![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/100241564/rectangle_large_type_2_58eac6076e6c9727f484904546d15d69.jpeg?width=1200)
【演劇フェス】MIE NEXTAGE 2023 ~劇団Cr→、四西劇場、ham~
『おめでたいやつら』by 劇団Cr→
今回のミエネクで一番肩の力を抜いて見れた作品だったと思う。役者全員がフラットで演技をしていたし会話も丁寧だった、それでいてキャラクターがちゃんと立っていて、だれるところもなかった。日常風景のシーンづくりは、基礎的なことがちゃんとできてないと難しい。劇団Cr→はひっかかりなくみれたし、関係性や設定がすっと理解できたのでとても見やすかったと思う。
それだけに、もうひと盛り上がり、ふた盛り上がり欲しかった。日常系アニメという言葉から借りると、作品ジャンルは日常系演劇になるのだろうか。私としては、今作品には物足りなさを感じ、もっとこの三人を観ていたい、別の一日も観てみたいと思った。
いや、でももしかしたら、これもすべて次の作品の動員につなげるための仕掛けなのかもしれない。これが演出の思惑通りなのだとしたら、私はまんまと踊らされてしまったわけである。劇団Cr→、恐ろしい子…。
『人生色々』by 四西劇場
台本が持つメッセージを私は見つけられなかったので、狙いは『エンタメ』なのだと思った。ややマニアックな小ネタもちりばめられてたし、役者たち自身が持ってる本来の可愛いらしさもあって、ほのぼの楽しむことはできたからだ。ただ、ラストのライブパフォーマンスシーンだけは、どうしても理解できなかった。
おそらく一番罪深いのは衣装だろう。ジャージという衣装の必要性が全く感じられなった中で、「赤と青が残ってよかった」「口マネ芸」とマネージャーが言いだした時、勘のいい観客はもう先に噴き出していた。引田天功がわかる世代なら誰しもが想像したし、期待したに違いない。それがどういうことか、赤いスイートピーだの、青い鳥だの、口マネというにも失礼甚だしい再現度のライブパフォーマンスが始まり、私たちはとんでもない肩透かしを食らったのだ。『テツandトモ』知らない?だとしたら、あのジャージ衣装は何だったの?私はパニックだったし、この作品にはがっかりしてしまった。
ただ、今冷静になって思えば、これは私の浅はかな考えでは到底理解しえない『昭和、平成を生きていた芸能やメディアに対する高校生からの一種のアンチテーゼ』だったのかもしれない。これは四西劇場に話を伺いに行く必要性がありそうだ。
『アップダウン』by ham
前説をきいて、物語が始まり、テーマが理解できて「あぁ、確かにあるあるだ」と私は思った。そして、日常に潜むホラーに間違いない、とも。私も経験したことはあるし、社会人演劇としてはお手本のような題材、脚本だと思う。観客も静かに引き込まれていったし、観劇後にちゃんと考えさせる宿題をくれるいい作品だった。
ただ、ちょっと気になったのは、話を持ち掛けられた側の女の子の心情。彼女の表情の変化は、立場の逆転を印象付け、恐怖感を与える演技としては必要だったのだろうけれど、その「恐怖感を与える」ことを意識しすぎたせいで、彼女のキャラクターがいまいちよく見えなかった気がする。彼女の猟奇的、狂気的な表情変化は目の前の相手を洗脳するためのそれであることは、理解できる。けれどラストの電話対応終わりの顔の豹変は、意味が分からなかった。あのスイッチが切れるような無表情はなに?私は恐怖感の押し付けのように感じて、少し冷めてしまった。
話を持ち掛ける側の女の子が次第に顔が見えなくなっていく演出はとても好きだった。スマホの着信音も効果的に恐怖心をあおっていて気持ちよかった。ラスト結末も、観客をはっとさせるすばらしい仕掛けであった。だから、電話を切った彼女が当たり前のように笑顔でそのまま日常に溶け込んでいってもらえば、素晴らしいトラウマを観客に植え付けられたのでは?と私は思う。