処分性書くときどうするってはなし2

 こんにちは!続きを9月16日に書くと宣言したために今書いている井上です。もうちょっとだけお付き合いくださいませ。今回書く内容は、2要件・4要件・要件なしのおすすめポイントと気を付けるポイント、およびわたくしめが実際に書いたやり方と今教えているやり方、の2つです。

 最初に注意しておきたいのが、1でも述べたように、2要件と4要件でも学者によって分類が異なっている、ということです。なので、本来は皆さんがお持ちのベースにしている基本書の記述にしたがって答案を作成するのが一番よいのです。うまく本質から考えてがっちゃんこと接合できれば構わないです。が、「うまくいったかなぁ……」と不安になるのもあほくさいので、もうベースの基本書に載ってる内容に即して書くのが一番だという結論になります。基本書2冊もってるよ、とか演習書も持ってるよ、という方に向けて、以下は書いていきます。

 すべての基本書の分類について記述すると干からびてしまうので、以下では櫻井=橋本「行政法(第6版)」に書かれている内容を2要件、土田伸也「基礎演習行政法」に書かれている内容を4要件として紹介します。

2 2要件・4要件・要件なしのおすすめポイントと気を付けるポイント

(1) 2要件

ア 内容

 ①公権力性②国民の権利義務に対する直接具体的な法的規律
 原告の権利利益の実効的救済という観点は論証の補強

イ おすすめポイント

 ②国民の権利義務に対する直接具体的な法的規律の部分は定義の「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」に対応している。その行為により発生する法効果を記載するだけで直接具体的な法効果が国民に生じることを説明できる場合(例:食品衛生法上の営業許可)は、分けて書こうとするとかえって冗長になったり、混乱したりする。そういうときには、2要件にわけて検討すると、書くべきことだけ書いて終わらせることが可能。
 また、①公権力性では、a法律関係を一方的に変動させることb根拠法令に当該行為を処分とみるような規定があること等の検討を経ることが必要である。問題ない場合はあえてそこまであてはめる必要があるか疑問ではあるものの、点数があるかもしれない。そんなときに、①公権力性を要件としてあげておけば、点数を落とさずに済む。

ウ 気を付けるポイント

 ①公権力性、とわざわざ明示したからには必ずあてはめること。そうしないと、自分で要件あげておいて無視する、というかなり嫌われる答案になってしまう。
 ②国民の権利義務に対する直接具体的な法的規律の部分を端折って書かないように注意。処分性の定義に対応するように短くまとめてあるところなので、下手にオリジナリティあふれる形で端折るとあれ?と思われてしまう。
 また、司法試験のように誘導がしっかりついていて、誘導にしたがって答案を作成することが求められている問題の場合には、2要件に分解することと誘導がうまくかみ合わないこともある。うまくかみ合わないのに無理やり2要件で書こうとして誘導に従えなくなるのでは本末転倒。答案構成段階で2要件で書きやすいかな、と確認だけはしておいてほしい。

(2) 4要件

ア 内容

 ①公権力性②直接性③外部性④法効果性

イ おすすめポイント

 きめ細やかに処分性を検討したいときに、おすすめ。必要な要素にすべて分解されているため、検討漏れが発生する確率がもっとも少ない。
 また、はじめて見る法律、仕組みの中の行為の処分性を検討するときに、①~④のうちどの要素が問題となって処分性が否定されるという意見が出てくるのか検討しやすい。各要素が否定されやすい行為類型を押さえておいて、当該行為類型に当たっても処分性が肯定された判例を想起するという方法をとれば、判例も思いつきやすくなる。

ウ 気を付けるポイント

 4つ全部あてはめる時間と答案用紙の余裕があるかが常に試される。予備試験でも司法試験でもたいてい設問1個分なので、ここで大展開すると無事死亡。かといって、4つあげておいて雑なあてはめをするわけにもいかない。
 また、試験前にしっかりどの要素のときにどういう内容を書くのか、判例のどれがどの要素の話に関連しているのかしっかり押さえておかないと、「あれ、これって直接性だっけ法効果だっけ」みたいなことになりかねない。2要件だと発生しない問題なので、事前準備はしっかりしておこう。
 さらに、2要件と同じ問題が4要件でも生じる。そう、誘導とうまくかみ合わない問題である。うまくかみ合わせる方法を司法試験の過去問を使って研究する必要がある。

