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山口ゼミbiZはこんな内容です。夏学期からの参加も大歓迎!!

 これからの音楽界を担うZ世代を対象に、今、起きている音楽ビジネスの状況を伝えると共に、一人一人のキャリアプランについて指導していく「山口ゼミbiZ」は23人の応募があり、隔週ペースで講義を進めています。

 申し込むと、StudioENTREのslackを案内され、エントリーシートに自分の希望を書いてもらって、一人ずつと30分程度の面談を行います。何をやりたいかを聞いた上で、どういうマインドセットで、何を目標にしてやるとよいかを個別にアドバイスします。希望に合わせて、山口周辺のネットワークで提供できることを説明して、適切なタイミングで紹介することを伝えます。
 講義自体はオンラインで行います。Co-Writing Studioという山口ゼミ独自開発したコミュニケーションツールに僕が慣れているので、講義に関するサポートはCWSで行っています。講座のアーカイブ動画も提供して、キャッチアップや復習に活用できます。
 本校では4月21日に行った第2回の講義資料を紹介します。本稿の末尾にslideshare公開していますので、興味のある方は御覧ください。

常にゴールを明確にする

 大学での講義は漫然としていることも少なくないですね。何のために山口ゼミbiZがあるのかを明らかにして始めています。
 山biZ全体を通じて「音楽を通じた自己実現🟰自分のキャリアプランを考える」ということを掲げています。そのために、デジタル化で大きな構造変化が起きている音楽ビジネスをマクロに理解しましょうというのが、講義としての軸になります。具体的には昨年発行の拙著『音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』をテキストに、わかりやすく解説していきます。

インタラクティブ、クリエイティブ、プラクティカルの3原則

 僕との双方向や、受講生同士のコミュニケーション誘発を促しながら(インタラクティブ)、ビジネスの構造を本質的に見て(クリエイティブ)、実業に繋がる、自分が何ができるか、やりたいかを考えていく(プラクティカル)という3方針を掲げています。

 講義の冒頭では、最近のエンターテック、音楽ビジネス関係のニュースの解説をいれています。受講生にリアリティを持ってもらいたいからです。この日(4月21日)は、二つの時事ネタを入れました。

直近のエンターテックニュースから派生したキーワード解説

 まず、ヒカキンが自室をフォートナイトの中に再現したという記事を、近未来をイメージするのにわかりやすいなと思って取り上げました。
 ポイントは、来るべきメタバースの時代のキーワードになる「デジタルツイン」へのイメージを持つことです。

 バズワードが出てきた時に、踊らされるのではなく、本質を抑えるためには、「たとえば〜な感じのことだよねー」って具体のイメージを持つことは大切です。ヒカキンの動画を見て、デジタルツインの具体例を把握して、「だったら、こういうビジネスができるのでは?」「こんな表現が成立するはず」みたいに広げてもらえるとよいなと思っています。

 もう一つは、TuneCoreJapanのアーティスト還元金額のニュースです。インディーズ、特にDIYアーティストが中心のTCJが、2022年にデジタル市場で126億円をアーティストに分配して、レーベルと比較するとソニー、ユニバーサルに次いで3位というのは、普通の感覚だと驚きでしょう。実は、4年くらい前から順位は3位前後でした。変わったのは業界とのハレーションを心配した社長の野田くんが発表せずいたのを、プレスリリースで国内3位と堂々というようになったいうのが変化です。還元額も伸び続けていますし、日本の音楽界に貢献しているという自信と自負が出てきたのでしょう。
 話がそれますが、気になるのは、日本のデジタル市場規模の発表が日本のレコード協会加盟社だけの数字になっていることです。政府や異業種、他国から見た時に、市場規模といのは判断基準にされます。嘘やハッタリは論外ですが、大きい数字の方が良いわけです。日本の音楽市場については、TCJの還元額も合算して語られるべきでしょう。経済産業省のデジタルコンテンツ白書は以前、10年間編集委員をやらせていただきました。今は脇田敬さんがやっているので、今年からは、チューンコアも合算して、正確な数字を発表するようにしようと話をしています。そんな裏話も受講生には面白いかもしれませんね。

TuneCore71億円前年比166%から読み取る日本音楽市場の近未来

 デジタル化したことで、必要な人材が変わっている。音楽業界にZ世代が求められていて、自分たちに優位性があることをこんなニュースからも感じてもらいたいなと思っています。デジタルに疎いオッサン達はデジタル時代の音楽ビジネスに無用な存在になってしまっています。

「世界の音楽市場を知る」解説

 さて、ここからが本題です。この日は、『音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本』の第2章「世界の音楽市場を知る」を解説します。

