大雪日和 -緑岳で紅葉狩り-
大雪山の広大な景色とともに紅葉を楽しめる場所の一つ、”緑岳”。登山口から山頂まで紅葉が楽しめます。
『大雪日和』の第4編では、大雪山で出会った紅葉の景色を紹介します。
今回は、緑岳!紅葉が有名な銀泉台と沼巡りコースとは趣が異なる広大な景色とともに紅葉を味わえる隠れた名所と密かに思っています。
『緑岳で紅葉狩り』と題して、大雪高原温泉の緑岳登山口から緑岳山頂にかけての紅葉です。
01 1合目
紅葉した木々に迎えられ、緑岳登山口を出発します。樹林帯の中も足下も見える景色が紅葉です。最初の急登で息を整えながら視線を左に移すと、紅葉の先にも紅葉が広がっていました。
緑色のエゾマツの隙間を埋めるダテカンバの黄色とウラジロナナカマドの赤色。えもいわれる配色に目を奪われます。これほどまでに多様な木々があることに改めて気づかされます。
登山口から30分ほど登ると景色が開けます。高根ヶ原から忠別岳の頂上から麓までの見事な紅葉が一望できます。
02 第一花園
最初の急登の先には”花園”と名のついた草原が広がります。7月まで雪が残るため8月にピークを迎える”花”園。9月下旬には、見事に色づいた”葉”園が迎えてくれます。
ひときわ目立つのは深い朱に染まったチングルマの葉。光沢のある葉が陽光に輝きます。草も木々も秋色に染まり、緑岳には雪がのっています。
一週間前に登ったときに、雪に埋まった草原を見て、今年の紅葉は終わったと思っていただけにうれしい驚きでした。
さらにその一週間前は、この草原で数頭のエゾシカが草を食んでいました。草を食んでいた子鹿が、母親が少し先に移動していることに気づき、駆け足で追いかけていきます。
03 第二花園
第一花園を過ぎると第二花園に入ります。その谷側の斜面の草紅葉の先には、最盛期を迎えた山々の紅葉が広がっていました。曇空でしたが、その薄暗さがそれぞれの秋色を際立たせているようでした。
ハイマツ帯に入る崖の手前には、見事に紅葉したウラジロナナカマド。柔らかな陽射しがあたると、それぞれの朱色を主張します。
広大な大地の小さな一角ですが、雪どけの時期や陽のあたり方、風の向きなど、数ヶ月の環境がこのグラデーションを作るのでしょうか。その先のダテカンバは、少しの黄葉を残した白木が森を彩っていました。
04 岩の急登
景色のない薄暗いハイマツのトンネルから時折、緑岳の斜面が見えます。しばらく進むと視界が開け、大きな岩が積み上がった急斜面が現れます。ここを登るといよいよ緑岳の頂上です。
岩の斜面をつづら折りに登ります。景色を遮るものはなく、標高を上げる毎に景色が広がっていきます。眼下には、今しがた歩いてきた大地。薄雲から陽が射し込むと鮮やかさを増します。
岩場を登っていると、至る所からエゾナキウサギの鳴き声が聞こえます。
ただ、なかなか姿を見つけられません。見つけてもこちらの気配に気づくとすぐに隠れてしまうため、目の動きだけで探します。
05 緑岳山頂
登山口から約4.5km、約3.5時間で緑岳に登頂です。標高を上げる毎に広がった景色のピークです。
眼下には、沢筋が黄色に染められていました。いくつもの沢筋が渦巻きのように一つの流れに集まっています。何度も登っている緑岳ですが、自然の造形美に初めて気づかされました。
さらにその先には、大雪高原の紅葉が広がっています。さざ波が立つのは高原沼、その奥が大学沼でしょうか。その上の急峻な崖には残雪、その上には先週の初冠雪の雪が残っていました。
高根ヶ原に続くピークは忠別岳、そしてその先の王冠のような頂はトムラウシ山です。視線を右に移すと白雲岳、そしてその先には旭岳が望めます。
≪編集後記≫
9月下旬のマイカー規制の期間のバスの乗客のほとんどは沼巡りコースに向かいます。沼巡りコースは、上の写真の紅葉の中を歩くわけですから人気があるのも頷けます。しかも高低差はあまりないため初心者でも楽しめます。
緑岳の登山は、沼巡りコースに比べると少しハードルは上がりますが、今回紹介した景色に加えて、自分が歩いた景色(沼巡りコース)を上から眺めるのも気持ちの良いものです。
さらにハードルは上がりますが、大雪高原温泉と銀泉台とマイカー規制が同時のタイミングで緑岳登山口から登って、銀泉台に下る周回コースもこの時期ならではの欲張りコースですよ。