Chapter 2:鼎談「経営戦略視点で音楽ビジネスを捉えると?」 (後編)
『新時代ミュージックビジネス最終講義』(2015年9月刊)は、音楽ビジネスを俯瞰して、進みつつあるデジタル化を見据えてまとめた本でした。改めて読み返しながら、2020年〜21年視点での分析を加筆していきます。
ストリーミングサービス は集約されるか?
山口:オンデマンドで月額課金型の音楽ストリーミングサービスが伸び ていて、音楽流通はここが主戦場になりそうです。Spotify 型のモデルが、プラットフォームとなる。そこに決済も生じるだろうし、事業価値があるところだと思います。ただ、このサービスは楽曲の品揃えは一緒になるので、差異化が難しいんですよ。ポイントは、レコメンデーションとかディスカバリーだと言われていますが、そこで圧倒的な差を付けるというのは難しくて、価格競争も権利者がいるから限界がある。結局、 AppleもSpotifyも7 割くらいは権利者に返しているから差異化が難しいので、規模の拡大に向かわざるを得ない。中国はインターネットアクセスそのものに制限があるから別だとしても、大まかにいうと世の中に 2 ~ 3 社しかストリーミングサービスは残らないはずですが、石川さんはどう思いますか?
石川:この種のビジネスに関して判断が難しい理由は、電話会社と同じです。電話会社も、経済性で見たら世界で2 社くらいになった方が良いに決っているんですよ。でも、なっていない。これは、国の法律とか政治の力などの影響を受けてしまうからです。では音楽のサービスが、ス ケーラビリティの問題で全世界で 1 つになるかというと、英語圏は 1つか 2つになるでしょう。それ以外の言語圏......例えば韓国において、韓国語のものがメインだったとしたら、Spotify がナンバーワンになるに は、よっぽど上手くやらない限り難しいでしょう。日本はもっと難しくて、日本で洋楽が聴かれなくなっているということも考えていくと、 Spotify は苦戦をすると思う。むしろ Apple だけは、ハードを持っていて、 日本でも普及しているから、No.2 として日本には存在し続けるのかな と思います。その意味で、ガラパゴスである日本語文化圏が、映画も含 めてますます英語文化圏と離れてしまっているという現状があって、人口がたかが 1 億 2 千万人で、しかも減っているというのは、非常に我々には不利な条件とも言えます。
東:日本だけで生き残るものを作る方向に日本が行ってしまったら、将来は無いですよね。
山口:その国のドメスティックなコンテンツの強さは、すごく影響があ りますよね。そういう意味では J-POP はドメスティックにおいてはすごく強いから、海外のパワーバランスとは関係無く、AWA が勝つかもしれないということですよね。
石川:最後は、ジャニーズ事務所が作ったプラットフォームが勝ってい るかもしれない(笑)。
東:SNS に関しては、言語圏で言えばまだインドも中国もあるしとい うことで、各国で 2 ~ 3 社は残るでしょう。そのくらいが、良いバラン スだと言われていますね。通信キャリアでも、「1 国に 3つもキャリアが要るの?」という考え方もあって、でも 1 つだけになるのは良くないから、じゃあ2つかということになりますよね。ソフトバンクがアメリカに行っているというのも、国内で 3 キャリアの競争をやっていても仕方が無いので、海外のサービスとつなぐことで差別化していこうということですよね。もう、国内で勝負をしている段階でもないという判断を彼らはしているんだと思います。
Amazon にとっての音楽サービス
山口:Apple はハード、Google はサービス、Facebook はユーザーと いうのは分かりました。その視点だと、Amazonはどういう会社になるのですか?
石川:Amazon は、ひとことで言うと eコマースのプラットフォームですよね。 彼らが押さえているのは、物流なんですよ。そういう意味で、 Amazon の最大のライバルはやっぱり楽天です。お店を持っていて、物流の仕組みと倉庫を持っていて、大量の多様な商品を流す仕組みとセットで、ネットの上で成り立たせているという、非常に特殊なポジションを取っていますよね。ただ、物流が絡んでくるというのは、物理的なコストがかかるエリアになります。情報だけで済む他のエリアと比べると、最後はスケーラブルだと言っても、物理的な場所とかガソリンとか、そういうものがすべてかかわってくるんですね。特にローカルな、それぞれの国での特性というのが出てくる分野です。
山口:そう考えたら、Amazon は音楽サービスをやるモチベーション は無いということになりますね?
