見出し画像

K-popを語るなら「日韓合作」から始まった歴史を踏まえないと浅薄。もてはやすだけだと学ぶこともできないよ。

 東洋経済の記事があまりに浅薄で驚いたので指摘します。

豪華パッケージは日本の定番手法

 ここで語られている音楽パッケージ販売の活用は、明らかに日本のやり方をベースにしています。それに気づかないライター、編集者に驚きます。日本で初回特別盤等の、数々の豪華パッケージやCDチェーンごとのバリエーション違いの購入特典の仕組みがあったことは若い世代のデザイナーはご存しないのでしょうか?渋谷系を牽引したトラットリアレーベルの商品を観たことはないんですかね?アジアのアーティストに日本人クリエイターが与えた影響は大きいと思います。ブログで何を書かれても自由ですが、経済誌に書くのであれば、編集者がきちんと調べていただきたいなと思います。
 K-Popや映画、ドラマなどの「韓流コンテンツ」は旬の勢いがあります。お金と注目があるところに才能は集まりますから、デザインなどのクリエイティブに見るべきところはあるのでしょう。そこをピックアップするのはよいことですが、K-Pop成功の経緯と、日本の方法論を上手に踏襲して、発展させたという歴史を踏まえないと、韓国から正確に学ぶことができないのではないでしょうか?

K-Popは日韓合作で始まった!?

 K-Popについては専門家ではありませんが、僕の知る限り、K-Popの礎になっていのは、東方神起とBoA、それらを売り出したSMエンターテインメントです(異論がある方はそういう言説も知りたいので、是非教えて下さい。)
 この動きは「日韓合作」で始まりました。SMエンターテインメントの日本法人は、エイベックスと吉本興業との合弁でした。その後にレインボーエンターテインメント(amazarashi、Nulbarich、ヨルシカ等が所属)を設立される栗田秀一さんが日本法人の代表でした。BoAちゃんは栗田さんの自宅に住み込みで活動していたそうです。

SMエンターテイメントは韓国のナベプロ!?

 今のK-Popの隆盛はSMエンターテインメントの成功が大きな契機で、韓国エンタメ界の経営者、プロデューサーには、元SMの方がたくさん活躍されています。日本は戦後に渡辺プロが作った仕組みや方法論が礎になっていて、元ナベプロの方が要所にいらっしゃるのと似ているなと思います。Amuseも
ヒップランドも尾木プロもハンズエンターテインメントもスペースシャワーネットワークも、その他、数々の元ナベプロの方々が作った会社が日本のエンタメ界には溢れています。 
 そのSMエンターテインメントが始めて、韓国の事務所が採用している、ローティンを選んで教育してアイドルグループにする仕組みはジャニーズ事務所からLDHに至る日本的なやり方です。だとしたら何故韓国のグループの歌唱力やダンスのレベルが日本のアイドルより高いの?という疑問は、もちろん反省、研究するべき対象と思います。

 この記事の筆者はマクロ的に把握されていないようですが、韓国は国策でいち早くブロードバンドを導入したことで違法流通が溢れ、それが原因で世界で最初にレコード産業が壊れた国です。もともと、日本の1/3程度の市場規模しかなかったこともあって、海外市場に集中して活路を見出したことで、今の成功につながっています。世界第二位の国内市場に甘えて、国内に特化したことで、成長が鈍化した日本の音楽業界と、デジタル化の(一時的)逆風を逆手に取って、デジタルサービスを活用しながら世界に出ていった韓国芸能界は、まさに好対照ですね。

豊かな都市カルチャーを持っていた韓国の「選択と集中」

 僕が頻繁にソウルに仕事で行っていたのは、2000年前後でした。「東京エスムジカ」という僕がプロデュースしてデビューさせたグループに、在日KOREANで韓国語堪能なメンバーがいたこともあり、アジア市場を意識して、韓国語版を制作し、韓国でもリリースやイベント出演をしていました。その頃から、韓国の都市カルチャーは豊かでした。面白いロックバンドもいたし、実は渋谷系ライクなセンシティブなポップスが人気があったりもしました。Paris Matchというグループは日本より韓国で人気があるというのは意外に知られていませんね。当時、東京とソウルは文化レベルは変わらないなと思った記憶があります。(それまでは当時の日本人的に「上から感覚」で見ていたのかもしれません)
 その上で、韓国の強みだなと思うのは「選択と集中」「オール韓国」です。アイドルグループにダンススキルを叩き込んで、洋楽最先端のHip-hopベースのサウンドで「K-Pop」というブランドを作っていきました。
 韓流ドラマ、映画だけでなく、サムソンや現代自動車という製造会社も一体となって「韓国文化」を輸出していきました。KOCCA(韓国コンテンツ振興院)の貢献も大きいと聞きます。「日本カルチャー」という括りでまとまることを躊躇したり、かっこ悪いと忌避する日本勢を尻目に着々と勢力を拡大していきました。僕自身、海外のカンファレンスイベントに行くと、「オール韓国」で、政府の資金も手厚く展開する韓国ポップカルチャーをいつも羨望の目で見ていました。志ある人が限られた予算で頑張る、まさに竹槍で戦う日本とここでも好対照がありました。

K-popの隆盛は日本人にとってもチャンス

 今や、映画やドラマも含めて韓国ポップカルチャーは、世界中の注目を集めています。これはアジアポップカルチャーへの興味に繋がるという意味で、日本にもチャンスです。ほとんどの欧米人は、韓国と日本の区別は付きませんww 
 LAに移住してアメリカ音楽市場で成果を出しつつある日本人作曲家ヒロイズムと話たら、最近は、K-Popライクな音楽のオーダーが多いと笑っていました。「ヒロ、K-Popぽいの得意だよな?」という問合せに、最初はちょっとムカついたそうですが、これは得な展開なんだなと気づいて「もちろん得意だよ」と答えるようにしているとのことです。正しい!

今度は日本が韓国を利用して海外市場に出ていこう!

 これまで日本企業はK-Popを日本市場に売ることでしか収益を得ようとしてきませんでした。今、注目のNiziUもいまだに同じ構造でゲンナリします。そういう意味では、中国オーディションにエイベックス所属の日本人が選ばれた流れには期待しています。INTO1は、エイベックスアジア代表の高橋俊太君が、丁寧に仕込んでいったプロジェクトです。大いに期待しています。

 韓国芸能界は、日本のノウハウを活用し、最初に日本市場を開拓し、その成功体験で、アジア各国へそしてアメリカにK-Pop普及させていきました。 韓国がやったことは、日本にも「できたはず」のことです。悔しさを持って、しっかり総括した上で、今や資金調達力でも、育成の仕組みでも、グローバルなブランド力でも随分水を開けられてしまった韓国から、謙虚に学んで、海外市場開拓に取るべきというのが僕の立場です。
 そのためには、やみくもに韓国ポップカルチャーを持て囃すのではなく、しっかり背景や仕組みとその歴史も学ぶべきだとこの記事を読んで思いました。そして「K-Popって日本から始まったんだよ!」と発言して、欧米人の興味を惹いて、海外市場を開拓していきましょう!そういう図々しさ、精神的なタフさも日本が韓国から学ぶべきことだと僕は思っています。

 音楽ビジネスの実践的研究を行うコミュニティ「ニューミドルマンコミュ」は、毎月2回イベントを行っています。ご興味ある方はどうぞ。

<関連投稿>


モチベーションあがります(^_-)