限の相違に言及するなど,同判決に対する深い理解を示しつつ説得的に論じるもの,法的な申請権の有無について,内部規定である運用指針と農振法との関係や,農振法の趣旨目的を踏まえつつ説得的に論じるもの,成熟性について,多角的かつ詳細に検討しているものなどは,優秀な答案と判断した。
【中略】
⑵ 設問1⑴(全体について)
○ 設問1⑴については,おおむね書けていたという印象である。ただし,個々の問題点の相互関係を理解して的確な論理展開をしている答案は極めて少数であった。特に,申請権の有無と処分性の関係について理解していない答案が目立った。
○ 設問1⑴について,会議録において,計画自体の法的性格(処分性)と計画変更の処分性とを別個に検討するよう,解答のための手順が示されているにもかかわらず,多くの答案は,それを無視し,処分の定義をいくつかの要素に分類した上で(例えば「公権力性」と「直接的法効果性」など),それに当てはめて処分性の有無を判断するにとどまっていた。一口に処分性の問題といっても,例えば,行政規範や行政計画の処分性の有無が問われる場面と申請に対する処分かどうかが問われる場面とでは,検討すべき事項が異なるはずである。また,計画変更の処分性について論ずると書き出しつつ,計画の処分性を論じて終わっているもの,計画の処分性について検討すると書き出したのに,いつの間にか計画変更の処分性について論じているものなど,両者の区別を余り意識しない答案も散見された。
○ 拘束的計画や完結的計画といった行政計画に関する様々な用語を使用して,処分性について検討しているものの,その意味を正確に理解していないのではないかと思われる答案が見られた。
○ 処分性の判定に当たり,公権力性の有無に一切言及しない,また,公権力性の有無について係争行為を行った主体が「国又は公共団体」であるか否かで判断するなど,基本概念の理解ないし用法が十分ではない答案が多かった。
○ 処分性は係争行為の根拠となる法令に照らして定型的に判断されるべきであり,本件に登場するXの事情に照らして判断すべきものでないことはもはや周知のものと思われるが,いまだに本件事業や本件農地に係る個別の事情を論じている答案が少なからず見受けられたのは残念であった。
○ 簡単な検討で処分性を否定する答案が見られたが,原告側代理人の立場に立った検討が求められていることに留意してほしい。
○ 運用指針を裁量基準であるとする答案が相応の数に上った。計画変更又は申出の拒絶の処分性を肯定するとしても,それは裁量処分ではなく,また,手続自体に裁量があるとの趣旨を読み取ることも困難であるから(B市は,申出者に対して通知をしてもしなくても良いなどという定めにはなっていない),行政法における裁量の位置付けやその理解について,正確に学習をする必要がある。
(処分性の定義)○ 処分性の一般的な判断基準については,多くの答案である程度の解答をすることができていた。
○ 多くの答案で判例が定立している処分性の定義が記載されており,処分性という行政法の基本的な概念の学習は定着していることがうかがわれた。他方で,「公共団体」を「地方公共団体」としたり,「権利義務を形成し」を「権利義務を制限し」としたり,「法律上」(認められる)を抜かしたりするなど,定義を正確に記載することができていない答案もかなりの数に上った。基本的な概念については,その正確な定義を理解しておくことが必須であることを再確認しておく必要がある。
(農用地利用計画の処分性・最高裁昭和57年判決の理解)
○ 本件計画の設定が区域内の農地所有者の権利義務に及ぼす影響(農用地利用計画の法的効果)については,農振法が定める土地利用制限の具体的内容を同法の条文に即して検討することが求められており,多くの答案が,転用制限(農振法第17条),開発制限(同法第15条の2),利用強制(同法第14条,第15条)のいずれかの条文を挙げることができていたが,他方で,検討が不十分な答案が多かった。
○ 会議録では,「都市計画法上の用途地域指定についての判例」(最高裁昭和57年判決)を参考にし,計画としての性質や規制の程度等の違いも考えながら検討するよう指示があるところ,同判決の理解を踏まえた上で,出題趣旨に沿って秀逸な論証を行う答案も相応に見受けられた一方で,同判決自体に全く言及せず,用途地域指定との比較も全くしておらず,そのため,検討の焦点がずれたり,十分な検討がされなかったり(農振法第17条による転用制限の存在のみをもって処分性を直ちに肯定するなど)する答案が多く見られた。会議録の文脈から,本問ではこの判例の前提事案との異同を論じる必要があることは,読み取らなければならない。
○ 最高裁昭和57年判決について判例の結論と理由を正確に指摘している答案がそれなりにあった反面,理解が不十分な答案が極めて多かった。例えば,行政計画が青写真にすぎない旨を記載したり,土地区画整理事業に関する換地の有無に言及したりするなど,最高裁昭和41年2月23日大法廷判決,最高裁平成20年9月10日大法廷判決などを念頭に,都市計画法以外の法律の仕組みに言及する答案が続出した。また,最高裁昭和57年判決は,用途地域の指定について処分性を否定しているが,それがどのような理由によるものであり,本問とはどのような違いがあるかを正確に示している答案は余り見られず,中には処分性を肯定する判例としている答案も見られた。
