#5:フットボールファイナンスにおいて IR・PRより適切な"SR"とは一体?
お久しぶりです!塾生の粕谷です。前回のnoteからだいぶ時間が経ってしまいました…け、決してサボっていたわけでは…笑
ここからペース挙げれるように頑張ります!
さて今回のテーマはIR・PR。普段から耳にすることもあるこのワードですがフットボールクラブではどのように扱われているのでしょうか。
今回もフットボールの世界の特殊性が垣間見える回でした!
IR・PRとは?
そもそもIR・PRとは何なのでしょうか?
IR(Invester Relations):企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績同行に関する情報を発信する活動のこと。「投資家向け広報」
PR(Public Relations):あらゆるステークホルダーがその活動の対象になる。
これらIR・PRは、「外部とどうコミュニケーションをとっているのか」を表すものです。
IRは財務部が、PRは広報部が、と別々に担うことが一般的。対象が変わるので当たり前の様に思いますが、リソースが不足しているフットボールクラブにおいては両者を1人で担当しているなんてことも…
ここからは一般企業とフットボールクラブのIR・PRの違いに触れていきます。
まずは一般企業でのIRについて
そもそもIRの狙いは
・投資家に会社の存在を知ってもらう
・投資家に対して正しく会社の状況を理解してもらう
この2点です。特に2点目について最近では開示義務以上に説明しているケースも増えていると山田塾長はお話します。
現状の赤字が将来性に繋がっていることを説明したり、資金調達の目的を説明しサポートしてもらうケースもあるそうです。
IRは大きな投資にむけた資金調達がしやすくするなど経営にも影響を与えるモノなのです。
企業同士の持合い株が多かったこともあり従来の日本ではIRは最低限しか行われてきませんでした。しかし最近では株主からのプレッシャーが経営陣の交代まで至るなど、株主の存在感が増しIRを強化することがトレンドになりつつあります。
一方PRは
・商品を使ってくれている消費者に正しく情報を伝える
・顧客候補となる企業に正しく情報を届ける(新サービスなど)
・採用候補者に正しく会社の実態を届ける
などが狙いです。そのため対象はエンドユーザーや学生,・転職検討者などになります。
PRはマーケティングやクレーム対応、採用活動などと言った面で経営に影響を与えるのです。
ここまでが一般企業におけるIR・PRです。
では本題のフットボールクラブではどうなるのでしょうか?
SRとは?
といいつつもまずはフットボールクラブのステークホルダーを確認しましょう!
図を見てわかる通り、投資家やビジネスパートナー、地元関係者からスタッフに至るまで多岐に渡っていることがわかります。
ステークホルダーが多岐に渡るフットボールクラブにおいてもっと適切なIR・PRの考え方がある…そこで紹介されたのがIR・PRに変わる言葉、
SR(Stakeholder Relations)です。
ステークホルダー・リレーションズ・マネジメントの目的は、相互利益のために利害関係者(=ステーク・ホルダー)の態度、決定、および行動に影響を与えることであり、利害関係者はそこから利益を得る関係性にあります。そうすることで、各利害関係者が協力する動機が十分に与えられることなります。 関係する全ての関係者の利益を可能な限りバランスさせるには、アプローチに工夫が必要であり、 綿密な計画を立て、最適なバランスを構築しなければなりません。
このようにすべてのステークホルダーとの利益を考えるのがSRです。ステークホルダーはそれぞれ特徴があるためアプローチに工夫が必要になってきます。スポンサーによっては求めるものが真逆であったりしますからね…
このSRを実現するために必要になって来るのがホリスティックマーケティングであると福田先生はお話します。
ホリスティックマーケティングとは統合型マーケティング、リレーションシップマーケティング、社会的責任マーケティング、インターナルマーケティング、この4つのマーケティングをバランスを取りながら実現する。というマーケティングです。
これらのマーケティングをクラブの活動に当てはめるとこのようになります。
例えば最近トレンドのSDGs。SDGsは社会的責任マーケティングに当てはまりますが、SDGsへの取組が統合型&リレーションシップマーケティングの領域になるスポンサー営業のツールになるなど、これらは相互に影響を及ぼしています。
コメントにもあったのですが、クラブリソースに対してステークホルダーが多いのもフットボールクラブの特徴です。だからこそ工夫が必要になってくるというわけですね…
ここで飯塚さんから質問が投げかけられます。
「どこまで、なんの”ステークホルダー”に説明責任を果たすべきなのでしょうか?」
これに対する講師陣の考えを聞けるのも山田塾の面白味!ここはぜひ動画でご覧ください!
特に社長の説明責任問題はぜひ聞いてほしいです!!