石川:彼らのビジネスモデルでは、メリットは薄いですね。音楽市場の規模は、あまりにも小さすぎますから。
東:元を返せば、本屋から物流にシフトしに行った会社なので、音楽サービスをやってもイメージは合うけれど、「そこって大きくなるの?」という違和感はありますよね。
石川:まあ、他社に取られたくないからやっておく......というのは、あるかもしれない。
山口:なるほど。では、音楽には興味ないし、電子書籍も Kindle はやっているけれど、物流が本筋。e コマースと物流が、Amazon の本丸だということですね。
東:EC、物流、金融決済ですね。
石川:でも、一番の差別化要因は物流だと思う。むしろ、DHLに近いでしょう。DHLはB to Cじゃないですけどね。
日本市場しか見ていないことの危険性
山口:Samsung はどうですか? あそこは、音楽サービスをやるんでしょうか?
東:そろそろ悩み時じゃないですか? 日本企業を追いかけるキャッチアップ型の製造業としてスタートして、2015 年のCESの展示会を見て来ましたが、Samsung もそろそろ、大企業病みたいなものが始まった気がしました。例えば、性能追随をしだしたりとか......。
石川:単純な言い方をしちゃうと、日本の家電メーカーが GE などのアメリカのメーカーをやっつけたのと同じことを、Samsung はやったんです。ただ今回は、先進国の中でも特に所得が低い人たち、あとは途上国......要は一気にグローバル化したところで、そういうことをしたわけですね。ヨーロッパにはそういうことができる体力のあるメーカーが残っていなかったので、Samsung だけが安く作って、根こそぎ押さえて勝った。次に白物家電の分野で、中国のメーカーが全く同じモデルでやっています。これは、単純に言えば日本メーカーがバカなんだけど、そんなことを言ったら GE も同じ意味でバカということになります。
山口:成功者が陥るジレンマなのかもしれませんね。
石川:日本の製造業は、日本市場しか見ていなかったわけです。これは、日経新聞が悪いと思う。日経新聞では、国内に本社がある会社のシェア競争とかが載っていて、亀山工場をやっているシャープをほめていたわけです。でも、日本でのシェアなんて伸びる市場ではないから価値は低 い。それなのに“国内シェア 7 割”とか“亀山で高級化”なんてほめていて、それは逆だろう、と(笑)。だから、日経新聞が日本の家電メーカーをつぶしたようなもんですよ。
東:メーカーの経営陣は日経新聞を読むだけじゃなく、Wall Street Journal も読むべきですよね。日経新聞が提示する数字だけを追ってい ると、惑わされてしまいますから。
山口:話を戻しますと、音楽サービスはドメスティックコンテンツのシェアが大きいという側面と、言葉の問題と法律の問題があるから、幸か不幸か守られる側面がある、ということですね。
石川:世界のプラットフォームの趨勢が見えてきて、ここまで遅れてしまっている今の時点では、マクロで見れば、日本のレコード会社が鎖国してでも一生懸命守ろうとしているのは、むしろ正しいのかもしれないですね(笑)。まあ、そんな深い分析は無くて、レコード会社の経営者はただの保身でやっているんだと思うけど(笑)。
山口:僕はそんなこと言えませんが(笑)、もっと音楽の力を信じて、 攻める方向に舵をとっていただきたいですね。
“クールジャパン”対 “ハリウッド”の戦い方
山口:今後日本は、文化度の高さを活かして稼ぐという意味で、フランスやイタリアみたいな国になる必要があると思います。観光も主要産業にしつつ......。
石川:はい。だからクールジャパン戦略というのを国がやっていて、日本という切り口で、どういう風に世界の中でニッチを見つけていくのかを考えています。文化度で言うと、英語圏の次に最も文化度が高い言語圏が、日本語圏なんですよ。
山口:クールジャパンの定義の話も、ここでしておきたいと思います。 エンターテインメントの覇者は、アメリカのハリウッドじゃないです か? そのハリウッド的なものが、イメージで言うと世界でシェアの6 割くらいを持っているとして、残り4 割の中で、日本が 1 位になれる可 能性がある。下手すると、半分以上取れる可能性があるというのが、ク ールジャパンの定義じゃないかと僕は思います。世界の20%を取れた らすごい、ということですね。要はハリウッド型のルールで世界のエンタメは回っているけれど、そうじゃないルールで戦える可能性が、さまざまな歴史の偶然や必然で、今の日本のコンテンツ産業にあるんじゃな いかと実感していて、それをやるのがクールジャパン政策。この考え方については、どう思われますか?