○ 少なくとも主要な判例について,その内容を正確に理解することは行政法の学習においては重要であり,基本的な学習が不十分ではないかと考えられる。判例学習に際して,当該事案に係る都市計画法,土地収用法といった重要な個別法律の仕組みを理解することが,行政法を学ぶ上での判例学習の意義といえる。しかも,行政計画における処分性の論点は有名論点であり,問題となる行政計画の性質など事案に応じて判決の結論も異なるのであるから,判例の学習においては,問題となっている事実関係やその背後にある制度の概要や判決の射程にも気を配りたいところである。
(申出の拒絶の処分性)
○ 申出の拒絶を処分と解し得るか否かは,法令としての効力を有さない運用指針のみに根拠がある申出をもって,法令上の申請と解して申出者に処分に対する申請権が与えられていると解することが可能か否かがその前提問題となるから,農振法には申請権があるとは書かれていないことや,運用指針には法令としての効力がないということを踏まえて論述をする必要がある。答案の中には,この点を意識し,法令の仕組み全体を踏まえれば申請権があると解釈し得るとか,運用指針が農振法のあるべき解釈を具体化したと解釈し得るなどの考えを導き出したものがある一方で,上記の点を意識することなく,運用指針中に申出に関する定めがあることや,申出に対して変更の可否を通知する定めがあることのみをもって申出の拒絶が処分である旨をいきなり論ずるものや,運用指針は法令としての効力を当然に有する旨を前提として論ずるものも散見され,行政法に関する学習の定着度や実力の差が現れたところと思われた。
○ 申出の拒絶に処分性が認められるかどうかを検討する際には,申出がどのような性質を持つのかという点を考えるべきであるが,かなりの答案が,申出の拒絶自体について,判例の処分性判断の定式に照らして処分性があるかどうかを検討していた。そうした答案は,問題の意図を十分に理解していないと思う。また,同様に,運用指針で手続が定められているからとか,計画の変更が処分だからという理由だけで,処分性があると導いたり,「農地所有者等からの申出が不可欠」であるという会議録中の生の事実を記載するだけで,その事実がどのように位置付けられるのか,それがどうして申請権の存在を導くことになるのかということについて検討しないまま処分性を肯定したりする答案が多かった。
○ 申請権が付与されていれば申請の拒絶は処分性を有することになるという関係を理解していないためか,申出の拒絶により本件計画が変更されないことになるから申出人の権利義務に影響が及ぶとして申出の拒絶に処分性を認める答案も多く見られた。
○ 計画除外の申出が行政手続法所定の申請に当たるかどうか,同法第7条を念頭に検討することが求められるところ,この点につき結論に至る過程を的確に論じている答案は少なかった。
(成熟性)
○ 会議録に,「本件計画の変更の段階での抗告訴訟による救済の必要性」を検討するよう指示があるにもかかわらず,紛争の成熟性について全く触れていない答案が散見された。また,抗告訴訟による救済の必要性に触れるものも,想定し得る他の訴訟として,会議録に記載されている「本件農地についての別の処分を申請して,その拒否処分に対して取消訴訟を提起する」をそのまま記載するにとどまった答案がかなりの数に上った。会議録の記載は,当該記載から具体的な拒否処分や具体的な取消訴訟を自ら想定し,それを前提に計画変更に係る紛争の成熟性を論ずる必要があることを示唆するものであることがその文脈から明らかである上,紛争の成熟性は,その概念に照らし,具体的な紛争とそれを前提とする具体的な訴訟の適法性を論じなければ,それを検討したことにならないことも明らかであり,紛争の成熟性という概念の理解について,抽象的な言葉の記憶にとどまらずにその内実をきちんと学習しておく必要性があるように思われた。
○ 成熟性についてはそもそも論点として検討すること自体していない答案が多く,問題文を読んでいるのか疑問があった。また,救済の実効性,紛争の早期確定というワードは出てきていたが,その論理の筋道まで論証しきったものは少なく,記載があったとしても,抽象的に別の取消訴訟を提起することも可能であると記載されているだけで,転用許可の拒否処分に対して取消訴訟を提起することができる旨の指摘がない答案が非常に多かった。最高裁昭和57年判決も,用途地域指定の処分性を否定する理由として,建築確認などを争う段階で用途地域指定の違法性を主張して救済を求める途があることを挙げていたところであり,そのような論点は会議録の中で触れられている。
○ 救済の必要性の内容として,地域における医療施設の設置の必要性など,本件事案に特有の個別具体的な事情を挙げる答案が散見されたが,処分性の有無はそのような個別具体的な事情によって左右されないことについての理解が不十分であることによるものであると思われる。

