第五章:個へのパワーシフト-4-ユーザーダイレクトファイナンスとNFT(全文公開)〜『音楽業界のカラクリ』サポートページ
ユーザーから直接収益を受け取る
ストリーミングサービスが録音原盤市場の幹になっ たことは、ご理解いただけたかと思います。ただ、音楽家を中心に据えた音楽ビジネス生態系として考えると、ストリーミングサービスだけでは不完全です。 多くの楽曲を配信する「ロングテール型」のサービスが幹の時代だからこそ、アーティストがユーザーから直接収益を受け取れるユーザーダイレクトファイナンス型のサービスの必要性が高まっています。
近年の音楽界で最もホットなワードといえば、NF Tでしょう。Non Fungible Tokenの略でブロックチェーン技術を使って、交換可能な価値を証明する仕組みとして注目され、様々な試みが行われています。
音源がデジタルファイルになったことで簡単にコピーできるという悩みが生まれましたが、NFTを使 えば、デジタルファイルにアーティストによる「証明書」を付与することができます。簡単にコピーできてしまうというデジタルファイルの特性に、アーティス ト自身が希少性を担保することを可能にしています。
音楽家のためのNFTマーケットプレイスについて筆者の体験を共有します。活動休止していた小室哲哉さんと、活動再開直後に J-Wave のイノフェスというイベントで、NFTに関するトークセッションをご一緒しました。小室さんは、そのステージで生演奏した作品をNFT化して販売し話題になりました。この作品Hills Roppongi」のマーケットプレースとして使われた .mura(ドットミューラ)は、筆者が Co-Founder として立ち上げたサービスです。これから本格的に盛り上がっていく領域であるとの感触を持っています
ストリーミングサービスだけでは録音原盤ビジネス の生態系として不完全であるという認識が広まり、音 楽家がユーザーから直接的に資金を得る「ユーザーダイレクトファイナンス」の重要性が上がっています。 NFTを活用する音楽家は増えていきそうです。
クラウドファンディングと投げ銭型
ユーザーダイレクトファイナンスにはクラウドファンディングもあります。社会的に認知され、利用され るケースが増えてきました。アメリカでは、KICK STARTER、INDIE GoGoといったクラウド ファンディングサービスを使って、音楽家が活動資金 を得るのが一般的です。
2015年には、アマンダ・パーマーというアー ティストが、KICK STARTERで1億円以上の資金を集めて、大きな話題になりました。日本では、一部のアイドルなどを除いて、音楽分野でのクラウドファンディング活用は広まっていません。ネット上の少額決済やドネーションカルチャーの欠如などが理由 に挙げられますが、音楽家や音楽ファンのトンマナに合わせることができていない印象です。
一方で投げ銭型のサービスは広まりを見せていま す。日本の代表的な存在にSHOWROOMがありま す。動画生配信を定期的に行うことで、ファンとの関 係性を深め、「応援したい」という気持ちから有料のア イテムを購入してプレゼントしてもらうというスキー ムです。2018年の売上はアプリ内課金だけで45.7億円となっています。台湾発の17LIVEなどに加え、LINEもLINE LIVEという同種のサー ビスを展開しています。YouTube にも投げ銭機能が取り入れられるなど、マネタイズの方法は多様化して います。
これらのサービスはすべて、音楽家個人の資金調達 の選択肢を増やしています。個人へのパワーシフトは どんどん進んでいき、音楽家に貢献できる事業や会社が伸びていくという流れが始まっています。
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モチベーションあがります(^_-)