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大雪日和 -月光-
月光に照らされた大雪の峰々は神秘的です。夕方や日の出前の月のある景色もまたいいものです。
北海道で一番月に近い場所、大雪山。浮かび上がる山々は昼間とは別の表情を見せてくれます。夕方や日の出前の月がある景色も思いがけずいいものです。
『大雪日和』の第5章では、これまで大雪山で出会った”月”のある景色を紹介します。
■月夜
深夜2時半。テントから透ける月明かりにつられて外に出る。トムラウシ山の真上からの月明かりでヘッドライトをつけなくても歩けるほど明るい。
6月とはいえ、まだまだ残った雪渓が月光に浮かび上がり、峰々を描き出す。
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月明かりに浮かび上がる雪渓の峰々を雲が覆いだす。”滝雲”だ。
生きもののようにうごめく雲がゆっくりと斜面を流れ落ち、暗闇に溶け込む。澄んだ空には月明かりに負けない星々が光を放つ。
こんな光景が客室から見ることができるとは。
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テント泊を知らない頃に何度か泊まった大雪高原山荘は、料理も温泉も景色も最高の宿だ。
■夕月夜
頂を覆っていた雲海が潮が引くように少しずつ遠ざかる。そして、旭岳に太陽が沈みゆく。雲の切れ目から伸びた今日最後の陽光が秋の気配の白雲岳の頂を染める。太陽が沈むと同時に雲海の海原から月が昇る。
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■薄月夜
登山者が寝静まった20時半に外に出る。薄雲が月光を拡散し、緑岳からトムラウシ山までの山容をくっきりと映し出す。
峰々の隙間を埋める雲海が輝く。星たちも月明かりに負けじと輝く。
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深夜の2時過ぎに再び外に出る。南西の空に傾いた月が草原や山々をほのかに照らす。まもなく月が沈み朝が来る。
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■朧月夜
3時過ぎ。白雲岳の頂からのご来光を目指し、月明かりの登山道を進む。一息つきながら振り向くと、多くのテントが灯り、白雲避難小屋の窓から明かりが漏れている。山の朝は早い。
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■暁月夜
日の出の時間を気にしながら白雲岳の頂上へ急ぐ。ヘッドライトなしでも足下がわかるようになってくる。振り向くとオレンジから濃紺のグラデーションの空。そこに浮かぶ月と星。音のない世界。
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■朝月夜
まだ三日月が残る空が徐々に染まっていく。眼下の雲海は昨夜の雨の持ち主だろうか。その雨の名残が秋色に変わりはじめた草にびっしりと残る。
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≪編集後記≫
2024年の十五夜は、9月17日だそうです。
この十五夜の記事を見て、大雪山の月夜を集めてみました。
星空の写真に比べ、月夜の写真は極端に少ないですが、月明かりに浮かび上がる大雪の峰々も美しいことに改めて気づきました。
特に雪渓がある6月が美しいですが、十五夜あたりでも雪が積もることはあり得るので、いつかそのタイミングで撮ってみたいです。