神々の遊ぶ庭 -頂のエゾオコジョ-
神々の遊ぶ庭、大雪山。アイヌ語でウパシチロンヌプと呼ばれているエゾオコジョ。2度の出会いは、お互い興味津々でした。
神々の遊ぶ庭の第5編では、大雪山(=カムイミンタラ)で出会ったエゾオコジョを紹介します。
エゾオコジョはアイヌ語で”ウパシチロンヌプ(ウパシ=雪、チロンヌプ=狐)”と呼ばれています。冬毛のエゾオコジョからついた名前でしょうか。カムイとしては、ウパシチロンヌプ・カムイと呼ばれていたようです。
大雪山に数年通っていますが、2度しか会ったことがありません。ただ、2度ともかなり近くまで寄ってきました。好奇心旺盛が故に準絶滅危惧種になっているとしたらちょっと複雑です。
01 かわいいハンター
5時半に白雲岳の山頂を目指して白雲避難小屋を出発。朝露を帯びた草花が朝陽に輝く姿に何度も足が止まります。そこにエゾシマリスが出てきたかと思うと背後ではミソサザイが大きな声で歌いはじめます。
白雲岳のガレ場では、エゾナキウサギの鳴き声が響いています。そこに突然現れた見慣れない動物。
エゾオコジョ!
突然の初顔合わせに焦ってしまいますが、エゾオコジョはお構いなしに、こちらの様子を伺いにかなり近くまで寄ってきますが私が少しでも動くと岩穴に隠れます。これを何度か繰り返します。
ぬいぐるみのような毛並みと愛らしい表情。ただ、エゾナキウサギの鳴き声が響いた瞬間にハンターの片鱗を覗かせました。
02 山頂で
曇天の中、雲がはれるのを期待して7時半に白雲避難小屋を出発。白雲岳の頂を目指していると眼下の草原にヒグマの親仔がいました。仔の特徴から7月上旬に出会った親仔のようです。この2ヶ月前で2頭の仔はずいぶん大きくなっていました。500mは離れていますが、彼らが移動していくのを見送ってから山頂に向かいます。
山頂に到着して、テルモス(サーモス)のお湯でインスタントコーヒーを淹れて一息します。相変わらずの曇天ですが、風はなく一人で至極の時間を過ごします。
下りの時間を逆算して、下山の準備をはじめているときに視線を感じて振り向くとエゾオコジョが岩の下から覗いていました。
目が合うとすぐに岩の下に隠れますが、すぐに違う岩の隙間からこちらを伺いにきます。4年前に出会ったときと同じで、何度も確認に来ます。数分間ほとんど動かずに観察し合い、気が済んだのか出てこなくなりました。
ぬいぐるみみたいにかわいらしい姿からは、エゾナキウサギやエゾシマリスを捕食する姿は想像できません。
短い時間でしたが出会えた奇跡に感謝です。冬期の真っ白の彼らにも会ってみたいです。
≪編集後記≫
2020年はあまりエゾナキウサギやエゾシマリスに会えませんでした。翌2021年もです。2019年にエゾオコジョに会っただけに「もしかして」と考えてしまいました。あるいは、ちょうどコロナ禍だったので人間だけでなく彼らも影響を受けていたのかもと。
2022年からは以前のようにエゾナキウサギたちに会えるようになったのでたまたま登ったときに会えなかっただけかもしれないですね。
2024年はどうなるでしょうね。