(3)要件なし

ア 内容

 とりあえずごみ焼却場判決書いてさっと書き始める書き方。

イ おすすめポイント

 誘導とかみ合わないことがありえない。定義あげて、誘導に即した内容を書いていくだけである。大法廷判決書けと言われればそのまま書くし、条例に基づきされるおそれがある措置を書けと言われればそのまま書く。どの要素にどう関連しているとか書かずに済む。
 自分で要件あげたせいで書きにくくてうなることもない。

ウ 気を付けるポイント

 判例の分析をしておかないと、そもそも1文字目から詰まるということになりかねない。たいていの書き始めは、処分性が否定されると考えられる理由は何かから始めるため、この分析でミスると死ぬ。
 他の書き方であれば最低限書けるところは埋められる。が、要件なしで書き始めると、「なぜそれを記述するのか」理由を真正面から書かないといけなくなりやすい。
 判例で問題になっていない定義の要素部分にも気を払うようにしないと、点数があるところを落とす可能性がある(ただし、判例の理屈に合わせて書けていたら大丈夫なことがほとんど)。

(4) すべての書き方に共通すること

 どんな書き方をする場合でも、定義のどの要素(要件)が否定されやすい行為類型なのか、当該行為類型にあたるが処分性が肯定される場合の理屈はどうなるのかを検討し、準備しておくことが必要である。どの書き方においても書くべき内容は同じで、ただ問題との相性が違うだけである。
 ということで、判例学習頑張ろう!!

3 実際に書いたやり方と今教えているやり方

(1) 予備試験のときの書き方

 大貫=土田「事案解析の作法」の第1版で勉強していたので、そこに載っていた4要件を何も考えずにあてはめておりました。若干問題文とかみ合わせるの面倒くさいなぁと思いながらも、なぜ「本件条例に基づいて受けるおそれがある措置及びその法的性格」を論じないといけないのかを答案に表現することで無難にまとめました。
 今にしてみれば設問2の検討が足りないのにAなのは、処分性がうまくいったからなのか……?

(2) 司法試験の時の書き方

 判例学習してねって普段から言っている理由になった試験。予備校の授業や学部の授業は一切聞かず、一人で勉強してたからか判例分析が雑。まじで雑だった。橋本博之「行政判例と仕組み解釈」を読んで2要件で書くやり方を採用するも、そもそもの判例学習が雑だったため土地区画整理事業計画の理屈が「土地を収用される地位に立たされたのと同じ」ぐらいしか入ってなかった。どのような条文でどう仕組み解釈するのか読み取る意識がなかったのがミス。誘導とのかみ合わせも悪かったような。再現答案なぞ書く気にもなれなかった(みんなは書いてね!)。

(3) 今教えている書き方

 生徒さんによる。4要件で書いてて書きにくそうなら、2要件はどう?って進めるし、そもそもどう書けば!って言われたら、定義あげて、処分性否定されそうな理由かいた上で認められる理由を判例に即して説明すればいいよってお伝えしてます。
 どれ採用しててもお好きにどうぞ!なのです。が、書きにくいのに「こうかかなくちゃ!」となっていると思考も固まってしんどくなります。なので、「こっちのが書きやすいよー」って誘導。要件立てた方が安心しそうな人には2要件とか。
 司法試験まで視野に入れると、要件立てる方法と要件立てずに書く方法両方身につけておくのがいいと思うんだけど。とりあえず目の前の予備試験に対応する!ってなったら2要件が一番いいのかしら、初心者さんでも書きやすい。書くべき内容落としてるよって添削された人は4要件で細かめに検討する練習を、というアドバイスを。

 

4 再度、結論を。

結局どれでもいいんだよ、お好きにどうぞ!


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