見出し画像

分譲マンションは導火線に火がついた爆弾か

昔みたテレビのコメディ番組に、導火線に火がついた丸い爆弾を数人が大騒ぎしながら自分以外の人に次々と投げ渡し、最後に爆発してしまうという場面がありました。

その時に思ったことは「どうして他の人に投げ渡すのだろう。人がいないところに放り出してしまえば、誰も酷い目に遭わずにすんだのに」ということでした。

しかし現実の世の中にも、他の誰かにタイミングよく投げ渡さない限り、いつか自分(乃至は自分の子供等の相続人)のところで爆発してしまう可能性がある「分譲マンション」という静かな爆弾が、街中に多くあります。

分譲マンションを法律的に正しく呼ぶと「区分所有建物専有部分の区分所有権とその敷地権」となります。

鉄筋コンクリート製の建物の一部分だけの所有ですから、戸建て住宅のように所有者単独の意思で建物を取り壊すことはできませんし、固定資産税に加えて建物を維持する為の管理費と修繕積立金が毎月永遠に発生します。

そして更には自分がしっかりと支払っても、他の区分所有者がその経済的事情から分担金を滞納し始めるかもしれません。

バブル期に数千万円で販売されたいわゆるリゾートマンションが、数十万円で売りに出ても買い手が付かないことがニュースになってから久しくなりました。

端的に言えば、その維持管理費用がその所有価値・利用価値に釣りあわないと判断する売却希望者が激増した一方で、そのような物件の購入希望者が圧倒的に少数であることを物語っています。

このリゾートマンション界の現象に関しては、令和2年末で既に675万戸に上ることが示されている国土交通省発表の「分譲マンションストック戸数」と厚生労働省発表の「人口ピラミッドの変化」を併せてみることにより、今後都市部でも顕在化していく可能性が高いことが読み取れます。

特に「2025年問題」と言われる団塊世代全員の後期高齢者(75歳以上)入りは大相続時代の幕開けを意味しますが、その相続人となる団塊ジュニア世代も既に50歳代となり、いわゆる新規住宅需要層ではなくなっています。

要は、日本に於ける住宅需給バランスは供給過剰となっていくことが既定路線であり、よって政府もタイミングを合わせて所有者不明不動産の増加を回避するために、2024年4月からの罰則規定付きの相続登記の義務化を決定しました。

また政府は、空き家特例(正式名称:被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特例)を施行して、人口減に伴い増加する空き家の更地化を促進しようとしていますが、区分所有者の意思だけではどうにもならない分譲マンションは対象外です。

一方、マンション建替え等円滑化法(正式名称:マンションの建替えの円滑化等に関する法律)は老朽化マンションの建替え等を円滑に行うための権利調整や合意形成についての措置などを定めていますが、分譲マンション全体としての意思決定は各所有者の年齢、経済状況等も多様性を極める中、その実効性には疑問が持たれています。

やはり、導火線に火がついた爆弾を自分が保有している時に爆発させないようにする最も合理的で賢明な解決方法は、タイミングよく他の人にそっと渡してしまうことだけのようです。

追記:

相続相談時の鉄板アドバイスに、「たとえ遺産分割協議を早くまとめたいという理由等があったとしても、相続財産としての不動産を共有名義にすることは避けるべき」というものがあります。

その理由は物理的に分割することが困難な財産を共有にしてしまうと、その後の処分に関して意見が一致しない可能性が内在してしまい、世代交代により新たな共有者も出現して話し合いによる解決が不可能となるケースが増加するからです。

たった数人の兄弟や親族者間での共有でも相続の世界ではこれが正論と言われている一方で、何十何百もの他人同士が一棟の建物とその敷地を共有する分譲マンションを購入するには、「極上に棲む悦び」みたいなマンションポエムをたくさん浴びて勇気をもらうことが重要なことのようです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?