【立場を超えて】対話から気づくバイアス
話し手:山田崇さん(株式会社ドコモgacco)、吉竹華乃さん(信州大学繊維学部1年)
書き手:石井恵里(オンラインかばん持ち6期生/信州大学経法学部3年)
日時:2024年11月8日(金)6:00~6:30
Check In
山田崇さん:
今週を振り返ります。月曜日から今日、金曜日まで毎日Voicyをやりました。J-WAVEのTOKYO MORNING RADIOので朝8:15から放送していただいたコーナーに出て、その反転学習としてVoicyを収録しました。
平日すべてVoicyできましたね。久しぶりにメッセージをいただく方も何人かいらっしゃって、聞いていただけているんだなと実際にメッセージをいただいて思いました。話している時には携帯の端末に向かって一人で話していますが、それが時間や場所を超越して色々な方に届くのは嬉しいですね。
石井:
山田さんのラジオ聴きたい!と思いつつ今週はバタバタしていましたね。週末は三連休で祖父の以前住んでいた茅ヶ崎に行ってきました。また、昨日、一昨日はGreen Innovator Academyで昨年パートナーとして政策提言先として関わっていただいた蒲郡市に行ってきました。
以前も少しVoicyで紹介しましたが、今蒲郡市の西浦温泉郷というところでワンウェイのアメニティを減らしていくために、使用済み歯ブラシの回収とそれを使ったアップサイクルの取り組みをしています。
今回は、プラスチックリサイクルの専門家をお招きして、旅館の事業者の皆さんに向けてプラスチックリサイクルの難しさや使い捨て歯ブラシをリサイクルするためにはどのようなプロセスが必要なのかについてレクチャーいただき、旅館の皆さんと一緒に今後どのように取り組んでいくのかを考えました。
私自身、リサイクルの仕組みは知っているつもりでいましたが、リサイクルそのものにももの凄くコストがかかり、必ずしも環境に優しいと言えないのではないかという課題も分かり、とても学びになりました。
吉竹華乃さん:
今週からバイトを始めました。大学入学後すぐにバイトをしていましたが、右手の中指を骨折して長くできなくなっていて、ようやく普通に生活できるようになったのでバイトを始めました。ただ研修中に少し引っかかることがありました。男性は裏の仕事を、女性はレジで仕事をしてくださいというお話をされた方がいて。男性の方の仕事も多分女性ができない仕事ではなくて。だから男女で分けるんだ、ということを思いました。また、先週末信州大学の学祭、銀嶺祭があり、私は実行委員だったのでテントの片付けなどをしていましたが、重たいものは男子が運んでね、こっちは女子が持ってねと言われて。力で差があるのは生物学上仕方がないことかもしれませんが、区別と差別があるなとモヤモヤしました。
区別と差別
山田さん:
言っている方両者に共通して思うのは、言っている側はあまり違和感がないのかもしれない。でも聞いている側は一旦思考が止まり、かつその後もモヤモヤし続けてしまう。学祭は11月の第1週、先週末だと思いますが、華乃さんはこの1週間ずっとモヤモヤしていて。
言った方はそれを忘れて、言おうと思っているつもりではなくても、この1週間の中でまた他の方にも言われているかもしれないと想像していました。その差、溝ってすごく大きいですよね。
華乃さんのバイト先は飲食店ですよね。
華乃さん:
飲食店です。
山田さん:
縄文時代や弥生時代であれば、狩りをするとか男性と女性で役割分担をすることもあったかもしれませんが、今はそんなに差がないですよね。私の長男、次男も5歳と2歳でそれぞれ保育園に行っていますが、生まれたばかりの頃や保育園に通っている頃は女性の方がしっかりしていたりとかするケースも多々ありますよね。
アンコンシャスバイアス
山田さん:
でもそういう発言をされている方は小学校や中学校の段階で先生やご両親がそう言っていたということからその価値観に慣れてしまっているのかもしれないですね。
いわゆる固定観念がついてしまっていると、言っている本人は違和感がなかったりしますよね。ビジネス界隈では、アンコンシャスバイアスと言われますが、本人が固定観念と知らずに身につけていると、良かれと思って固定観念に基づいた行動や習慣をとることで、何かうまくいかないなという状況になってしまう。自分の固定元年がよくない結果を引き起こす原因の一つになっていると気づけるか気づけないかが分かれ目ですよね。気づけたら変えられるし、気づけなかったらそのままの習慣が続いてしまうということはすごく怖いなと思いました。
山田さん:
これはGensparkという生成AIのサービスで、引用元が示されてファクトチェックができるので、最初のリサーチでよく使っていますね。
「サラリーマン」と「ビジネスパーソン」ー無意識に言葉で規定してしまう男女の役割
山田さん:
