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神々の遊ぶ庭 -エゾユキウサギ-
神々の遊ぶ庭、大雪山。アイヌ語でイセポと呼ばれているエゾユキウサギ。大雪山の尾根で跳ねる彼らを遠くから見つめます。
神々の遊ぶ庭の第4編では、大雪山(=カムイミンタラ)で出会ったエゾユキウサギを紹介します。
エゾユキウサギはアイヌ語で”イセポ(キイキイ鳴く小さなもの)”と呼ばれています。一部の地域では、ウサギ神とも呼ばれていたようです。
ウサギといえばかわいいイメージですが、はじめて至近距離で会ったときにその大きさに驚きました。調べてみると成獣は50~60cmほどとのこと。また、最高時速80 kmで走ることができ、ヒグマの時速50 kmよりもだんぜん早く、日本の哺乳類で最速とのことです。
高い身体能力を持っていますがとても警戒心が強く、我々に気づくとすぐに遠くに駆けていきます。夜行性ということもあり、数年大雪山に通っていますが、数度しか会ったことはありません。冬期の真っ白の彼らにもいつか会ってみたいです。
01 雪の上
高根ヶ原に咲いているというホソバウルップソウに会うために、沼巡りコースを経て、雪渓の三笠新道を登ります。三笠新道は6月下旬に開通しますが、ヒグマの出没が確認されるとすぐに閉鎖されるため、毎年10日間ほどしか通ることができない経路です。
三笠新道は雪渓の急斜面でいわゆる”道”はありません。アイゼンとピッケルをしっかりと効かせてつつ足早に登り、9時半に高根ヶ原に到着しました。広尾根には雪はなく、芽吹いたばかりの草原には念願のホソバウルップソウが咲いていました。
沼巡りコースは15時までに登山口に戻らないといけないため、11時半に高根ヶ原を後にします。雪渓でアイゼンを履いていると雪渓の縁からエゾユキウサギが現れました。
すぐに藪に戻っていきましたがこれが大雪山でのエゾユキウサギとの初めての出会いです。
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02 霧の中
濃い霧がはれるのを期待して白雲岳の頂に向かいますが、一向にはれる気配はなく、15時をまわり、雨が降り出したため、白雲避難小屋に戻ることにします。
濃い霧の中を歩いていると一瞬景色が広がったと思った瞬間に目の前にエゾユキウサギがいました。
「大きい!」
これが第一印象です。ゆうに50cmは超えています。
至近距離での出会いに驚きつつもゆっくりとカメラを向けますが、その音に振り向き、再び濃くなってきた霧の中に駆けていってしまいました。
夏期は主に夜間に活動すると思っていましたが、天気が悪い日は日中でも活動しているのですね。
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03 集まり
大雪山に入って2日目の朝。風もなく天気は上々。5時前に白雲避難小屋を出て、白雲分岐に向かいます。朝露が残る新芽に朝陽が注ぎ、キラキラ輝く姿に何度も足が止まります。
白雲分岐を過ぎたところで、一息ついていると岩礫の広尾根で何かが動いています。カメラを望遠にして覗くとエゾユキウサギでした。おおかた夏毛ですが、冬毛が残った装いが尾根に同化しています。目を離すとどこに行ったかわからなくなります。
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まわりを見渡すと他にも。4羽がゆっくり跳ねては止まり、集まったり離れたりしています。そのうちの2羽は背中合わせとはいえいい雰囲気です。
夜行性の彼らが日の出からすでに2時間を過ぎたこの時間に悠々と跳ねているとは。こんな光景を見るのは初めてです。
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夕方に通りかかったときにもまだいました。くりくりした目が夕陽に透き通っています。日没までもう少し時間はありますが分厚い雲に覆われ薄暗くなってきました。と同時に緩やかな尾根のピークにゆっくりと跳ねて行きました。
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この日は、すれ違った人やテント場でもエゾユキウサギの目撃情報をいくつか聞きました。これまであまり見かけなかっただけに今日は特別な日だったのでしょうか。翌日はまったく会えませんでした。
04 草原で
尾根を散策していると真っ茶色のエゾユキウサギが草を食んでいました。朝方まで激しい雨が降り続いていたため、ようやく食事にありつけたのでしょうか。
6月に出会ったエゾユキウサギよりも小柄な感じがするのは、夏毛のせいなのか、それともこの夏に生まれた子なのかもしれないですね。
食事が済んだのかあっという間に稜線に駆けていきました。
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≪編集後記≫
1度だけエゾユキウサギの赤ちゃんに出会ったことがあります。頂上付近の登山道脇の藪から真っ黒い10cmほどの塊が飛び出してきて、私に向かってきましたが、危険を感じたのか急ブレーキして引き返していきました。漫画のようなコミカルなブレーキのかけ方に疲れが癒やされました。2020年7月20日の出来事です。
『集まり』で紹介した昼間の集会は、はじめは婚活かと思いましたが、妊娠期間が50日とのことなので、子ウサギに会ったタイミングとは日数が合いません。年が違うのでなんともいえないですが。どういうときに集会しているのか知りたいです。