書けない男の小説 一
小説の構成には「起承転結」というものがあったり、「序破急」というものがあったりする。そしてここでは、起承転結を採用する。起承転結という形を意識して、文章を書き進めていく。
【起】
まず簡単に自己紹介させて頂く。私は四十九歳、無職、小説家志望、身長百七十七センチ、体重七十三キロ、血液型O型。
二十五歳くらいから小説家を志し、それから二十四年たち、私は四十九歳になってしまった。そして来年はとうとう五十歳になってしまう。
でも、ただでは五十歳になりたくない。それまではバタバタしたい。
私はそう思い、無職になった。そしてずっと夢であった、小説家という仕事を、本気で目指すことにした。
そのために、具体的に何するの?
読書をしたり、創作したり、小説を賞に応募したり、そういうことを、集中的に行う。そしてなんとか小説家になるための、筋道を作る。
そんなところを意識して、最近の毎日を生きている。
そしてお陰さまで、今年はいくつかの賞に応募することができた。
坊っちゃん文学賞に三作、
星新一賞に一作、
フランス書院文庫官能大賞に二作、
文藝賞・短篇部門に一作、
応募した。
そして今、ジャンププラス原作大賞というものにも応募してみようかと思っている。
それと文藝賞・短篇部門は三作まで応募できるので、すでにそれに一作応募しているが、もう二作、応募することも考えている。
とにかく頑張って、創作し続けなければいけない。書かないと始まらない。
しかし実際問題、基本的に、書くことがない。四十九歳にして、ようやく重い腰を上げ、本格的に小説家を目指そうと思って、無職になって、読書したり、なんか書いたりして、頑張っているのだけど、基本的に、特に書くことがない。しかし書かないわけにはいかない。
というわけで毎日、雑文というか、日記というか、そんなような文章は、一応、何かしら書いている。そして色々、試行錯誤もしてみている。
濃厚カルピスを飲んでみたり、菊門自慰をしてみたり、人に言えない恥ずかしいことも、色々と試している。
とにかく、人と違うこと——普通じゃないことをして、なんとか良いアイデアを捻り出したい、良い文章を書きたい、そんな風に願い、色々と試している。
しかしことごとくうまくいかない。
賞に応募した小説は、どうだろう。
今までの経験上、おそらく賞を獲るのは難しいだろう。
今までで一番の自信作を、太宰治賞に応募したところ、一次選考にも通過しなかった。それで心底、がっかりした。一生に一度書けるかどうかの入魂の作品が、一次選考も通過しなかったのだから、もう、本当にがっかりした。
でもいまさら小説家を諦めるという選択肢はない。賞に落ちても、小説は書き続ける。もうそれしかない。それが唯一の選択肢だ。