2週間前に、ドコモアカデミーの沼田尚志さんにこちらのVoicyに出演していただきました。
沼田さんは多様性の象徴のような方で、ドコモの社員ですが、右と左でピンクと青のカラーの長髪のときもあったり。一見するとドコモにこういう人いるの!?というのを超えて、普通の社会人で企業働いている方の中にもこういう方もいるんだ、というような容姿をされているんですよね。
沼田さんから、「サラリーマン」ではなく「ビジネスパーソン」という言い方の方がいいですよと言われて。サラリーマンは「マン」ですよね。「働く人」は昭和の時代のサザエさん家のようなイメージ。女性は家庭を守り、男性は出勤するというような様子を想像してしまいます。だから「ビジネスパーソン」と表現するようにしていると教えていただきました。
私自身もそれに気づかずに講演で話してしまっていることもあったので気づけてよかったです。こういうことを言ってくださる方は本当に貴重です。自分のアンコンシャスバイアス、知らずに身についてしまったことは気づくのがもの凄く大変なんですよね。
若者から学び気づく場ー山田崇ラジオ
山田さん:
私は2015年から信州大学で授業をするようになり、今年で10年目になりますが、毎年大学生に話をする機会があります。
私は自分が大学生だった当時、今の私のようなおじさんの話を1ミリも信じていなくて。それを思い出して、そういう立場にはなっちゃいけないなと意識しています。
だからこそ、自分で時間とお金を投資してでも若者から学び気づく機会が必要だと思い、2019年から山田崇ラジオを始めました。
えりさんが話したことをテキスト化して公開して下さっているnoteのメンバーシップに私自身も毎月1,000円お支払いして加入しています。
まさに、今日ははなのさんの1分にも満たないチェックインでしたが、そこからはっとさせられて感じたことを話したくなりました。
「普通」ではなく「フラット」に接するとは
吉竹さん:
アンコンシャスバイアスって難しいですよね。変に意識しすぎるのも違うのかなと思って。性別に関係なくマイノリティの方や障害がある方で、普通に接してほしいと言われる方もいらっしゃいますよね。
もちろん特別扱いをしてほしくないということは分かりますが、何も考えずに接してしまうとアンコンシャスバイアスになりますし、でも考えすぎると彼ら彼女らにとって嫌な気分にさせてしまったりもしますよね。
山田さん:
「普通」って言葉が難しいですよね。それぞれにとっての「普通」があるからね。でも「普通」という言葉が固定観念や偏見、アンコンシャスバイアスにもなりかねないなと思いました。
✉️リスナーの方からのお便り✉️
山田さん:
これ、聞いている方は「主人」と「夫」何が違うの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「主人」だと夫と主従の関係みたいな表現になりますよね。
「普通」というよりは「フラット」なのかもしれませんね。
肩書きで相手を判断してしまう
山田さん:
元陸上競技選手で、『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』の著者でもある、為末大さんをFacebookでフォローしています。
今の話から、昨日の為末さんの投稿を思い出しました。
進学率からすると、同世代半数ほどが大学に進学されていますが、日本全体、赤ちゃんからお年寄りまで入れると大学を卒業した割合は2割程度。単純にシャッフルすると、日本全体の人口、1億2,000万人から考えると少ない。でも、東京で会う方は普通にそういう話をされて、東京にいると極端に情報が入ってこないことに違和感を感じるというお話をされていて。この投稿にはっとさせられました。為末さんは広島出身で、地元の同級生の中には大学に進学せずに就職された方もいらっしゃって。色々な方がいるのは当たり前ですが、大人になってから会う人は当時の友人たちとは変わってくるということも書かれていているんですよね。
私が生まれた昭和50年代は両親も4人の祖父母も大学を出ていないので、確かに2割以下ですよね。
✉️リスナーの方からのお便り✉️
山田さん:
肩書きや所属先によってその人をカテゴライズして判断していますよね。通常のビジネスパーソンは肩書きのある会社の名刺を渡すところからコミュニケーションが始まるので、どこかの会社に所属している個人です、という紹介になりますね。
私は、社会保険はNTTドコモ、副業は信州大学、私は山田崇です、と個人の名刺も含めて3枚の名刺を渡して自己紹介をします。
大学の進学率は都道府県や年代によっても違いますが、日本全体と日本の生産年齢人口のうちの割合でも違いますよね。そこに想像を馳せられるかどうかが、アンコンシャスバイアスに気付けるかどうかの境目になりますね。
Check Out
石井:
私も気になっているトピックだったので、はなのさんの話にとても共感しました。