6年遅れた日本でこれから起きることは「きまっている」


 世界の音楽市場はデジタル化で成長しています。自分の問題としてその状況を把握してもらいたいですね。日本の音楽業界は世界の中で最もデジタル化が遅れ、6〜7年遅れているので、日本にこれから起きることの外観は、世界市場の把握で予測可能になります。
 こちらは、よく見かける世界の音楽市場のグラフ。iTunesに代表されるダウンロード型サービスでは、CD市場の落ち込みをカバーできず、Spotifyが出てきて、2014年からV字回復して、まだ成長を続けているという、レコード会社もデジタル化で成長したというのが概要です。もはやレコード業界という言葉ではなく、Recorded Music Industry(録音原盤業界)となっていることにも注目するように伝えています。

 日本では特に、パッケージ商品(Physical)の話を大切なので、音楽ファンがコレクションしたいと言う欲望自体はなくなっていない証拠として、アメリカ市場でアナログレコード(Vynal)が成長し、CDの2倍ほどの売上になっているデータを示しました。音楽を聴くならだけなら、スマホでサブスクで良いけれど、アーティストとの関係性を深めるためや、コレクションの喜びという目的だと、レコードの方が良いと言うのは容易にイメージできますね。

 しっかり押さえてもらいたいのは、ストリーミングサービスにおけるアーティストへ分配率です。サブスクは音楽家への分配が少ないと言う間違った情報をいまだに語る人がいます。ユーザが支払った金額と音楽家サイドが受け取った金額の割合として考えれば、CD時代の3倍程度に分配率は分大きくなっていることをこのグラフで確認します。CD時代はなかった、少額印税が話題になるのは、ロングテール型と言う別の問題で、誰でも配信できるようになってしまったことによって、市場に登場するアーティスト、りりーすされる楽曲数が著しく増えたことが理由なのです

 今や音楽ビジネス(録音原盤ビジネス)生態系の幹となったストリーミングサービスですが、サービス各社違いは少ないです。品揃えにあたる楽曲は、どのサービスもほとんど同じです。レコメンデーションの仕組みや楽曲の見つけやすさなどで競い合ってていますか、大きな差異は見られないので、サブスクサービスは、世界的に寡占化圧力があります。そんな状況もざっくり把握しておきたいものです。

 サブスクが生態系の幹になったことによる影響は数多くあります。非常に大きな変化として、新譜旧譜の比率の問題があります。CD時代は、レコード会社の売上の9割は、1年以内に発売された作品だと言われていました。今やアメリカ市場では18ヶ月以上前に発表された作品の売上が市場の3/4を占めるようになっています。この変化は音楽家にとってはユーザから愛された楽曲は長く売り上げが立つと言うメリットがあると同時に、新曲を発表した際に、回収できる金額が回収するのに時間がかかりがちですというマイナス面もあるでしょう。デジタル時代に知っておきたいことですね。


 サブスクサービスは、音楽創作/原盤制作にも大きな変化を及ぼしています。ストリーミングサービスでは30秒以上再生されないと売上が分配されないスキップレートと呼ばれるルールがあります。ユーザーの早送りを避けるために楽曲が短く、特にイントロが短くなると言う変化があります。またデジタル化によって手軽に音楽創作/原盤制作ができるようになり、コーライティングの一般化もあって、作曲に関わる人数も増えました。また楽曲検索で引っかかりやすい、アーティスト同士がファンの交流を促進したいなど理由もあってアーティストコラボレーションが増えています。これもデジタル化による変化と言えるでしょう。

 もう一つの変化。ストリーミングサービスで旧譜が聞かれるようになったことで著作権売買が盛んになっています。特にビックアーティストの作品は高値で取引されています。過去のデータから未来の再生回数が予測可能になりますので、音楽に詳しくない人でも、著作権や原盤権を投資対象にできるようになりました。

 近年の音楽ビジネスで言うと、Tiktokの話は外せません。この辺は肌感でで受講生の方が僕よりわかっているはずです。僕の役割は、俯瞰した視点で今起きていることを伝えること認識しています。

 世界の音楽市場の概要を伝えたところで、具体的なイメージをより持てるように、お勧めの映画や書籍も紹介しました。リアリティーを持って音楽サービス、音楽市場店、音楽ビジネスをイメージするのは大切ですね。

オススメ映画・書籍や毎回の「宿題」添削も

 山口ゼミbiZでは、毎回宿題を出すことにしています。2週間の間隔がありますので、次の講座前を締切に提出してもらっています。頭の中を整理して言語化していく作業が意味があると思うからです。提出された宿題に対しては、一つ一つ僕がCWSのスレッドの中で返信して、他の受講生も見られるようにしています。こういうインタラクティブなやり方が、今の時代の教育としては大切ですから。

 さて、こんな形で行っている山口ゼミビスの講義興味のある方は、講義資料をご覧ください。ご質問なども受け付けます。

 と言うことで、7月から始まる山口で水夏学期は受講生募集中です。Z世代の学生をメインの対象にお話ししますが、受講自体はどなたでも大丈夫です。興味のある方はぜひお申し込みください。


モチベーションあがります(^_-)