中学3年生に告ぐ、
「今日の集会どうだった?」
「尺の割にオチ弱めでした」
「失礼なことを言うな、失礼なことを。あとあれやめろ『以上で学年集会を終わります。何かお話のある先生はいますか?』って言われて『はい』って出てきた先生がマイク握った瞬間にあーって3人ぐらい同時に天を仰ぐあれやめろ」
「いゃだって今日の集会とイチイチだったんですよ?iPadで測りましたもん」
「測るなそんなもん」
「で、マイク握って最初に何て言ったか覚えてます?」
「え、覚えてない」
『A先生がお話されたことがすべてだと思います』って言ったんですよ」
「うん」
「『すべて』じゃないんかいって思いました」
「失礼なことを言うな、失礼なことを」
「で、みんな俺も担任だからちょっとだけ喋ってもいい?夏休み前だし。5分後!5分休憩していいから!」
「いいですよ」
「キングダム今何巻?」
「47です」
「ねぇ早過ぎない?受験生」
「夏休み何するの?」
「20時間勉強します!朝6時から夜8時まで」
「死ぬよ?14時間しかないし」
「この計画表の''塾の日''はわかるんだけど、''暇な日''と''マリオカートの日''の違い何?」
「夏休みの宿題早めに終わらせようって言ったけど、夏休みの振り返り始まる前に書いてるけど大丈夫?」
「ねぇなんか花火大会の予定多くない?日本中回ろうとしてる?」
「1回席着いて。5分だけ喋ってもいいかな。1学期お疲れ様。修学旅行とか、テストとか中体連とか色々あって大変だったけどよく頑張りました」
「した!」
「それぞれ結果はつきものだから望んでた結果とは違うかもしれないけれど、それを最悪だと決め込むにはまだ早い気がするのよね。ほら、この経験があったから良かったなんてことは人生においてざらにあるわけで、むしろ全部あって良かったと思える人は何が起きても大丈夫だと思えるから生きやすいのよね。メンタル強い人ってそういう人じゃん?」
「じゃあ俺メンタル強いっす」
「そりゃ良かったよ」
「さぁ明日から長い夏休みが始まります。今年は何日あるか知ってる?」
「サーティーセブン!」
「サーティーセブンThat's right。37日あるのね」
「めっちゃある最高」
「でね、俺はね37日って人が変わるには十分な時間だと思っているの。37日が人が変わる上で十分な時間であることを伝えた上で一番大切な日はいつだと思う?」
「最終日?」
「宿題終わってない人からしたらね。最終日めっちゃ大事。でもそんな状態で最終日迎えないで」
「1日1日の重さは同じだからどんな日も大事なんだけど、俺はね明日だと思ってるの。もっと言うと今日の夜から始まって明日の1日が一番大事だと思って生活してほしいの。ここちゃんとできたら絶対2日目もいけるから。そうやって少しずつ変わっていく、変わろうとしていくの。逆に''頑張ってきたから今日ぐらいいいや''から入っちゃうと、次の頑張りのきっかけが見つからないわけ」
「テストが終わった日にも言ったよね。せっかく頑張ってきたその頑張りを0にしちゃうのはもったいない。テストが終わった今日ですら5分だけでも勉強してって。0から1が一番パワー使うんだから」
「なるほど」
「ありがとう、みんなのその目が好きよ。ちゃんと届いてるなって思わせてくれるその目が好き。でね、俺は今日打ち上げがあるの。絶対に酔って帰るわけ。それでも今日の夜逃すと絶対にズルズルいくのわかってるから、英語の単語帳チャプター1つとサッカーの勉強だけしたら寝るの。で、明日は絶対に二日酔いだけど、我慢して図書館行くの。これは誓う」
「何目指してるんですか?」
「何目指してるのんだろね?変わりたいんじゃないかな」
「ほー」
「みんな受験生だから、楽しいこともたくさんあるだろう夏休みだけど、ちゃんと勉強することをおすすめする」
「めっちゃ塾です」
「そう、多くの人がめっちゃ塾だよね、夏期講習行ったりするじゃない?マジで頑張って」
「マジできついっす」
「きついけど、頑張ったことがないって人はこれから先、頑張らなきゃいけないところで頑張れなかったりするからね」
「でね、きっと塾の先生やお家の人は言うのよ」
「勉強は量より質だよって」
「うん」
「そんなことないから。量だから。大人に踊らされんなよ」
「え?」
「勉強はね、かけた時間だから。どれだけ量をこなせるかだから。特に中学生はね」
「めっちゃ質だって言われます」
「だいたい質が大事って言う人に''質って何ですか?''って聞いても答えてはくれないんだから。その人だって''集中してやること''ぐらいにしか考えちゃいないわけ」
「で、その曖昧な言葉に踊らされて、''質''を''短い時間集中して頑張ること''''きれいにノートまとめ直すこと''とそれぞれが解釈し始めて結果的に何も積み重なってないなんてことがザラなんだから」
「ギクっ」
「はじめから質を求めることなんて無理なのよ。自分には何が合っていて、何が合わないかなんてやらないと見えてこない。最初から効率を求めて狙い打ちしたそれが、ハマらないこともある。だからハマるものが見つかるまで探し続けるわけ。そうすると時間ってかかるじゃん絶対に。だから一周回って''勉強は質より量だ''って言う大人がいたら俺は信用していいと思ってる」
「俺はね、人生で一番勉強したなって思うのは教員採用試験の時なの。あの時はマジでアクチュアルスタディータイム(トイレやスマホなどを除く、本当に集中していた時間だけをストップウォッチで測った時間とクラスでは定義している)7時間とかあった。図書館にある47都道府県の過去問10年分、教採までに全部やるって決め込んで2年かけて終えたの。間違えた問題は必ずコピーして貼り付けるの。最初はコピーだらけだけど、最後の方はほとんどコピーがなくなったの。そんなんだから教採当日も知らない問題、見たことない問題がないわけ」
「すげぇ、狂ってる」
「すげぇと思うじゃん?余裕だから。そこまですれば負けようがないんだよ。そんな話を毎年するんだけど、一昨年自分のクラスにいた女の子で俺よりもっと凄いなと思った子がいるんだけどもう少し話してもいい?」
「はい」
「その女の子は自分が行ってる塾の問題に加えて、友達が行ってる塾のテキスト借りて勉強してたの。それも3つぐらい。で2学期には1学期より内申7つ上げて合格したの」
「凄すぎる」
「それぐらいやるのよ、本気なら」
「頑張ります、20時間勉強します!朝6時から夜8時まで」
「だから死ぬよ?14時間しかないし」
「あ、あと…」
「ん?」
「命は大切に」
「はい」
いただいたサポートでスタバでMacBookカタカタ言わせたいです😊