【プロット】頭脳明晰な脱獄囚が、宇宙ステーションに
帰還モジュールへの連結口は、とても狭い。
「まるで棺桶だぜ」
宇宙までやってきて、若村は愚痴をこぼした。
脱獄不可能な刑務所で、史上最悪といわれるパンデミックが起きた。
出所不明のウイルスに感染した者は、必ず死に至る。
刑務所内は騒然となった。
もちろん、外には出られないしウイルスを外に出してはならない。
このままでは全員死んでしまう。
一つだけ生き延びる道が用意された。
刑務所から直接宇宙へ飛び立ち、宇宙ステーションで実験を行うのである。
絶望的な状況でも、人間は生にしがみつく。
宇宙へ行ったところで、帰還できるはずがない。
だが若村には予感があった。
生きている限り希望はある。
そんな思いの裏には、冤罪があった。
死ぬのは簡単だが真実を明らかにして、傷つけられた尊厳を取り戻さなくてはならない。
それに、脱出不可能といわれると、やってやりたくなるのが泥棒というものだ。
「俺は犯罪を散々やったが、コロシはやらねえ。
犯罪で殺されもしねえ。
どんな悪条件でも、シゴトをやり遂げる」
男の尊厳だけが最後に残った。
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