石川:僕がゴンゾを上場した 10 年前、萌え銘柄ブームだったころは、 まさにクールジャパンの走りです。あの時だったら、クールジャパンは山口さんがおっしゃった定義そのままです。ところが、世界の市場がアメリカ中心ではなくなってしまった。今は経済新興国が中心です。だから、ハリウッドが自らハリウッドルールを壊している。ハリウッドのやり方ではなくて、中国ともやるし、ブラジルともやるし、これからの成長市場でどう戦うかを考えています。もう、ハリウッドを輸出しようとは思っていないんです。そこでは“アメリカ”という考えではなくて、 ディズニーであり、ワーナーであり、それぞれ個々の企業、個人やエージェントが、いかに新興国のローカルルールとミックスしながら、そこでも 1 番を獲っていくか......。そういうことを考え始めています。
山口:それは主には映画の話ですか?
石川:映画はそうだし少なくともTV ドラマもそうですよ。例えば NETFLIX が力を持って、オジリナルコンテンツを作り始めていますよね? 日本にも進出しますが、グローバルの配信権だけで全制作費の 8 割を出すというような提案をしてくるわけですよ。そうするとコンテ ンツプロデュース側は、これを利用できる。例えば NETFLIX にゴンゾのコンテンツを、8割プリセールスでインターネット権だけ渡しても良い。彼らは、グローバルで通用する可能性があれば資金を出します。 それで、NETFLIX が日本で勝ってくれても全く問題無い。ゴンゾは コンテンツを出す立場だから、日本で勝つのが Hulu じゃなくても別に良いわけです。
山口:分かります。音楽でも、そういう動きができないかなと思います。
石川:ただ、日本全体として我々が考えなければいけないのは、インフラを全部 NETFLIX にやらせるのはマズイだろう、ということです。 これは、国家のセキュリティにかかわる問題です。だから中国はやらないじゃないですか? NETFLIX 側も明確で、「中国だけは入りません」と言っていますね。中国は国の明確な戦略として、アメリカのメディアにシェアは 1%も渡さない。Google も追い出したし、メディアは全部追い出しますという戦略を採っているわけですから。でもこれは、国の 文化を守るという国家戦略としては正しいんですよ。
山口:中国はやり方が下手過ぎますけれど、アメリカに対抗しようとする姿勢は見習うべきところがありますね。フランスと中国のメディア文化政策は、僕も注目しています。インフラをアメリカ系グローバル企業に押さえられるのは国の危機だという意識を、この2 国からは感じます。
石川:でもクリエイターサイドで考えると、日本で NETFLIX が成功するのをサポートする方が、日テレと組んだHuluを成功させるより絶対得だし、良い作品を作れそうだなと思う。日本でダメなやつらと一緒 に沈没するくらいだったら......ということで、悩ましい話です(笑)。
観光資源としての音楽
山口:日本政府のクールジャパンの政策と現状について、東さんはどう思いますか?
東:クールジャパンって、政治的な背景があって、地方創生をからませ ようとしていますよね? 実際、クールジャパン機構もそういうネタを探しています。都心部だけに観光客が集まっていても、仕方が無いということですね。ただ、人口がこれだけ減っている中で、地方は、ファシリティ(施設・設備)に関しても更新ができません。空きビルばっかりになりそうという時代に、観光客にどんどん来てもらわないといけない。
山口:有効な打開策は何かあるのでしょうか?
東:地方には実は、空いている町家や古い設備がたくさんあって、これは文化資産としても価値があるものなんですね。ですから、こういった遊休スペースに仲介を立ててシェアリングして、観光客に泊まってもらうというような試みが始まっています。
山口:新しいものより、古いものの方が良いですもんね。
東:新しいものを建てるのではなく、せいぜいリノベ-ションにお金をかければ良いんですよ。そして泊まってもらった時に、日本のものを消 費してくれればいいな、ということですね。だからある意味ではショーケースで、ショーケースを日本に置いておくわけです。文化度を保った ままショーケースを置けば、観光客が来る。そして、そこでは日本の物 が売れる。しかも自国に帰ったら、すぐまた日本に来るのは大変だから、eコマースで買ってもらえる。こういうバリューチェーンが作れれば、有益ですね。いかに、人間の消費行動をクールジャパンにつなげるのか ということでしょう。
山口:おっしゃるように、これからの日本では外国人の観光というのはとても重要ですよね?
