高橋俊太(エイベックスアジア代表取締役)インタビュー「アジア音楽市場の攻略法」(第7章:音楽業界を「拡張」するパイオニア16人-7) #全文公開
日本のカルチャーを海外に
山口:まず、経歴を教えてください。
高橋:小学校から大学卒業までヨーロッパとアメリカで育ちました。投資銀行で働いた後に、2002年のFIFAワールドカップの組織委員会を経て、ソニーに入社し、宣伝やブランディングの仕事をしていたんです。その後のキャリアを考えたときに、外資系日本法人の話とかはあったのですが、こう見えて日本人魂が強い方なので(笑)もともとエンタメが好きでエンタメビジネスをやりたいと思ってたし、日本のカルチャーを海外に持っていく方が面白いと思いました。
山口:なるほど。それがエイベックスに転職をした理由だったんですね。
高橋:音楽だけではなく、エンタメ全般をやっている会社だし、アジアの副社長と言うオファーをいただけたので、やってみようと。
山口:アジアやチャイナはどんな風に進めましたか?
高橋:海外法人はあったのですが、正直スケール感は出せていませんでした。中国には1度進出したけど撤退していたし、シンガポール法人もまだ大きなビジネスは作れていない印象でした。
そこで音楽だけではなく、IPのビジネスも始めてみました。ポケモンのマスターライセンスをやらせてもらったり、サンリオとDVを作ったり、STAR ISLAND(エーベックスの花火イベント)をシンガポールの大晦日カウントダウンイベントとしてやらせてもらって、シンガポール政府とも仲良くなれました。
山口:さすが、海外事業は、パートナーにどこを選び、契約を含めてどんな枠組みを作るのか、始め方が難しいとよく言われますが、「入り口戦略」が素晴らしいですね。
高橋:中国市場の課題でしたから、アーティストのプロデュースも始めました。「中国は難しい」というのが日本の感覚でしたが、僕は「アジアでビジネスをやる!」と言ってるのに、中国市場に挑戦しないと言うのはありえないと思ってました。中国法人も作り直して、経営のイニシアティブを握った上で、ネットワークを作っていきました。日本で売れているものを持っていくのではなく。C-Popが確立している中国音楽界に入っていったんです。
山口:日本人の不勉強と無知から来る「上から目線」「最悪ですよね。意識を変えないと。
高橋:はい。なので僕は中国で既に大きくなっていたC-Popを作りに行きました。エーベックスという日本の会社が中国の音楽プロデュースをやると言うことです。
山口:日本の会社が中国市場でCポップをプロデュースすると言う考え方は正しいですね。その成果がイントゥーワンへのエイベックス所属日本人アーティストの参加なんですね?
高橋:イントゥーワンは、中国ナンバーワンエンタメ企業の点セントグループが何者で仕掛けた11人組の男性アイドルグループです。そのうちの3人がエイベックス所属の日本人です。テレビの人気オーディション番組(創造会2021)で中国人から指示されたのです。
山口:まさに快挙です。初めて聞いた時は本当にびっくりしましたやらせは無しで中国人ユーザに支持されたと言うのは本当に凄いことだと思います
高橋:はい。本人たちも頑張ってくれました僕もメンバーには「友達に中学校で中国語で冗談を言えるように頑張れ、中国で成功したら本当に人生変わるから」
と葉っぱをかけました。実際、テレビでインタビューを受けられるレベルになってます。コミュニケーションは成立していますね。
山口:彼らも頑張ってくれたんですね。そういう日本人のは若者がいることが心強いです。日本の音楽会の歴史に残ると思います。本当に素晴らしい。
高橋:番組終了後2年間、「INTO1」としての活動になるのですが、ファンはしっかりついているので、グループ終了後は活躍してもらえればと思っています。中国も法律の整備が進んできていて、しっかりと考えてやっていけば、ビジネスはどんどんスケールさせられると思います。企業協賛だって、中国だと数十億と言うことがよくあるので。
入り方やスタッフとの出会いが鍵
山口:中国は難しい市場で、日本の音楽系の会社は苦労して、成果を出せずにいます成功の秘訣は何だと思いますか?
高橋:タイミングがすごく良かったです。海外ビジネスは「入り方」が大切なんですよね。あと信用できる現地人スタッフと出会えることが大きいです。エーベックスチャイナのスタッフは30人ぐらいいますが僕と早慶離外は全員中国人で現場判断は権限以上してます。もちろんエーベックスの持っている武器であるクリエイティブ力は最大限使います。
山口:海外法人のガバナンスのお手本になるやり方ですね。Facebookなどを拝見していると、最近は中東にもよく行っているようですが話せることがあれば教えてもらえますか?
高橋:中東ビジネスも経済規模の桁がでかくて暑いですサウジアラビア第二の都市でアニメビレッジのプロデュースやってます。国主導の大型プロジェクトで、本当にスケールを感じます(笑)
山口:シンガポール拠点のASEAN展開、中国人におけるC-Popのプロデュース、そしてサウジアラビアと夢のある話がたくさん聞けました。エーベックスアジアの今後の展望を聞かせてください。
高橋:これからどんどん出てくるグローバルを見据えたグループに注目してください。K-Popファンからも人気が出てきてます。このバウコロナリバウンドで(エンタメ)は求めています次のイントゥーワンを目指す日本人を見出していきたいです。後は世界で戦う意識など日本人がもっともっと必要なので音楽業界以外から集めるつもりです。
対談を終えて山口コメント
スケールが大きい、スーパービジネスマンです。日本のエンターテイメント業界を「拡張」してくれる人でしょう。エイベックス転職直前に、たまたま僕が主催するニューミドルマン養成講座を受講してくれて、以来親しくさせてもらっています。最近お話をしていても、僕が学ばせてもらうことの方が多いですね。一時期を築いた後に低迷し、迷走気味になっているエイベックスの「再生」もかなら楽々と果たしてくれることでしょう。
日本の音楽業界が行うべき、海外資料の攻略に、真正面から取り組んで、大きな成果を挙げています。アフターコロナでイベント、コンサートツアーそしてインバウンド需要が戻ってきたときに、大きく花を探すことだろうと楽しみです。
彼の背中を見て海外で成果を出す高橋俊太フォロワーが増えていくことでしょう。実際、エイベックスUSA代表の長田直己さんなども活躍を始めています。