令和2年司法試験の採点実感(公法系科目第2問)

 2要件でも4要件でも要件なしでも公権力性自体のあてはめはしないといけないが、要件無しで検討すると書き落とす危険が一定程度ある(問題となり得るところにフォーカスしすぎてしまうため)。そうすると、判例の定式を網羅的に検討する観点からは2要件か4要件が安全だと思われる。公権力性について検討した箇所があればよいので、要件無しでも問題はない。

・令和3年司法試験出題趣旨・採点実感

〔設問1〕⑴は,本件不選定決定の処分性の有無を問うものである。Bは屋台営業候補者の公募に応募して本件不選定決定を受けたことから,まずは,本件条例及び本件条例施行規則の仕組み(屋台営業候補者であることが市道占用許可の要件の一つとなっていること,A市屋台専門委員会(以下「委員会」という。)は選定基準に則して推薦を行い,それを受けて市長は選定を行うこと,市長は選定又は不選定の決定の通知を行うこと等)に即して,屋台営業候補者の選定が申請に対する処分に当たるか,したがって本件不選定決定は申請拒否処分に当たるかについて検討することが求められる。他方で,Bが最終的に求めているのは市道占用許可であるため,本件不選定決定は中間段階の決定にすぎず,処分に当たらないのではないかという問題もある。そこで,本件不選定決定の処分性の有無については,Bが市道占用許可を申請して不許可処分を引き出し,その取消訴訟の中で本件不選定決定の違法性を争うといった訴訟手段との比較も視野に入れて検討する必要がある。