東:すさまじく大事です。しかも唯一、インバウンドだけは財務省も含 めて、すべての省庁で足並みがそろうんですよ。外貨が日本に落ちると いうのは、それだけ好影響が広範に出るので素晴らしいことなんです。 縦割り行政で面倒というのは国内予算に関してなので、観光に関してはみんなが協力できますし。それにこれだけ借金を抱えている国として、 収入があるというのはとても重要な戦略です。観光庁を立ち上げる時に、 全省庁から人を集めたことでもこれは分かります。
山口:インバウンドに関しては、音楽がやれることもまだまだ多いと思 うんです。特に英語で情報を入手できないなど、日本のコンサートの外国人への不親切さは、ものすごいですからね。これをまともにするだけで、ずいぶん変わるので本当にやった方が良いと思います。
東:今までクールジャパンは、海外で放送枠を押さえようとか、ラーメン店の一風堂もどんどん海外に店舗を出してというように、アウトバウンドが基本でした。“日本のものを置いてください”ということですね。でもそろそろ、インバウンドを重視するべき時期なんだと思います。日本に来て消費してもらう方が、圧倒的にお金は落ちますから。宿泊して、物を買って、ご飯を食べて......そこにライブや音楽フェスを絡めることも、できるじゃないですか? そういう事業者連合を作るべきですね。
山口:日本にライブやフェスを見に来て、そのついでに観光もしてもら う。これは、とても良い流れになりますね。 東 観光庁では“イントラバウンド”という言い方をしていますが、国 内を周遊してもらいましょうということを考えています。最初がアウト バウンド、次がインバウンド、その次はイントラバウンドで、日本の地 方をいろいろ回ってください、ということです。実際、京都は文化成熟 度の高い欧米人をターゲットにしていますが、それが奈良とか大阪にも 滲み出してきて、欧米人の観光客が増えてきているという現状がありま す。そういうステージの時に、クールジャパンとしてどういう政策を打てるのか、どういう投資をできるのかが重要です。しかも2020 年には オリンピックもありますから、音楽産業はそこに向けて、どういうショ ーケースを出せるのか? あるいは、音楽×◯◯の◯◯には何が入っ ているのか? 既に PlugAir というガジェットがありますけど、極端な ことを言えば音楽はデジタル化した瞬間にビット化するわけですから、 ビットコインや Fin Tech なんかとの組み合わせだって考えられるわけ です。コンセプトが拡張されれば、いろんなものが音楽にくっついてく る可能性があるんだろうなと思っています。
ニューミドルマンに 望むこと
山口:東さん注目の PlugAir は、僕も応援している日本人の若者たちに よるベンチャー BEATROBO が開発したスマホ向けガジェット&サー ビスです。これから、日本で音楽系のビジネスなりサービスなりをやろ うとしている人たちは、どういう視座を持つべきだと思いますか。 東 まず、“業界”という考え方を取り払った方が良いでしょう。これ だけネットワークが発達してくると、業界の垣根・境界というものが無 くなってきているので、音楽を使って他のビジネスとどうくっつけるか を考えないといけない。テクノロジーと音楽は親和性が高いので、IoT のガジェット系とくっつけるとか、いろんな発想ができると思います。 音楽業界の中の人たち......ある意味では村に居た人たちが、他の村の人 たちと交流しないといけないんですよ。
石川:ストレートに言うと、レコード協会とかいろんな業界団体が、そ れぞれの面子を気にして覇権争いをしているというのは、どこから見て も単なるバカですよ。日本連合で、世界に出て行かなければならない時 なのに......。音楽業界を見ていると、村の中の話ばかりですね。
東:でも若い人は、とっととやっちゃいますよ。業界団体とかには興味 が無いでしょう?
石川:でもその人たちが、楽曲の許諾という音楽サービスが立ち上がる 上での決定権を握っているのが問題なんですよ。例えば、日本で一番フ ァンを持っているジャニーズ事務所だけを見ても、日本全体を考えて活 動しているわけではない。日本で圧倒的に1 位だったら、日本を世界に 出すために先頭を切って、海外向けに J-POP を売るサービスをやる人 達に出資するくらいの勢いでやった方が良いわけです。その方が事業と しても伸びしろがあるし、日本経済も活性化する。日本でナンバーワンであることをキープするなんて意味が無いって、考えてほしいなと思い ます。
東:日本の国全体や金融業から見てみたら、音楽業界全体が中小零細企 業なわけです。一代目は、国内を相手にしてとても儲かっていた。二代目でも、マーケットは減ってきたけど、まだ保つよねという状態。そし て三代目になって、国内の人口もこのままだと江戸後期くらいにまで減 っていくということが見えてきて、マーケット消滅の危機にある。そん な時に、一歩を踏み出す勇気がありますか? という問題です。踏み出した人は残りますし、そのまま消滅するところも出てくるでしょう。しかるべき人たちへの、事業承継のタイミングが来ているんだと思います。
石川:中小企業という視点で言うと、日本の音楽レーベルは、ほとんどがインディーズなんですね。そうじゃないのが3 社あって、これはソニ ー、ユニバーサル、ワーナーなわけじゃないですか? ということは構図としては、日本の全インディーズ連合対 3 社グローバル連合がいて、 その利害は絶対に一致しないから、どう戦うのか、ということになるはずです。でもSMEJ だけは実はローカルなインディーズだとしたら、 インディーズ連合で日本のシェア 7 ~ 8 割までいくから、日本の文化を世界に出して行く際に戦える。でも、そういう視座では考えていないですよね?
