AIは占い師の代わりになれるのか
「AIを利用して占い原稿を作成するサービス」というものがSNS上で宣伝されているのを見かけました。
占星術、タロットなど占術別に原稿が作成できる、といううたい文句でした。
最近、AIによる文書作成の能力が飛躍的に伸び、大学のレポートは実際に書いたのか、AIに作らせたのか判別が難しく、教授が頭をなやませていると言います。
人間が作成するのと同レベルの文章をAIが作成できる、という理由で『AIが占い原稿(またメール占い)を作成できるから、占い原稿の仕事は今後なくなっていくのでは?』と言われています。
本当にそうなっていくのか、私が思うことを少し書いてみます。
文書(原稿)作成の技術の変化
まず、AIという前に今までの文書作成の技術について考えてみます。占い原稿ということに限らず、様々な技術の発達によって、文章(テキスト)作成はをより早く、より手間がかからないようになってきました。
はじめは原稿用紙に直接書き込むことが主流でした。いつの間にかワープロあるいはパソコンで入力して作成するのが主流になり、時間短縮につながりました。30数年前、私は大学の卒業論文を書くのにパソコンのワープロソフトを使って作成しましたが、学科でワープロで作成したの学生は1割もいませんでした。そのくらい、昔は手書きが当たり前だったんです。
その後、音声入力による原稿作成が出来るようになり、これも時間短縮に寄与しています。初期の音声による原稿作成は、一度カセットテープなどに音声を録音させて、その音源をスタッフが文字に書き起こす、という手間が必要なものでしたが、最近では音声認識の技術の向上で、直接マイクに吹き込んだ音声をテキスト化してくれます。(この文章もその手法で一部作成しています)
では、AIによる文書作成はこの利便性の向上の延長線上にあるものでしょうか?私はそうではない、と考えます。
今までの利便性の発達に関わってきた、パソコン、ワープロや音声入力というのは、シンプルに作業にかかる時間を短縮するものでした。
表現する手段にかかる時間を短縮するのが目的であって、アイデアや表現方法については製作者(書き手)の脳内にゆだねられています。ですがAIによる文書作成の場合、大元のアイデアも表現方法も丸ごとAIに依存することによって時間短縮を図っています。
ということは作成者の脳内にあるものが文章として表現されているわけではありません。文書を書く立場の視点で立ってみると、AIによる文書作成は「自分の文章を作ってる」のではない、と言えます。
表現方法を学ぶという視点ではありかもしれませんが、AIの文章は「書き手による文章作成」とは言いにくいです。時短につながるツール、というより「自分のことをどれだけ理解しているかわからない第三者が、自分の文章らしきものを代筆している」と言った方が当てはまると思います。
「便利」と言う言葉でごまかされてますが、これまでの利便性の向上、とは別ものだと思います。
占いの原稿をAIに書かせるのは実用的か?
占い師あるいは占いライターに原稿を依頼すればそれなりに時間もかかりますし原稿料も発生します。
AIに書かせるとすると、編集部の誰かが(あるいはアルバイト)が適当なワードを入力することであっという間に原稿ができるでしょう。今のAIは文字数制限もできるようですし、表現方法の細かい指定も可能になっています。望むような字面の文章はすぐにできるでしょう。
では、本当にAIに書かせた方がいいのか? 私はNO.だと思います。
正確さに欠けます。先に上げた「占い原稿を作成するAI」の作文例を見ましたが、最初の数行でお話にならない内容でした。ちょっと占い好きの人が見たら首をかしげるレベルです。現状、AIが作成した「占い原稿」としての文章はそこまで価値がなさそうです。占いが好きな人の鑑賞にたえられるものではありません。占い師やライターに書かせたらこういうことはありえません(100%そうではないとは言いませんが)
(前の項目に関連して)この文章が正確だと検証する作業が発生し実質二度手間になります。
字面としては文章の体をなしてますが、個性にかける文章になります
最後の一つについてはいろいろな意見があると思います
占いとして正確ならそれでいいじゃないか?それも一つの意見だと思います。ですが、同じ占いのコンテンツで人気のあるもの、そうでないものがあります。つまり読み手にとって価値がある占いの文章(原稿)は単純に正確さだけではないと思います。
そこには原稿を書いている占い師、占いライターの個性が反映されていると私は思っています。読みやすいもの、分かりやすいもの、優しく諭すような文章、厳しい現実を見せるような文章、励ますような文章、などなど、どういう文章を書くことでよ読み手の興味を引き付けるか、その手法が書き手によって違うと思います。現状AIにこの差をつけられるのかといえば、おおまかにしか出来ない、と思います。優しく書けとか分かりやすく書けみたいなことは言えるかもしれませんが、微妙なニュアンスの違いまでは差別化はできないと思います。
これはAIの長所でありかつ短所だと私は推測しています。AIはそもそも学習した知識をデータとして蓄積して、その蓄えた知識(データ)をどのように構築して行くかということによって成り立っています。この構築方法(おおまかに言うとアルゴリズムと言います)が昨今飛躍的に発展して、絵を描いたり文章を書くことが出来るようになりました。
ですがそもそもデータがないとどんなに立派なアルゴリズムを持っていたとしてもAIは動くことができません。つまりどのような知識を覚えさせたかによってAIの活動の質は大幅に変わります。
逆に言えばたくさんのことを教え込めば、それだけAIはたくさんのデータを活用できますが、結果として平均的な内容を答えとして出力することになります。つまりAIが作る文章というのは標準的で個性というものが反映されないものになります。
学習させるデータの種類や量、さらに出力の時のコマンドの工夫である程度性格付けはできると思いますが、それでも、現状では人間の個性には勝てないと思います。
要するに、AIに占い原稿を書かせることは技術的には可能ですが、内容の正確さの検証にかかる手間や文章の個性、ということを考えると現状ではAIが占い師、占いライターに取って代わるというのは難しいと思います。
ただ、安心はできません。
占いライターの中でも質の高い文章、読みたくなるような文章、という表現方法をもたない人の場合はこの限りではありません。そして、占いの内容の正確さは二の次で効率だけを追い求める占いを提供する事業者もいるかもしれません。そういう人たちがAIに丸投げ、と言う可能性は十分にあります。
占い師、占いライダーが原稿の仕事がなくなると気にされていると思いますが、自分の個性が出せるような文章、または高い占いの知識を使った原稿が書けるなら、現状では何も心配することはないと思います。