先日アメリカの大統領選がありましたが、私の家でとっている信濃毎日新聞の朝刊で、トランプ氏は男らしさを強調、ハリス氏は中絶の権利を主張するなど女性からの支持拡大を目指す、とはいえ男性からの支持離れがないように銃の保持の権利について言及するなど男らしさも意識した論争をしているということが書かれていました。男性対女性の構図ができていましたが、目に見える性別でしか判断されないのかなということが気になっていました。また、トランプさんが支持される理由の一つとして、女性に対する差別的な発言を臆しないという点が挙げられていました。日本でも最近セクハラをはじめとするハラスメントの問題が多く取り上げられるようになりましたが、アメリカの支持者にとってはバイアスのかかった発言に気を配らなければいけない社会を窮屈に感じて、むしろトランプさんを支持しているのではないかということが書かれていました。どこまで有権者が意識して投票しているかは分かりませんが、今の男女差別をはじめとするタブーが、これまで多数とされてきた人たちにとって息苦しく感じられていることになんだろう、と感じていました。
もちろん男性だけが社会に出て働いていた時代があったということは事実ですが、人口比率では男性と女性は半数ずついますし、女性が社会に出て働き始めてから時代も変わってきているにもかかわらず、未だにそういう意識があり、かつ日本だけではなく他の国でもそういう感覚を持たれているということに驚きました。
また、はなのさんがお話しされていたマイノリティの方とどのように接するかということについて、朝井リョウさんの『正欲』という本を思い出しました。
性的指向についてマイノリティの方が主人公の物語ですが、マジョリティは、大多数の選択を選んできた人たちだけがなれるもので、結局その選択に勝ち残れることも少ない確率でしかなくマイノリティではないかということが書かれていて。「普通」である、ということを定義することは難しいなと感じました。
吉竹さん:
マイノリティの方と接することについて、恵里さんの紹介されていた『正欲』から思い出しましたが、東野圭吾さんの『片想い』も同じようにマイノリティの方が主人公のお話です。
マイノリティだからといって気を遣ってほしくないというのは受け取り方によっても違うと思います。小説でもニュースでもLGBTは有名になっている言葉ですが、自分の周りではほとんど会ったことがないなと思って。そういう方は隠しているのか、だからといって話さなければいけないわけでもないよなと思って。モヤモヤしています。
山田さん:
モヤモヤしていることを初めて言語化するという意味ですごくいいチェックアウトでした。
早稲田大学の国際教養学部に所属していた女性から声をかけていただき、「東京レインボープライド」というLGBTQの方々がパレードをするイベントに参加しました。
誘ってくださった方は、「I'm an ALLY」というLGBTQの方たちを理解していますよ、という証明書のようなものを発行するブースを電通と共同で出されていました。
名刺サイズで、めくると4面に広がって、LGBTQの方は左利きの方と同じぐらいいる、とか、LGBTQは見た目の性別、中身の性別、指向の性別で8通りに分かれるという紹介もされていて。その時に、山田さんはALLYですよねと言われて。初めて言われましたがフラットに感じてもらえていたことは嬉しかったです。パレードで風船とブレスレッドをいただいたので、ひとりパレードをすると言って、それを身につけた新幹線に乗って次の予定があった上田まで行きました。この日は記念撮影をする時にも風船とブレスレットを持っていて、山田さんそれ何ですか?と聞かれたらI'm an ALLYや東京レインボープライドについて紹介したことを思い出しました。
また、二人から本の引用が出てきてとても素敵なチェックアウトだったので、ぜひ手に取ってみたいなと思いました。また、この機会めちゃくちゃいいなと思って。ハッと気づきましたが、えりさんとはなのさんは女性ですよね。すごくバランスがとれているというか、私自身はバイト先で女性はこれをやって、とか言われないので気づくことができないんですよね。
✉️リスナーの方からのお便り✉️
山田さん:
伊藤亜紗さん、東京工業大学のリベラルアーツの学部の先生で、私もとても好きな方です。
この本はまだ手に取ったことはありませんが、私の大好きなヨシタケシンスケさんが表紙を描かれているので、とても気になっている本でした。
【『目の見えない人は世界をどう見ているのか』を原作にしたヨシタケシンスケさんの絵本】
✉️リスナーの方からのお便り✉️
編集後記✍️
今回のラジオでさらに気になったことがあったので編集後記として残します!
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