#6:【ビジネス版マンチェスター・ダービー】 シティとユナイテッドはどちらが経営的に優れているのか?
こんにちは!塾生の粕谷です。連続で粕谷の記事が続いていますが今回もお付き合いください!
さて今回はダービーと言えばのこの2クラブ「マンチェスターユナイテッド」「マンチェスターシティ」を財務の観点から比較します。
ちょうど先日マンチェスターダービーがあったのでそれを見てから記事を書こう!と思って時期が遅れたのですが普通に考えれば講義を見直してから観戦するべきでした…笑
今回は特別ゲストにシティフットボールグループの西脇さん をお招きしての講義。書けないことも多い大変濃い1時間半でした。
さて、マンチェスターに本拠地を構えるこの2チームがどれだけ近いかご存じでしょうか?両者のホームスタジアムであるオールドトラフォードとエディハドスタジアムは車で15分の距離だそうです。
その距離に世界的ビッグクラブが並んでいるなんて純粋に驚きですね。マンチェスターの方々は応援するクラブをどうやって決めているのでしょう…
今回は稼ぐ力・儲ける力・安定性・勝つ力・総合力と5つの観点から2チームを比較していきます。
稼ぐ力対決!
現状売上高が高いのはマンUですが売り上げの成長率が高いのはマンCです。
そのため両者の売上高の差は年々小さくなっています。
両者絶えず成長を続けている(コロナ時を除く)のもすごいですが、特にマンCの成長率は10%近くと、この売上規模(600億円-900億円)の企業にしては驚くべき成長率を記録していますね。
2チームの売上構成をみると両チームコマーシャルつまりスポンサー収入やグッズ収入の比率が約1/3ほどなのは同じで、マンUはマッチデイがマンCは放映権がそれぞれ高い割合を占めています。
マッチデイつまり入場料収入は常時満員の人気クラブである2チームですから大幅な増加を見込むことは難しいのが現状です。そのためCLやカップ戦でよい成績を残すことで放映権収入を伸ばすことができているマンCが継続的な成長を記録している理由とも言えますね。
また満員だからとマッチデイを軽視するわけではなく、西脇さんいわく「毎年のようにホスピタリティシートを新設している」など、自力で稼ぐキャッシュもしっかりと確保するところにもマンCが成長している一端を見ることができますね。
儲ける力・勝つ力対決!
次に儲ける力として費用・利益についてみていきます。
まずは営業費用ですが、両チーム毎年10%近い増加とかなりのスピードで費用が増加しています。その金額何と60億。Jリーグのトップクラブレベルの費用が毎年増えているとは…スケールが違いすぎる…
ここ4年で300億、+50%ほど増加!。勝点1当たりの人件費効率はマンCの方が高く、高い成績を残し放映権収入が増加するというよいサイクルを生み出すことに成功しているのがわかります。
それでも売上高に対する人件費の比率は80%近く(マンC > マンU)と、投資しなければ勝てないし、投資したからと言って勝てるわけでもないというプレミアが如何に過酷で競争が激しいリーグかが見て取れます。(ちなみにJリーグは高くても60%ほど)
安定性対決!
売上はマンUが、費用はマンCの方が高いためもちろん利益を上げているのはマンUになるのですが、かといってマンUが毎年内部留保を確保し来るべき投資に備えることができているのかというと…そういうわけではありません笑(内部留保は毎回出てくる定番ワードですね)
マンUはLBOローンと呼ばれる会社を担保に借り入れを行っているため借り入れに対する利子の支払いが毎年発生しています。そのため金利だけで50億の支払いがあり結果当期純利益で見るとほぼブレイクイーブンとなっています。
赤字ではないのでいいのでは?と私も思ったのですが、すでに借り入れをしているため、さらなる大きな借り入れができないという落とし穴があるのです。一方、借入無しで営業利益の中で最大限強化や事業成長に投資できるマンCの方が上手くコントロールしているといえるのではないでしょうか。
財務の安定性としてもマンUは借り入れが多く純資産の水準が低い、つまり債務超過の可能性が高いといえます。また今回のコロナ禍のような状況で借入することができないといったリスクも内包しています。事実マンUは有事に備え現金保有が高くなっています。一方マンCは純資産が厚いため債務超過のリスクは低いといえます。
ここまでをまとめると以下のような表になります。
ここまで講義をいただいた山田塾長は「マンUサポーターがいたら刺されるかも…」とお話してました。笑
それぐらい近年もマンUとマンCではビジネス面で差があったということですね。
戦略対決!
ここからはマンUとマンCがこれまでどういった戦略をとってきたのか。を見ていきましょう。
マンUは2016年段階ではNo1のブランドバリューを持つクラブでしたが現在では3位に後退。また売上自体は2003年から2017年で3倍にも上がりましたが、その3/4は強化費に流れ、かつ安定的な成績を残すにまでは至っていないという状況に陥っています。
世界のトップを走っていたといえるマンUですがここ10年でその財産を消費してしまったといえるのではないでしょうか?
一方マンCは2013年以降グローバル展開に力を入れクラブの価値を高めていきます。イングランド外のクラブへの投資を進め、グループ間のフットボールのノウハウやマーケティングにおけるシナジーの発揮にも投資を行うことで、相乗的効果を生み出すことに成功しました。
ここで出てくるのがPPMのフレームワーク!サッカークラブでみるとは思いませんでした。マンCはシティフットボールグループの中の金の成る木になりつつあるわけですね。
PPM当てはめると、クラブが商品として扱われることに少し見慣れなさを感じつつ、シティグループが行っていることのスケールの大きさを私は感じました。
ただ、実際のところシティフットボールグループってマンCしか稼いでないのでは?と思っていたのですがしっかりとほかのクラブも稼いでいるのです。
グループ売上のうちマンCの比率が86%まで分散が進んでおり、なんと成長率ではマンC単体では13%に対し全体では17%としっかりと成長させているのです。
まさにグループシナジーが好循環を生んでいるわけです。
実際に西脇さんも「スポンサービジネスはネットワークであり、クラブ間のつながりが新しいつながりを生んでいる」とその効果をお話していました。(多分これぐらいしか書いていいお話がありません笑。すごい話はぜひアーカイブで!)
赤い悪魔と呼ばれ、マンチェスターと言えばユナイテッドでしょ!という時代から、強いほうのマンチェスターはシティと思われるようになりつつありますが、その変化の過程にはピッチ外での戦略性が大きく関わっていることを実感する回でした。
一方マンUは、コロナ禍での低迷から株式価値が戻りつつあるタイミングでのオーナー・グレイザー家の株式売却など、純粋に企業としての投資価値が高いがゆえにオーナーに振り回されてしまっているのかもしれません。
これからのマンCの成長はもちろんマンUの巻き返しにも注目していきたいところです!そしてシティフットボールグループの1クラブである横浜F・マリノスにも注目です!
次回予告!
次回は定例勉強会:ブンデスリーガのビッグクラブ比較です!
今年も激戦を繰り広げているこの2クラブを見ていきます!
山田塾定例勉強会#7:2021年11月26日(金)21時〜
『財務三表からみるライバルクラブ経営戦略比較:バイエルンvsドルトムント』
山田塾定例勉強会#7:2021年12月17日(金)21時〜
『財務三表からみるライバルクラブ経営戦略比較:バルサvsレアル』
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最後まで読んでいただきありがとうございました!!!
(執筆:粕谷 聡太)
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