グローバルネットワークの必要性
山口:まあレコード産業はテンポ感が遅そうなので、いったん置いてお くとして......。これから若者が戦っていくときの考え方は、どうすれば良いですか? 「もう、日本に住むのは止めなさい」と言いますか?
石川:若い人がアーティスト、クリエイターとして大成功したいなら、 シリコンバレーなりニューヨークなりシンガポールなり、海外に出て行った方が良いんですよ。これは間違い無いです。でも、それは個人レベルの話で、日本の産業としてどうするのかという話であれば、世界二番目の文化度だということを踏まえて、日本連合を作るしかない。だからいま、経産省がやっているクールジャパンを僕も全面的にサポートして いるし、いろいろな問題はあるかもしれないけれど、これはすごく良い動きなんです。
山口:クールジャパンには、僕も協力しています。何だかんだ言っても、 僕は音楽業界村育ちなんで(笑)、長老が理解できる言葉もしゃべれるし、 機会があればできるだけ通訳したいと思っています。ただ、音楽業界って良い意味でいい加減なところもあって、幾つか成功例が出ると意外に簡単に「いいんじゃない?」みたいに風向きが変わるんですよね。だから、今の日本の中の業界を変えるよりは、若い人たちが海外市場と連携した成功事例を作るのを手伝うのが、一番速い気がしています。僕自身もやりますけれど、自分一人だとそんなにたくさんの案件は実現できないから、いろんな人のサポートも積極的にしていきたいですね。
東:確かに突破力のある若い人が、ひたすら海外でチャレンジをしてき て、その成果を持ち帰って、日本をまとめるのは速い気がします。ただ、 日本を拠点にすることも大事です。文化度は高いですし、音楽マーケッ トも世界二位ということで、グローバルで見ても大きい。産業としては、 まだあるわけです。だから、ショーケースは日本に置いておきたい。ただし、日本がグローバルネットワークを持てていないのが問題であって ......。投資の世界で、日本にどれだけグローバルなファンドが来ている のかということと同じで、グローバルにチャネルがある音楽業界の人は、 どれだけいるのでしょうか? あるいは、海外に売るための組織がどれだけあるのでしょうか? 今はこれが一番欠けているのではないかと思います。
山口:その通りですね。しかしお二人と話すのは、めちゃくちゃ刺激的 です。今度、クールジャパンとインバウンドに関する提言本を3人で書 きましょう。
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2020年11月付PostScript
今読んでも、有益な提言に溢れていて、二人の慧眼ぶりには感服します。Amazonに関する分析もそのとおりの展開になっていますね。
クールジャパンに関する分析も完璧だったと思うのですが、成功事例という意味では3人共、悔しいことにまだ出せていません。国際競争が激しいグローバル市場で戦うためには「文化力」が重要になっている日本で、エンタメコンテンツをしっかり輸出して外貨とマインドシェアを獲得すること、そしてそのブランド力をインバウンドビジネスに活用することは死活的に重要です。コロナ禍で訪日外国人については、一旦無くなってしまっていますが、必ず戻ってくる領域の市場だと思うので、いい意味でのリセットにして、エンタメビジネス、文化力を活かしたインバウンドサービスの創出には、Stuido ENTREとしても取り組んでいくつもりです。
本書(本マガジン)の趣旨である、日本の音楽の海外輸出についても、インバウンドでの活用についても、キーになるのはDX(デジタル・トランスフォーメーション)です。toC、toB両面でのデジタル化の起爆剤となるサービスをスタートアップ型で生み出せるように、頑張っていきます。
今回読み直して、この3人で話す機会は、近々作りたいと思いました。コメントなどで、こんなテーマでなどご意見をいただけるとありがたいです。
モチベーションあがります(^_-)