creww伊地知天の原点から学ぶこと
2013年9月出版の本書は、僕にとってエポックメイキングな書籍です。エンタメ分野の起業家と新規事業創出をしていくスタートアップスタジオStudio ENTREを始める原点でもあります。7年前のインタビューとその後の彼らの軌跡を追いながら日本の未来を考えます。
creww株式会社 伊地知 天
16歳で単身渡米。2005年カリフォルニア州の大 学在学時、21歳でアメリカにて起業し、その後 7年で米4大ネットワークのひとつであるFox社 等をはじめとする600社を超える世界中の企業の ウェブ戦略をサポート。アメリカでの事業売却や フィリピンでの起業を経て、2012年自身4社目の 会社となるcrewwプロジェクトを開始し同年8月 に法人化。その後ベンチャーキャピタルから出資 を受け現在サービスを拡大中。
スタートアップ企業を支援するベンチャーをつくった理由
21歳で米国で初めて会社をつくって以来、日米で数々の起業を行ってきました。 日本の経済を強くするため、日本人の潜在力を活かすために、スタートアップ起 業家を支援して、ネットワークをつくり、大企業とも結びつけるような仕事をし たいと思って、crewwを創立しました。
日本の起業率は先進国で一番低い
日本の起業率は 4%程度で、先進国の中で圧倒的に低いのを知っていますか?
教育や経済の力は、世界のどの国と比べても劣っていない日本が、起業する人が少ないのは、非常に問題だと僕は思っています。
日本の経済力がアジア諸国に追いつかれ、抜かれてようとしている。人口も減っている中で、このままではヤバいというのが、crewwを始めようと思った原点です。次世代の日本経済のためにも、日本からイノベーションを起こす必要があります。そのために、挑戦したいという人が挑戦できる環境をつくらないと、これからの日本は危ないです。日本が成長していくためには、社会を変えるようなイノベー ションを起こす人が出てこなくてはいけないし、そういう人を支えなければいけ ない。本来は政府がやるような仕事なのかもしれませんが、なかなか始まらないようなので、僕らがやってやろうと思いました。
必要なものは外から持ってくればよい
「何故、起業をしないのか?」と質問に対する答えは「〜がないから」「〜ができないから」というのが多いと思います。
実は、そのやらない理由は、解決できることばかりなんです。自分が持っていなければ、外から持ってくればよいのです。お金がないなら、資金を集めればよい。人脈がないなら、人脈を持っている人を仲間になればよい。
例えば、フレンチレストランをやりたいときに、自分が料理ができなければ、 シェフを探してきますよね?
「今までにない、こんなレストランをつくりたい」というビジョンがあれば、 そのビジョンに共感してくれる人を集めて、チームをつくることができます。ホー ル係も必要なら探せばいいのです。社長が全部、できなくてはいけないと思うの は、間違いです。実際、僕はウェブ関連の会社をいくつも起業していますが、自 分ではプログラムもできないし、システムエンジニアでもありません。こういう サービスをつくりたいというアイデアを持って、必要な人を集めました。
自分が次々と起業できたのは、人との出会いに恵まれたからだなという実感が あります。なので、そういう出会いを促進する場としてcrewwをつくりました。 ビジョンに共感した人が集まってきて、チームをつくることができるし、アイデアと熱意があれば、実現できるということを多くの人に知って欲しいです。
アニメ「ワンピース」の役割分担が、ベンチャー起業の理想型
米国で会社をつくると、よくわかるのですが、米国人は自分の役割というのを 明確に意識しています。役割分担、スペシャリティがはっきりしているんですね。 米国人に、その役割分担から外れることを頼むと「それは自分の仕事ではない」とはっきり、言われるんですよ。行き過ぎるのはよくないですけど、起業家、社長が全部できる必要はなくて、足らないモノは外から連れてくればよいという意味で、役割分担を意識することは大切だと思います。
アニメのワンピースがわかりやすいです。それぞれのチームの中のスペ シャリティがはっきりしているじゃないですか? たとえば、ゾロは、絶対、料理作らないでしょ? 得意なところを持ち寄って、チームをつくるというのは、 スタートアップベンチャーの基本だと思います。 また、crewwでは、アドバイザーという制度をつくっています。既に株式公 開を経験しているような方が、若い経営者を支援する仕組みです。経験者が関わ ることで、成功率が高くなる。米国では一般的なことですが、日本でもそういう ネットワークをつくっていきたいです。
もう一つ変えないといけないのは、「失敗を悪」ととらえる考え方です。米国 の話ばかりしたい訳ではないのですが、シリコンバレー[注 ]には、何度か失敗 して、その経験を踏まえて大成功した起業家がたくさんいます。失敗を恐れずに、 挑戦するスピリットを大切にしたいですね