個人的にはスタッフや選手のマーケティングを重視する必要があると思います。実際にスポンサーやユーザーと接点をもつスタッフに対してはもちろん、最近ではSNSの発展で選手も営業的な面でも戦力になりつつあります。中村憲剛さんのインタビューでもありましたが、いかに選手にスタッフ意識を持ってもらえるかが重要になってくるのではないでしょうか?
サッカークラブの決算
講義ではIR・PRを担う広報の役割に話が進めます。
広報の仕事は大きく3つあります。現場を伝えるチーム広報。素材撮影やデジタルマーケティングを請け負うビジネス広報。そしてプレスリリースやSRなど行う会社広報です。
それぞれに専任がいても不思議ではない業務ですが、フットボールクラブにおいては、異なるスキルが必要とされるタスクを兼務してこなさなければならないところがほとんどです。
フットボールクラブにおける広報・SRの課題は数多く存在します。
先ほど挙げた異なるスキルが必要なのに兼務してこなしていることや、コストセンターの為人手が確保されず、広報の中でもお金を生むことに繋がるビジネス広報に人員が偏りやすいといったリソースの問題。もちろんIRといった会社情報の開示などはリソースを割かれにくい業務です。
会社情報の開示の中に決算情報の公開も含まれます。Jリーグにおいては経理・財務専任規定が存在し、クラブライセンスでも規定されています。
決算の流れは一般企業であろうとフットボールクラブであろうと同じですが、決算の提出先として決算公告を官報かHPに掲載すること、有価証券報告書を総理大臣に提出すること(上場企業)以外にライセンス維持のためにリーグや大陸協会にも提出することがフットボールクラブの特殊なところですね。
ではJクラブはどこで開示しているのか?ということですが、現状だと浦和レッズ、コンサドーレ札幌、ロアッソ熊本の3チームしかクラブHPで公表していません。この中でグラフや説明も込みで公開しているのは浦和レッズのみ。このあたり流石ですね。
けど皆さん各クラブの決算情報見たことありますよね?
それはJリーグでは決算開示をリーグが代行して行っているからです。
またDeloiteが公開している”Jリーグマネジメントカップ”も公開代行として機能しています!
近々スピンオフ講義として里崎さんからの説明が入るかも?期待してます!笑
これまで決算開示資料をリーグや外部機関が出すことが当たり前だと勝手に思い込んでいましたが、しっかりと通常の仕組みを知ると見え方が変わってくるのではないでしょうか。
最後にフットボールクラブは決算情報を公開した方がいいのでしょうか?
公開するメリット、デメリットはもちろんあります。
ステークホルダーからの信用を得やすくなりますし、経営の透明性も勿論上がります。またクラブがやばい!となれば助けてくれる企業も出てくるかもしれません。特にサポーターは行動に移してくれるでしょう。
しかしデメリットも大きい…。以前の講義でも内部留保を留められないフットボールクラブが話に上がりましたが、公開することで「もっと強化に使え」「儲かってるならスポンサードいらないよね」といったネガティブな反応も予想されます。
この問題は、経営に対する責任を持っていないステークホルダーが存在する為起こるのですが、それこそサポーターなどはステークホルダーの中でも重要度が高く、声も大きい存在でありながら経営状況に対する理解度が高いわけではないのです。
公開するべき?するべきでない?についても大変盛り上げりました!「決算を公開するとファンが増える⁉」はぜひ実際に講義を視聴ください!
情報を開示することはクラブをより深く理解してくれる人を増やすことができる
フットボールクラブは多様なステークホルダー=多くの人との係りによって成り立っていることを実感する1時間半でした。
まとめ
”フットボール”がメインかつ唯一といっていい商品であるクラブにとって、その魅せ方や伝え方の重要性を改めて感じました。多くの共感を呼ぶことや、勝敗によらない魅力を生み出すことができるのがIR・PRであり、情報の活用方法次第でもっとクラブを発展させることができる分野なのではないでしょうか。
さて第5回も終わり基礎知識編は終了です。
次回からは実際のクラブの事例をもとに講義が進みますのでお楽しみに!
次回予告!!!!
その①:スピンオフ第4弾が決定👍
まさにこの状況下で大変苦しんでいる球団・クラブが多い中、ど真ん中のテーマ&ゲスト講師にお越し頂けることになりました。
山田塾スピンオフ#4:2021年11月19日(金)21時〜
『コロナ禍でも過去最高利益を出した宇都宮ブレックスの経営管理手法とは?』
宇都宮ブレックス代表取締役 藤本光正氏
今回もアツい!!!!!
その②:定例勉強会はブンデスリーガのビッグクラブ比較
山田塾定例勉強会#7:2021年11月26日(金)21時〜
『財務三表からみるライバルクラブ経営戦略比較:バイエルンvsドルトムント』
こちらも激アツ!!!!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(執筆:粕谷 聡太)
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