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「僕は、青鬼に生まれたこと…」

鬼です。青い方の。

僕の皮膚がみんなと違って青いと気づいた時にはまだ、その違いを悪く言う者が守られる時代でした。マジョリティが守られる時代。小さい頃は誰しも人と違うものを希有(けう)の目で見ますから、その視線の冷たさは僕を苦しめました。他と違うことを受け入れるにはあまりに青い年齢で、同じように青い父さんのように、その青さを受け入れられるほど強くはありません。

母さんは赤鬼です。世間の反対を押し切って青鬼の父さんと赤鬼の母さんは結婚しました。色の違いを超えた純愛は今でこそ素敵な物語になりそうですが、2人の純愛の結果生まれたのが僕ですから少し迷惑に感じます。

そういえば昔、生物の授業で「赤鬼と青鬼の間に生まれた子どもは、青鬼の特徴を備えた子どもが生まれる確率が高く…鬼の原型は青鬼であり、遺伝とは原型に近いほど優性であり…」聞きたくなくて、教室を飛び出したんでした。

赤い鬼と青い鬼の間の子どもが青く生まれ、その色を理由に生きづらさを感じることなんて容易に想像がついたはずです。青く生まれただけで叩かれ、不当な差別を受けるそんな時代に僕は生まれました。「子どもの幸せを願うなら産んでくれなければ良かったのに」その多くが赤く生まれた世界で、青一点、ポツポツと目立つ青鬼は一度はそう思ったことがあるでしょう。ごめんなさい父さん、母さん、こんなことを思ってしまって。

多くの鬼は色が違うというだけで、僕の中身を見てくれないのです。どれだけ中身を磨こうと、その青さのために僕を覗こうとすらしてくれない。こんなことを考えているんだと伝えたくても、その青さを理由に「どうせ…」と言われてしまう未来を思うと、どうしても尻込みしてしまいます。僕はそんな赤く染まった社会に何度も何度も負けそうになったし、生きることが嫌になることもありました。

子どもがこんなにも苦しんでいるのに、両親は僕を青く産んだことを悪く思う様子なんて一度たりとも見せませんでした。それどころか、僕を青く産んだことを誇りに思っていると胸を張ります。僕が泣いて帰ってくると母さんは必ず「大丈夫…だから」と声を掛けてくれます。その度に少し前を向きます。

こうして日々色んなことを抱えながら僕は生きています。もちろん嬉しいことだってあるので生きる理由もあります。赤鬼の中にも僕の中身を見て接してくれる優しい鬼がいます。その子は僕の考えていることが好きだと言ってくれます。僕は調子に乗ってこれまで尻込みして誰にも伝えることができなかったことを話します。彼女はうんうんと言って聞いてくれるだけです。

学校でこんなことを聞いたことがあります。「人間の世界でも色の違いで差別を受ける人がいて、それは残念なことに未だに残っている。色の違いで雇用に差があったり、それが理由で貧困が生まれたり、最近だと白人警察に不当に殺された黒人がいて世界的な反人種差別抗議につながっている」と。最近では男だから、女だからと性別による差別もあるそうです。鬼の世界でも、人間の世界でも時代が進んでもなお変わらずに差別に苦しむ人がいるんだと悲しくなりました。

赤鬼の彼女は言います。「鬼も人間も差別は一部の不道徳な個人の問題だと思ってるのよ。私達には関係ないって思ってるの。でもそれっておかしいわ」と。彼女みたいな鬼がたくさんいてくれたらいいのにと心底思います。

僕は彼女に出逢ってから少し生きることが楽しくなりました。違うことを認めてくれる人がいることが、違うことにコンプレックスを抱える人にとってどれだけ自信をくれるか、違くない者にはわかり得ないことかもしれません。

普段温和な彼女も誰かが傷ついているのを見ると居ても立っても居られません。

「変えられない容姿のことを否定するのってダサいと思わない?ホント。''違う''ことって''特別''なのに」

ほらまた怒ってる。

「青いことの何がいけないわけ?''違う''ことって''特別''なのに」

まぁまぁ。

そんな時の彼女の口癖は決まって「違うことは特別なのに」でした。僕はずっとこの言葉を大切にしています。何か挫けそうなことがあっても「違うことは特別、違うことは特別」と言い聞かせて。

母さんは言います。「昔は父さんも臆病だったんだから。周りと違うことにビビって何も言えないの。あの人の考えって凄く素敵なのに。違うことは特別なのに」

あぁそうだ、「大丈夫…」に続く母さんの口癖も彼女と同じでした。僕も父さんもみんなを同じように見てくれる素敵な鬼に救われたんですね。

時が経ち、僕は明日結婚します。父さんが母さんを愛したように、僕も赤い色の鬼と。

「本日はご列席賜りまして…ウイルスの影響でまだまだ世間は落ち着きませんし、今は鬼を狩る人間の少年達も流行ってると言うことでうかつに外も歩けません。青鬼であることで辛い思いをすることもあるでしょう。ますます生き辛い世の中です。しかし、これからどんなことがあっても精一杯生き抜くつもりです。両親が変わらずに強くいてくれたから、僕は''強く''そして''青く''あることができました。違うことは特別、ですよね母さん?」

「ええ」

「僕は、青鬼に生まれたこと

…誇りに思います」

「…」

あぁ良かった、父さんと母さんも泣くんですね。
















鬼の目にも涙、なんつって。


鬼滅見たことないんだけど、こんなんっしょ?

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やまだえっせい
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