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成田悠輔も間違えた音楽市場の影響力。映画興行収入を上回るとのデータが発表される

 音楽業界で仕事するようになった頃、よく耳にしたいたのは、「音楽業界は豆腐業界と同じ規模で小さいんだよ」という先輩たちの言葉でした。どちらもレコード業界同程度の4~5000億円だったようです。音楽業界が「村」の中で閉じていて、社会や行政に対して音楽ビジネスの可能性や業界としての意義を語る必要がない牧歌的な時代だったと思います。
 風営法でクラブが経営できなくなり、コロナ禍で不要不急の扱いをされ、チケット高額転売問題対応などで、行政やメディアとしっかり向き合うようになりました。今や日本政府も「コンテンツ産業を日本の基幹産業に」と掛け声が聞こえます。
 そんな時に、影響力がある学者が不用意な発言があり、話題になりました。5万いいねがされています。

 不正確なデータなので訂正しないとなと思っていたら、鈴木貴歩さんがすかさずやってくれていました。ファクト提示だけのシンプルな投稿が、クールですね。

 音楽ビジネスはビジネススキームを理解してないと、把握が難しい側面があります。マーチャンダイジングやファンクラブビジネスはまとまった統計がないのですが、少なくとも日本ではコンサート市場と同程度以上になると思われています。音楽は売上データ以上にマインドシェア的な影響力がある側面も指摘したいのですが、それ以前に、多様な収益源があって、市場規模自体もそれなりにあります。音楽業界側のブランディングが足らないのも一因なだなと思っていたら、タイミングの良いニュースがありました。

 音楽著作権、原盤権の売上が、映画の興行収入を上回って、「音楽が映画に勝ったー」みたいな感じのニュースになっていますが、冷静に考えると、この二つの数字を比較するのが適切かどうか微妙ですね。音楽原盤に関する売上はデジタルサービスが中心になっていますから、NetflixやAmazon Prime、Disney+などと比較するほうが適切な気もします。
 まあ、映画産業の柱は興行収入ということでの産業間の比較なのでしょう。「映画」というフォーマットにとどまるかどうかはわかりませんが、「映像エンタメ産業」の伸び代はまだまだ大きいでしょう。そもそも映像と音楽は比較するというより連携するものですね。
 データは、数字の意味を構造的に理解しないと勘違いにつながります。音楽業界と三菱商事の比較も、権利ビジネスと工数ビジネスという構造の違いを無視して語ると乱暴な、あまり意味のない意見になるのだなと、キャッチーさとバランスなのですが、自分も気をつけようと思いました。

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山口哲一:エンターテック✕起業
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