【極ショート小説】いぶし銀 「音声燻製」
N県元川河川敷で、子どもの遺体が発見された。
警察は犯人の行方を捜している。
「遺留品はあったのか」
刑事一課長の大藪は、十河警部に言った。
課長席の机上に、革靴のまま足を投げ出し訝し気に現場の写真を睨みつけている。
「財布やパスケースは発見されませんでした。
聞き込み捜査と監視カメラ解析を急ぎます」
十河は報告を済ませると、捜査本部に机やパソコンを設置し始めた。
スマホが鳴り、呼び出し音3回で出る。
「警部!
聞き込みから有力な情報が出ました」
若い刑事が息を切らしている。
「よし。
どんな情報だ? 」
声が聞こえて、刑事部長の張山も近くにやってきた。
思わず十河は最敬礼で直立不動になった。
「いい。
続けろ」
「実は、声を聞いたという情報です」
「どんな」
「電子音のように無個性で、渋い燻製のようないぶし銀だそうです」
「おまえ、真面目に調べろよ」
「まじめです。
音声燻製です」
「ふう。
十河、おまえも行ってこい」
了
この物語はフィクションです
「利益」をもたらすコンテンツは、すぐに廃れます。 不況、インフレ、円安などの経済不安から、短期的な利益を求める風潮があっても、真実は変わりません。 人の心を動かすのは「物語」以外にありません。 心を打つ物語を発信する。 時代が求めるのは、イノベーティブなブレークスルーです。