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「不安商法」と「共感商法」

数年前に帰国した際に、日本では20年ぶりくらいにクルマを購入しました。

買い物用途程度なので5年落ちの2万キロちょっと走行した中古の国産車を80万円ほどで購入したのですが、販売店であるメーカー系列のディーラーに勧められてメインテナンスパックというものにも同時に申し込みをしました。

そのメインテナンスパックは購入後の2年間が対象で2万円強の費用が掛かるのですが、6か月毎の車両点検とオイル交換が無料というものであり、メカにそんなに強くない者にとっては「安心料」を含めての料金と納得しました。

しかし、ほどなくしてこのメインテナンスパックを勧誘してきたディーラー側の意図が2つ見えてきました。

1つめは新車への買い換えの勧誘です。

黙っていても半年に一度、お客の方から販売店を訪れてきてくれますので、点検終了までの待ち時間にカタログを広げて新型車の魅力を説明してきます。

2つめは無料のオイル以外の部品交換に関する過剰ともいえる売り込みです。

「たぶん大丈夫だと思いますが、高速道路上でのパンクの危険等を考えれば、できれば今のうちに新品に替えておいた方が良いでしょう」と、まだゴムのひげが残っているタイヤの交換すら勧められました。

その時に頭の中をよぎったのが「不安商法」という言葉です。

「不安商法」とは、不安を煽ることにより高額で不要な商品を購入させる商売を指し、住宅リフォームや生命保険業界の営業手口として問題視されることがあります。

しかしながら現在の生命保険営業トップの基本戦術が不安商法ではないことを、保険商品を販売仲介しないFPとしての興味から視聴してみた某コンサル会社の「売れる保険パーソンになる」的なタイトルのZoom配信無料セミナーで知ることができました。

そのセミナーで講演した保険のトップセールスパーソン(自称)によれば、「不安商法(という直接的な言い方はしていませんでしたが、要はそういうことでした)」は、時代遅れな二流の営業手法であり、限界があるそうです。

一流の保険営業になりたければ、相手を「不安」にさせるような話をするのではなく、相手の話に納得しようがしまいが、理解できようができまいが、とにかく「共感」さえしていけば相手は心を開き、最後に必ず自分が売りたいものを買ってくれるとのことです。

そしてその「共感力」を高めるためには相手の発言を繰り返しながら相槌を打つと効果的な傾聴力になるとか、豊かな表情を磨くことがいかに大事かということを約1時間にわたり繰り返し熱弁していました。

私はこのような営業手法を「霊感商法」ならぬ「共感商法」と名付けて悦に浸っていたのですが、いずれにせよ「不安商法」しかり、「共感商法」しかり、各業界のトップセールスパーソンは極端なことを極端に見えないようにする技術に長けているがゆえにトップに君臨できているでしょう。

追記:

イソップ寓話は2500年以上前に古代ギリシャで誕生したそうです。

セミナー会社やそこで講師を務める保険営業トップ(自称)の方々が、所詮は2500年以上前の「北風と太陽」の焼き直しのような話を営業の成功者になるための秘訣として大上段に構えて講演する姿をみると、人類は進歩していないものだなあ、と改めて感じてしまいます。

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