令和3年度論文式試験出題の趣旨

仕組みから検討することが要求されている。また、救済の必要性にも触れる必要がある。が、これをどこで検討するかは指定されていない。

令和3年も長いので、必要箇所を太字にする。

3 答案に求められる水準
⑴ 設問1⑴
・ 最高裁判例(例えば,最判昭和39年10月29日民集18巻8号1809頁。以下「最高裁昭和39年判決」という。)で示された処分性判断の定式ないし申請に対する拒絶が処分となり得ることについての理解を示した上で,A市長(以下「市長」という。)が行ったBを屋台営業候補者に選定しない旨の決定(以下「本件不選定決定」という。)が申請拒否処分に該当するか否かについて検討するものは,一応の水準に達しているものと判断した。
・ これに加えて,A市屋台基本条例(以下「本件条例」という。)及び本件条例施行規則(以下,本件条例と併せて「本件条例等」という。)の定める屋台営業候補者に選定されることが,市道占用許可の要件ないし効果との関係でどのような法的意味を持つか,公募申請者による応募申請とこれに対する市長の応答(選定ないし不選定の通知)を処分性との関係でどのように解するか等,本件条例等の仕組みを踏まえて具体的に検討するものなどは,良好な答案と判断した。
・ さらに,本件不選定決定と市道占用許可との関係性について,関係条文を正確に指摘しながら網羅的に検討するもの,屋台営業候補者の選定が中間段階の決定にすぎないことの理解を示しながら,市道占用不許可処分の取消訴訟等,市道占用許可に対する争訟手段を選択する可能性や当該手段の実効性の有無について具体的に検討するものなどは,優秀な答案と判断した。
【中略】
⑵ 設問1⑴
(全体について)
○ ほとんど全ての答案が,最高裁昭和39年判決で示された処分性判断の定式について触れ,かつ,正確に記述していた(ただし,「公権力の主体たる」が抜けるなど一部不正確なものもあった。)。
もっとも,会議録において,本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性(①),市道占用許可との関係(②)といった観点からの処分性の検討が指示されていたにもかかわらず,前記処分性判断の定式を複数の要素に分割して個々の該当性を機械的に解答するような答案が少なからず見受けられ,しかも,その多くが,個々の要素をかみ合わせようとして抽象的な検討に終始し,本件不選定決定の制度上の位置付け等,事案に則した具体的な検討がされていなかった。
(①本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性の検討)
○ 本件条例等の仕組みに即した検討を行うに当たっては,定義規定も含め,条文を引用しながらこれに即した丁寧な検討が求められる。その際,本件条例第25条第1項に規定する屋台営業候補者の公募への応募が「申請」(行政手続法第2条第3号)に該当するかどうかを検討するに当たっては,同号にいう「処分」が行訴法第3条第2項における「処分」と同義であるため(行政手続法第2条第2号参照),本件条例第26条第1項に基づく屋台営業候補者の選定の処分性を検討する必要がある。しかし,このような論理構造を十分理解せず,屋台営業候補者の選定についての申請権の有無と,屋台候補者不選定通知の法的効力とを単純に並列して検討している答案や,本件条例等の規定を平面的に羅列したにとどまる答案が多く見られた。
○ 本件不選定決定に処分性,特に具体的な法行為性を認める根拠として,市道占用許可を受けられなくなることを挙げる答案が多かった。しかし,市道占用許可については国民が請求権を有しない(伝統的な行政行為の種別では「特許」に当たる)とすると,このことは必ずしも十分な根拠にはならない。その意味で,会議録において弁護士Eが述べるとおり,「本件条例及び本件条例施行規則の仕組みに即して,屋台営業候補者の選定が申請に対する処分に当たるか,したがって,本件不選定決定が申請拒否処分に当たるか」という検討をより多くの答案に行ってほしかった。
○ 本件条例等の仕組みに関し,道路法に基づく道路占用許可と本件条例に基づく屋台営業候補者の選定の関係を正確に理解していない答案が散見された。例えば,屋台営業候補者の公募申請が道路占用許可の申請と同一であると誤解するもの(両者が異なることを正確に理解しつつ,実質的に前者の申請が後者の申請であると評価できると論ずる答案もあった。このような解釈が妥当であるか否かは別途問われることにはなるが,ここで問題とするのはこのような答案ではなく,そもそも前者の申請と後者の申請が同一であると誤解する答案である。)や,屋台営業候補者の公募申請を行うためには道路占用許可を受けておく必要があるなどと誤解するものが見受けられた。
○ その他,屋台営業候補者の選定それ自体と選定結果の通知を混同した答案,屋台営業候補者に選定されることが市道占用許可の要件となっていることについての指摘がない答案,屋台営業候補者不選定通知を受けた場合,市道占用許可の申請自体ができなくなるかのように解答する答案も見られた。(②市道占用許可との関係の検討)
○ 処分性の検討に当たっては,実効的な権利救済の観点からの検討が欠かせないが,処分性の定義を論じる中で「成熟性」という観点を挙げていても,本件に即した検討において,道路法第32条第2項に基づく市道占用許可の申請に対する不許可処分の取消訴訟と対比して,屋台営業候補者の決定が中間段階の決定にすぎないという点の理解が十分に示されていないものや,単純にBが困っていることを指摘するにとどまるものが大部分であった。
○ 屋台営業候補者不選定通知については,後続処分が予定されていないから紛争の成熟性が認められるとする答案が見られたが,同通知を受けた場合にも,その違法については,道路法第32条第2項に基づく道路占用許可申請に対する不許可処分の違法事由として争えないかという観点から検討すべきであった。
(その他)
○ 処分性判断の定式に沿って個々の要素を検討した答案の中には,「公権力性」を挙げておきながら検討過程でこれに全く触れない,触れるにしても単に「公務員」ないし地方公共団体の長たる市長が選定を行ったとか,「一方的態様」で行ったなどといった理由で権力性を認める答案が相当数あった。こうした理由で権力性が認められるのであれば,例えば地方公共団体の長が行った行政指導に関しても,およそ権力性があることになってしまう。

令和3年司法試験の採点実感(公法系科目第2問)

 今回はむしろ2要件や4要件に分けて書くと書きにくかった問題だったため、要件無しで問に答えることが楽であったといえる。これが「お好きにどうぞ」という結論になる一つの理由で、どれかで書くと決めてしまうと司法試験との関係では書きにくくなるのである。
 もっとも、令和2年では2要件か4要件で書きやすく、かつ書かないとまずそうなことを採点実感で上げておいて、今度はそれを否定する、となると受験生を振り回してしまうんじゃないかと思う。

(5) 結論

 あほみたいに長くなってしまったが、とにもかくにも結論はでた
1 同じことを論じているが整理の仕方がちがうだけなので、どういう書き方しても×にはならない。
2 検討すべきことを検討する、という意識づけさえできていれば、どの書き方でも対応可能
3 ただし、判例の定式を2要件か4要件に分けて書く癖がついていると会議録に対応できず、問いに答えていない答案になってしまう。要件に分けると書きにくいときは、要件分けを捨てて問に答えることを優先するのがよい。

なので、「お好きにどうぞ!!!」となるのである。

続きは明後日9月16日にアップする予定です。どうぞよろしく!



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