本当に田舎で、日本と中国の違いもわからない。「ジャッキーチェーン」って 呼ばれていました。カンフーとか出来ないですけどね(笑)。8割は黒人という環 境でその中唯一のアジア人という事もあり面白がられて仲良くしていました。その後、カナダの高校へと進むのですが、異文化の経験は貴重だったなと思います。
田舎の米国人が知っている日本は、真珠湾と空手と照り焼きだった
僕の原体験は、高校時代の米国留学だったと思います。たまたま、高校の時に 政府がやっている交換留学プログラムに応募してみたのですが、英語ができる方 じゃなかったので、受かるとは思ってなくて、ラッキーと思っていったら、サウスキャロライナ州のすごい田舎町でした。これまで日本人を見たことがある人は 一人も居ないような街です。日本料理は「SUSHI」と「TERIYAKI」でした。そん な田舎にまで届いていることがすごいですけれど(笑)。「真珠湾で日本は卑怯だった」と言われることもあって、慌てて、日本と 世界の近現代史を勉強したりもしました。そして大学からはカリフォルニア州に 移り、その後 年以上をアメリカで過ごす事になりました。
米国の話をたくさんしていますが、日本は素晴らしい国だと思っています。日本人も素晴らしい。外国に住んで外から見る程、実感していることです。 日本人の協調性や国民性は世界一です。ただ、みんな同じで無ければいけないという、多様性を認めない風潮があって、これは変えなくちゃと思ってます。誇りある日本人でいるために、起業が普通になる国にしていきたいです
一生、起業家でいたい
将来の夢を聞かれるのですが、僕は、ずっと起業家でいたいです。信頼できる 仲間と一緒に、新しいサービスを提供してユーザーに喜んでもらえるとしたら、 僕にとっては、それが一番幸せな人生だと思うんですよ。
いくつになっても、新しいサービスを考えて、起業をする。また、いろんな起業家を支援する。そんな人生を生きていきたいです。
<山口の眼>
常に思考がポジティブだ。高校時代に政府の交換留学生プログラムで米 国留学したのは、偶然だったようだが、原体験として、 20代にして、既に4回の起業経験を持っている。「軌道に乗ると、ナンバー2の人が会社を上手く回してくれるので、自分は次の起業ができてラッキーだった」と、語っているけれど、そんなチームを組成するのは簡単ではない。チームリーダとしての資質が高いのだろうし、バイタリティが素晴らしいと思う。 僕が興味を持ったのは、スタートアップベンチャー企業を支援すると いうサービスやるための起業というところだ。日本の弱点の一つは、ベンチャー起業と既存の大企業の接点が少ないことなのだけれど、まさに、その日本経済の弱点を補完しようとしている。 crewwは、そのマッチングサービスを行う会社自体が、スタートアップ ベンチャーであるというのも、とても面白い。スタートアップ企業の悩み がよくわかるだろうし、適切なアドバイスもできるだろう。
若いスタッフだけでなく、経験豊富なアドバイザーもいる。「老壮青のバ
ランス」が大事というけれど、crewwは、まさにそんなチームだ。実際、 スタートアップベンチャーが成功するときには、若者のイノベーティブな発想や、エネルギッシュな行動力だけではなく、経験に裏打ちされた大人 の知恵も必要だ。
フェイスブックをモデルにした映画『ソーシャルネットワーク』でも、大 学生のザッカーバーグが、既にナップスターで経験のあるショーン・パー カーに応援されて、人脈や資金を得るというシーンがあった。
伊地知さんは米国に住んでいたこともあり、日米で起業の経験があるの で、日米両国の良いところ悪いところを、複眼的に捉えていて素晴らしい と思う。
大切なのは「何が出来るか」ではなくて、「なぜやるか」というビジョン を持つことだという彼のメッセージを多くの人に受け取って欲しい。
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<2020年の山口の眼>
彼との会話には、すごく刺激を受けたのを覚えています。。始まったばかりのcrewwは刺激的でした。時代が追いついてきたという感じですね。中小庁発表の2018年の開業率はまだ5.6%ですが、4.4%からの数字の上昇以上に社会における起業のイメージは変わった気がします。その変化に着実に成長していったcrewwは貢献していると思います。「オープンイノベーション」の掛け声はあっても、どうすればよいかわからずに立ちすくむ大企業をクライアントに、起業予備軍とマッチングするビシネスモデルは今の日本で貴重ですね。「日本を変える」を少しずつですが、やってくれていると思います。
僕はスタートアップスタジオを始めているので、気づけば伊地知くんと近い職域になっています。この7年間、時々ですがコミュニケーションを取らせてもらって勉強になっています。エンターテック分野の生態系のUPDATEをテーマの一つに掲げるStudioENTREとcrewwでご一緒する機会はそんなに遠いことではなさそうな気がして、楽しみにしています。
モチベーションあがります(^_-)