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劇伴作曲家もUPDATE必要です。「山口ゼミ」で指針を出します!

 プロ作曲家育成の「山口ゼミ」で劇伴コースを作ったのは2015年です。元ジャニーズエンターテインメントの伊藤涼と一緒にやっている「山口ゼミ」は基本としてはJ-Popのソングライターを育成しています。きっかけは、4期生だった植田能平君でした。「どうしてもどうしても劇伴作曲家になりたい!」と彼が訴えるのを聞いて、劇伴音楽専門の講座を企画しようと思いました。
 僕の過去キャリアでは、BUGcorporationという音楽事務所社長で、縁があってジャズメン/スタジオミュージシャンのマネージメント歴があります。スタジオ全盛の頃で、マネージメントしていた佐山雅弘、村上ponta秀一(いずれも故人)は超一流の演奏家で、スタジオワークで高収入を稼ぎながら、自分の作品も発表するという活動スタイルで、その両面をバランス良くサポートするというマネージメントでした。彼らの活動にはドラマや映画などの音楽も含まれていました。当時「劇伴」とう言い方を僕は業界用語だと思っていましたが、いつの間にか一般的に使われるようになっていましたね。
 そんな経歴で劇伴関係の業界事情は知っていたので、そのネットワークとノウハウを伝える場をつくろうと思った訳です。植田は着実に実力を付け、数少ないチャンスもモノにして劇伴作曲家としての活動を続けています。一昨年、僕が4ヶ月間入院しているのをFacebookで見つけて、突然お見舞いに来てくれるような義理堅いところもある男です。音楽的な成長も続けていて、これからますます活躍してくれることでしょう。

 縁という意味では、フジパシフィックミュージックという会社で、フジテレビ関連のドラマ・映画の音楽を仕切る責任者のポジションを、僕の音楽事務所キャリアでの盟友とも言える元ビクターの吉田雅裕さんが務めていたというのもありました。彼に全面的に協力してもらって、2015年から「山口ゼミ劇伴作曲家コース」を始めました。以来、6年間、山口ゼミ劇伴作曲家コースから作曲家や、ディレクター、選曲家など音楽業界に新しい人材を送り込むことができました。今回講師をお願いした中溝あゆみ(クリーク)や榊原聡志(ゼロウェイブ)も山口ゼミで得た知見と人間関係でキャリアを始めた人たちです。

 僕がよく使う表現は、「J-Popでプロの作曲家になるのは狭き門だけど、劇伴作曲家にはそもそも門がないよね。そこに梯子を掛けておくよ」です。その梯子を登って中に入ってくれた人たちがいる訳です。

 さて、メディアを取り巻く状況は構造的に変わり始めています。ドラマ制作も同様です。地上波テレビ局の影響力は下がり続け、NetflixやAmazonがドラマやアニメの制作の新たな生態系をつくっています。以前は花形だった地上波の連続ドラマや東宝系全国公開映画よりも、NetflixやAmazonの方が製作費が大きいことも珍しくなくなっています。クリエイターにとっては、報酬が高いことも魅力ですが、それ以上に自分の作品を見る観客が、日本国内だけなのか、世界中なのかは大きな違いですね。

 この変化は、劇伴作曲家にも影響を与え始めています。優秀な監督やプロデューサーが、テレビの連ドラや映画業界が国内向けに製作する映画から、Netflix、Amazonに活動の中心を移してくれば、劇伴作曲家を取り囲む環境が変わってきます。著作権などのルールも変わりますし、世界中に自分の楽曲のファンもできます。劇伴の場合は、放送局の子会社の音楽出版社が国内でのドラマの都合を優先した契約条件でコントロールするのが前提ですが、Netflixは違います。オンラインでの独占上映以外の権利は、クリエイターサイドに持たせるのが一般的です。監督や音楽家にとって、自分が持てる著作権の割合、自分でコントロールできる範疇が全然違ってくるのです。
 こういった変化に、いち早く反応しているのが、劇伴作曲家の林ゆうきさんです。3年くらい前に「ドラマよりアニメやりたいんですよ。だって、ドラマは国内の人しか観ないから、僕のメリットが少ないんです」と言っていて、流石だなと思いました。国際は知財弁護士を紹介するなどの形で僕もサポートしています。プロの劇伴作曲家にとって、自分の友人達や両親・親戚が喜ぶ地上波の放送ではなく、世界に自分の音楽のファンができることを喜ぶというのは、真っ当なビジネスマインドです。実際、林ゆうきは、Spotifyやweiboのフォロワー数で日本人作曲家として、劇伴に限らずにトップクラスになっていますね。

