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生成AIとジャーナルクラブ 「ググる」の逆襲 (Gemini 1.5)編:第1回 UpToDateの要約1—疾患について


主な対象者

本記事は、UpToDateを使用する全ての医療者に有用と考えております。
ノーコードで出来る内容を扱っています。
#ジャーナルクラブ #Gemini #ググる #プロンプト #EBM #UpToDate #AIとやってみた

本記事の画像はAdobe Fireflyを用いて生成しました

はじめに

日常診療に忙しくしている臨床医にとって、医学の進歩についていくのは大変です。日々出版される論文数の増加も著しく全てに目を通すことは不可能で、二次資料を活用することが不可欠です。
ですが、その二次資料ですら、アップデートする領域が増えてきたりその速度が増してくると読み込むのが難しくなっています。
UpToDateは二次資料としての信頼性が高く、初学者の学びや非専門領域のアップデートにおいて定番とされていますが、一つひとつの記事が長く、PDFにすると40ページ以上ということも珍しくありません。そこに英語の壁もあり、とても読みこなせないという方も多いのではないかと思います。

以前、Claude 3 SonnetでのUpToDate要約プロンプトを紹介しましたが、無料版のSonnetでの使用を想定し、複数段階に分けた内容としていました。

Gemini 1.5の衝撃

ところが、先日公開されたGemini 1.5を使用すると、1回のプロンプトで一瞬で終わってしまいます。Gemini 1.5 Flashだと抜け漏れも多く実践使用は厳しいですが、Gemini 1.5 Proだと非常に精度が高く、かつ高速に要約を作成することができます。

Googleアカウントを持っていれば、上記のサイトから、中央の「Google AI Studioにログイン」のアイコンをクリック、次の画面で左側のサイドバーにある'Create new prompt'→'Chat Prompt'の順に進めていくと、フリーテキストでプロンプトの入力ができます。

開始時に、ファイルを添付する(この時、Googleドライブを使用します)か、URLのリンクを貼り、Shift+Enterとして、次のプロンプトを入力します。

プロンプト

#あなたは経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。
#添付したファイルの内容を、教育効果を最大化する目的でまとめてください。
#以下の指示を実行して下さい。2と5については、200〜300字程度で要約してください。4は全体で800〜1000字程度で要約してください。

  1. タイトルと’Summary and Recommendations’を日本語に翻訳してください。

  2. 総説の目的と範囲: 著者が何を伝えようとしているのか、どの範囲を対象としているのか。

  3. ‘Society Guideline Links’を日本語に翻訳して、ハイパーリンクを提示してください。別の記事に分かれている場合は、その記事のリンクを提示してください。該当がなければ「該当なし」と記載してください。

  4. 臨床的意義: 内容が臨床実践にどのような影響を与えるのかを具体的に述べてください。各項目について、該当があるものについては以下の点を含めて記載してください。該当がない場合は、本文中の別の記事のリンクを紹介してください。リンクもない場合は記載しないでください。

    1. 疫学やリスク因子: 罹患率、有病率、地域差、主要なリスク因子とオッズ比/リスク比

    2. 病態生理: 発症メカニズムの最新知見、遺伝・環境・免疫の関与

    3. 臨床症状: 典型的症状、症状の多様性、症状と病型・重症度との関連

    4. 診断法: 推奨される診断アルゴリズム、各検査の感度・特異度、新しい検査法の位置づけ

    5. 治療法: 各治療法のエビデンスレベル、適応、有効性と安全性、新薬の位置づけ

    6. 予後: 生存率、予後因子とそのハザード比、機能予後、再発率

  5. 私の施設でこの結果を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の(都市部, 郊外, 農村部, 離島 etc.)にある(高度急性期, 一般急性期, 亜急性期・回復期, 慢性期, etc.)を担当する(大学病院, 市中病院, 診療所, etc.)で、(自施設や診療科の特徴、多い患者層など)です。

  6. 限界と今後の課題: 総説の限界と、今後の研究課題について。

#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 特に持ち帰るべき学びのポイントを3,4個の箇条書きにまとめてください。

  2. この総説のキーワードを5つ、ハッシュタグをつけて提示してください。

  3. 更に学びたい人へ、引用文献の中でおすすめの論文を3~5個挙げてください。挙げた論文一つひとつに対して、特徴を一文で記載してください。半分以上の論文を、本論文の発表から5年以内のものから選択してください。バンクーバー方式でお願いします。

(ここまで)

プロンプトの補足

以前のClaude 3では、上記3.の'Society GuidelineLink'のハイパーリンクが上手くいかなかったのですが、今回のGemini 1.5 Proでは全く問題なくリンクが表示されます。

5.の「私の施設で〜」の部分は、EBMの5つのステップの4番目である「この情報を自分の患者に適用できるか?」を踏まえたもので、医療機関のセッティングにより代用しています。ジャーナルクラブでは一般論だけでは指導医に響かないこともあるので、一歩踏み込んで自分のセッティングでの適用まで問うています。

EBMの5つのステップ

ここで注意点ですが、生成AIには一般的に個人情報や企業情報をそのまま入力すると学習材料として利用されてしまう恐れがあります。上記のような一般的な表現に留めた方が良いでしょう。

5/25追記
Gemini 1.5において、こちらで紹介した方法でおすすめの論文を提示してもらうと、ハルシネーション率が非常に高いことが判明しました。タイトルもバンクーバー方式の巻号記載も、全く存在しない論文を挙げられることが多いです。そのため、この記載は削除とさせていただきます。
それ以外の点では、十分実用性があると思います。

終わりに

このプロンプトを用いることで、ものの数分でUpToDateの記事の要点の情報が得られます。細かい部分の確認は時間がある時に行うと良いと思います。

最近では検索用の生成AIとしてPerplexityも高評価を得ており(私も愛用しています)、「『ググる』から『パプる』へ」など、Googleの存在感が薄くなりかけている印象もありましたが、このGemini 1.5は本気でスゴそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。

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