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バンコクで感じたアジアコラボのパワーと、日本人「職業作曲家」の可能性。


アジアのトップクリエイターによるSongWritingCamp大成功!

 10/21〜24にタイ・バンコクでソングライティグキャンプを実施しました。2月に行った日本タイ合同キャンプの成功を踏まえて、MCT(MusicCopyrightsThai /タイ唯一の著作権管理団体)と組んでの2度目になるバンコクキャンプは、アジア各国の著作権団体に声をかけ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、シンガポール、ラオスの6カ国からクリエイターが参加してくれました。著作権団体推薦だけあって、素晴らしい音楽的才能がある作曲家たちでした。皆、ポジティブマインドを持ち、人脈形成への意識も高くて楽しい4日間となりました。

 日タイ各6人を加えて合計20人のクリエイターの紹介は改めてキャンプレポート書くつもりです。今は、帰国便を待つバンコク空港で、このnoteを速報的に書いています。
 試聴会で、タイのレーベル関係者が楽曲の採用のために真剣に聴きに来ている状況下に、自分たちの曲で盛り上がって踊っている作家たちの動画だけ共有します。楽しさは伝わるかなと。

11/6 TIMMセミナーにタイからゲストスピーカーを!

 この海外キャンプは経済産業省のビジネスマッチング企画で、VIPOの事業として行っています。僕が企画を持ち込みオーガナイズさせてもらったいる形で、コロナ明けから台湾、タイと行い、今回は3回目でした。
 その総括にもなるようなセミナーを、MCT会長のKohさんをお招きしてTIMM(東京国際音楽見本市)で行います。丁寧な運営とアジア6ヵ国の著作権管理団体への協力要請をやってくれたナイスガイです。これからのアジア音楽業界を引っ張っていく人になるでしょう。チケットをお持ちの業界関係者は、是非、11/6 14時からのセミナーに足をお運びください。情報解禁になりました。

アジア音楽市場をテーマのオンラインセミナーやります

 TIMMは、主に業界関係者を対象にした平日昼のカンファレンスなので、クリエイターなど、アジアの音楽シーン、音楽家同士のコラボに興味がある人は、無料のオンラインイベントやりますので、そちらにどうぞ。海外キャンプの経験を経た作曲家たちと本音トークします。

「アジア人」の共通美意識と日本人が持つアドバンテージ

 11/6も19もモデレーターをやるので、これからアジェンダをまとめるところなのですが、タイのキャンプを終えた時点で僕が感じていることを簡単に書きます。
 アジアに行くと実感するのですが、自作自演しないアーティストへの楽曲提供を主な生業とする「職業作曲家」は、日本で独自の進化をした職種です。韓国はK-pop隆盛のプロセスで欧米型のコーライティングを取り入れて
専業クリエイターを生み出していますが、ジャンルや活動の仕方は限られています。アイドルからアニソンまで幅広く、アーティストやA&Rのニーズにそって書き下ろすスキルは日本独特に感じます。J-popというフォーマットは、洋楽に比べて複雑さを持っているので、繊細なスキルが要求されるという側面があります。
 タイでもT-popという言葉も使われ始めて、アイドルカルチャーが出てくると同時に、元々豊穣なインディーカルチャーがデジタルサービスと共に、商業的にも成長を見せている中、日本の職業作家的なスキルが、外国人クリエイターとのコーライティングで活かされるんだなと感じています。日本人らしい細やかさと、多種多様な音楽を聴くことができる環境が長くあったこと、J-Popができるまでの歌謡曲〜ニューミュージック〜シティポップ〜渋谷系などの歴史やビジュアル系やアニソン、ボカロ音楽など日本独自ジャンルの存在がクリエイターとしての奥行きをもたらしているのでしょう。
 同時に感じたのが、「アジア人」共通の美意識の存在です、これは言語化が上手にできてないのですが、僕がアジアで仕事するようになった20年近く前から感じている共通性です、郷愁みたいな言い方もできるし、サビメロのキャッチーさとも言えるんでしょうし、アジア正確にいうと、日本から朝鮮半島、中国モンゴル、東南アジア(多分ミャンマーまで)は、音楽的な美意識に通底するものを感じるのですが、これかクリエイターたちも語っていました。共通点があるから共同作業がやりやすいと。これは90年代の日本のポップスがアジアの音楽家たちに影響を与えているという側面もあります。
 アジアカルチャーへの注目度が世界的に高まる中、アジア発のヒット曲で世界を席巻できると日本のプレゼンスは自ずと上がるでしょう。

「イノベーションのジレンマ」アジア内で遅れた日本の音楽界と作曲家

 音楽業界では、しばしばネガティブなニュアンスでも語られる「職業作家」という言葉。僕も「山口ゼミ」で作曲育成に関わる中で、「日本の業界だけを見て、業界慣習をお行儀よく守って、良い曲だけ書いていても幸せになれない時代になっているよ」ということは常々、語ってきています。逆にいうと20年前はそれで十分幸せだったのです。日本市場でヒット曲を出すと、マンションや外国車が買える印税と、大きな賞賛が手に入りました。海外を意識する必要もなく、またチャンスもあまりありませんでした。
 その後、日本の音楽業界の編曲料の業界相場は、25〜30万円で25年以上上がっていません。USのプロデューサーには3000ドル(約45万円)以上払っているのにです。中国はまだ買取が主流ですが、買取額は50~100万円が普通です。K-popの基準は欧米と同じです。台湾やタイでキャンプをやり、楽曲リリースが実現してきて確認するのは、編曲料も日本の平均に近づいてきていることと、印税前払いなどのルールがデジタル時代に対応していて、クリエイターに対してフェアだなということです。

音楽市場はデジタルとグローバルの時代。何もしないと大ピンチ

 音楽ビジネスの主戦場がデジタルとグローバルになったことは、このnoteで100万回書いてきました(ちょっと誇張ww)、書籍でも細かく解説してきました。レコード会社やアーティストや事務所や音楽出版社同様に、ソングライターも「CDとTVタイアップの時代」と同じ行動パターンを続けていてはジリ貧です。何もしないこと、動かないことがピンチなのです。
 アジアの最前線でトップクリエイターたちと創作し、酒を呑み交わし、肌で感じているのは、これから始まる、成長していくというポジティブなワクワク感です。今回ラオスから参加したRemyは、アメリカ育ちでアーティスト兼プロデューサーとして才能も実績もあり、両親の故郷であるラオスに数年前に移り住んだそうです。おそらくラオスの音楽界を牽引するリーダーになるでしょう。と僕が本人に言ったら、急に真顔になって「そうなりたいと思っている」と言ってました。「ラオスは若い才能がたくさん出てきているんだよ」とも。日本の音楽家からもこういう野心と向上心を感じたいなと心底思いました。
 そんな思いでセミナーやるので、是非、来てください!

沖縄でアジアのインディーアーティストと作品創ってリリースするMLF

 最後にもう一つ。アジアのインディーアーティストと日本人クリエイターのコーライティングの機会が来年1月に沖縄であります。僕がプログラムディレクターを務めるMusicLaneFestivalの出演アーティストとのコラボ制作です。日本市場を意識するアーティストにとっては、日本人作曲家とのコーライティングは有効な手法のはずです。沖縄滞在中に楽曲を作り、MLFレーベルからデジタルリリースしてもらうといいう取り組みに挑戦します。今回タイキャンプのオーガナイズも手伝ってくれた作曲家KazKuwamura(「Da-iCE」『CITRUS』でレコード大賞受賞)が、全体をコーディネートします。
 現在、参加クリエイター募集中ですので、興味のある方はこちらをどうぞ。

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