 実は、仕事して取り組むと「劇伴音楽」は閉ざされた世界です。注目度の高いドラマになるほど、業界の様々な事情が交錯しますから、機密保持が厳格です。撮影の都合でスケジュールが遅れても、放映日程は変えられませんから、音楽制作にしわ寄せがくることも少なくありません。そんなタフな状況に耐えることが求められます。どんなにシンドイ環境でも「逃げない」作曲家というのが絶対条件で、それを担保するのが劇伴系の音楽事務所という構造になっています。自ずと内向きな仕事になるのはやむを得ないですね。

 山口ゼミ劇伴コースでも、その業界慣習、劇伴音楽ならではの「掟」は伝えてきましたが、そろそろ「次世代の話」も始めなくてはいけないなと思っています。2021年の講座では、日本の業界に適応した「従来型の劇伴作曲家」と、始まっている構造変化を踏まえて活躍する「次世代型の劇伴作曲家」の両面を伝えて、成長できるプログラムを用意しました。自分の適性に合わせて、選んでいけば良いと思うし、本当は、その両方に対応できるのが理想です。

 次世代型育成という観点で、僕が注目しているのはAudiostockです。CEOの西尾君は優秀かつ誠実な起業家で、着実に売上を伸ばし、スタートアップとして成功への道を歩んでいます。クレオフーガの時代からアドバイザー役もやらせてもらっていて、Co-Writing StudioというJ-pop作曲家向けのコミュニケーションツールも一緒に開発しました。
 今はまだ、セミプロ的な兼業作曲家がお小遣いを稼ぐサービスと言う印象を持たれていて、楽曲を自由度高く使えるところから、セキュリティに敏感な劇伴事務所は、所属の作曲家に出品を禁止したりしているようです。しかし、実際に自分が作った音源が売れるという体験はどんなに金額が安くても貴重です。劇伴作曲家は入り口に立つのが難しく「自宅DAWでつくった音源がその日にテレビで流れても遜色ない」スキルが無ければ、そもそも候補にもなりません。初期のスキルアップが難しい職業です。
 ところがAudiostockは使われる映像の用途が多岐にわたるので、クオリティの幅ももう少し広く、自分の曲が映像のBGMで使われるという体験をすることができます。これはとても貴重なことで、僕ら音楽プロデューサーがデモを聞いてアドバイスするよりも、少額であってもお金を払うクライアントの判断に触れることの方が、プロの劇伴作曲家には意味がある気がします。
 2021年度では、Audiostockにも協力してもらって、劇伴作曲家の修行みたいな意味付けで、「売れ筋の楽曲」を探してフィードバックを得ながら楽曲を売っていく部分もサポートします。
 現状では、Audiostockでの活動と、地上波のテレビドラマや全国公開映画の劇音楽は、かなり隔絶されていますが、近い将来、AudioStock出身のスター劇伴作曲家が登場すると僕は確信しています。そうなると業界側の流れも変わって、劇伴作曲家の登竜門的な存在になっていくでしょう。今年始めるのは良いタイミングです。

  2021年度のもう一つの目玉は、TRIAD MUSIC PRODUCTIONの参加です。講師をお願いした岩本裕司君は、山口ゼミOBです。一流企業を「脱サラ」して、CM音楽の仕事でしっかり稼ぎながら、ドラマの監督やプロデューサーとホットラインを築きながら、仲間と一緒に事務所を立ち上げたビジネスパーソンでもあります。従来の業界のしがらみには良い意味で縛られずに、着実に活動範囲を広げています。
 昨年度にお願いした講座で、実際にドラマの動画を用意して、受講生に音楽を作らせて、完成編の「模範解答」と比較してもらえるというやり方が、非常に実践的なスキルアップ方法だと思い、今期の柱としてやってもらうことにしました。TRIAD MUSICは業容拡大中で、新しい作家がたくさん欲しいとのこと。本講座が良い出逢いになることでしょう。
 もちろんこれまで通り、既存の劇伴系事務所への紹介、売り込みサポートは僕の方で協力します。
 こんなやり方なので定員に限りがあります。昨年までの山口ゼミ受講経験を前提というルールを改めて、劇伴コースだけの受講を可能にしましたので、劇伴作曲家になりたいという人は、早めにお申し込み下さい。

 ちょっと気になる人は、プレイベントとして、AudioStock西尾周一郎と人気作曲家林ゆうきと三人でのトークセッションを無料でやりますので、こちらをチェックしてみて下さい!




モチベーションあがります(^_-)