「#君の虜に」現象は、デジタル特化で仮説検証をやりきった初の成功事例としてエポックメイク!
今年最後#11となったMusicTech Radarのゲストは、Gridge創業メンバーの藪井さんと柚木さんで、TikTok大賞を取ったTikTok流行語大賞ミュージック部門賞を獲得した曲「summertime」の成功の秘訣について伺いました。
非常に示唆に富む内容だったので、ここでまとめます。
TikTok発で東南アジアを中心にグローバルに人気を博して、Spotifyの2020年に海外で再生された日本楽曲の7位にランキングインするという驚異的な成果を上げています。これまでの経緯は、ニューミドルマンコミュを一緒に主宰している脇田のblogに詳しいのでこちらをご覧ください。
さて、そのイベントでお話していて、素晴らしいと思うポイントをまとめます。
・最初からグローバル市場を見て戦略を考えた
・毎月、アーティストとSNS等の数字を共有して軌道修正しながら進めた。
・特別なことはやってない。仮説と検証、PDCAを回し続けた
こうやって書くと当たり前に思えますが、この当たり前のことを音楽ビジネスでやる人が少ないのも日本の現状です。
Gridgeが、cinamons & evening cinema「summertime」で行った手法は「デジタル特化、グローバル市場フォーカス」で、ビジネスパーソンが行った日本最初の成功例
だと思います。既に、Spotifyなどストリーミングサービスでの再生数だけでもそれなりの売上は立っているでしょう。もともとGridgeは従来型の音楽の収入だけではなく、他業種とのコラボなどの収益モデルを模索していた会社ですから、今回の先駆者的な成功事例はアーティストのブランディング向上と収益拡大にも結びつけていくでしょう。
素晴らしいのは、仮説検証というスタンスと、アーティストを巻き込んで情報を透明にした上で、しっかりとPDCAを回したことですね。僕がなるほどなと思ったのは、各サービス内の架け橋(ユーザーにわかりやすく気づいてもらう仕組み)、サービス間の架け橋をしっかりやるというお話でした。こういう基本的なことをしっかりやりきるのは大切ですよね?
藪井さんが「コールアンドレスポンス」と表現していたユーザーとアーティストのコミュニケーションを行うことの重要性もその通りだと思います。カバー、ダンス、リミックスと自由に楽曲を遊んでもらうことを促進してmeme(ミーム)的な現象を呼び込んだのも楽曲との相性もよく、良施策でしたね。音楽業界での経験が全くない人たちが創業チームのスタートアップですが、だからこそできたことなのでしょう。音楽業界側が彼らから学ぶべきことは本当に多いです。
これまでも、アーティストがクリエイティブな発想や自負でグローバルをイメージして創作して、たまたま成功した事例はあったと思います。ただ、成功理由は楽曲そのものの良さに寄って、再現性が低くなってしまい、音楽シーン全体を変える契機になりにくいのが残念でした。
Gridgeの二人は、今回成功した方法論をブラックボックス化して自分たちだけの手法にしようと思っていません。ITスタートアップ的には自然な発想で、オープンイノベーション型でやっていく方が自分たちも成長が加速できると考えるのは当然ですね。従来の音楽業界、芸能界では理解が難しい感覚でしょう。
ちなみに、Gridgeは現状は、音楽出版権は音楽出版社に預けているそうです。ポライトでクレバーな彼らは、イベント時に多くは語りませんでしたが(僕も敢えてつっこみませんでしたww)、既存音楽出版社がデジタルサービスでのグローバル展開時の宣伝や楽曲開発に対して無力で、著作権料徴収についても非力であることを実体験として知ったと思います。こういう体験が音楽著作権ビジネスのUPDATEにも繋がると僕は期待しています。
「#君の虜に〜」に成功例を知って、音楽業界やその周辺から色んな人達が寄ってきていることでしょう。その出逢いや起きるコミュニケーションは業界に良い影響を与えてくれそうなので期待します。もし従来型の仕組みに当てはめて利権を得ようとする動きがあっても、僕らが「通訳」するので、愚かな選択は回避できるはずです(^_-)
僕は今回のGridegeの成功を称賛しつつ、彼らが切り拓いてくれたデジタル+グローバルの音楽ビジネスの成功事例を音楽ビジネス全体の生態系のUPDATEにつながることを期待していますし、できることはやっていきたいと思っています。
デジタルファーストな手法が「当たり前」になるために支援するサービスや事業は何なのかを考えています。日本の音楽界を良くするためのサービスをやりたい人は、下記のエントリーも読みつつ、連絡ください!
今年もイベントを積み重ねて、ニューミドルマンコミュニティも活性化してきている気がしています。オンラインイベントを毎月だいたい2回やってます。(コロナが落ち着いたら懇親会などリアルも取り入れます。来年春以降はできるのかな)お申込みはこちらからどうぞ。