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【演劇フェス】MIE NEXTAGE 2023 GroupB~蕎麦猫、玉彩★Ca劇団~

『酒場にて』by 蕎麦猫

 異世界転生作品が世の中にはびこるなか、誰もが思いつきそうでありながら、案外見たことがない設定だった。異なる世界観の物語が同じ世界線上に存在するというだけで、面白くならないわけがない。オタク文化が世間に浸透してきた今の時代、話題性としては十分だし、題材として素晴らしいと思う。
 けれど、そこがピークで、非常にもったいなかった。テキストはベタではあるけれども、悪くなかった気もする。『異世界転生もの』あるあるにツッコミながらもちゃんと王道に乗っ取って進むスタイルは、吉本新喜劇にも似た一種の古典芸能だろう。だから、そこを活かしきれなかったのが非常に残念だった。『異世界転生もの』という世界設定の説得力がもっとあれば、ストーリー展開における屋台崩しはもっと成功していたように思った。豪華な舞台装置を作れという意味ではない、今回と同予算で、もっと出来たことがあったのではないかということだ。
 ただ、題材はよかった。本当に良かった。コスプレイヤーをメンバーにいれて「ジャパニーズオタク」エッセンスをもっと強化すれば、それだけでも、本気で世界に通用する演劇作品になる。ほかに先を越される前に、ぜひ頑張ってほしい。

『ケンとクリコの神だがし』by 玉彩★Ca劇団

 子どもに見せたい演劇NO.1だった。教科書のような演劇作品だった。
 わかりやすい設定や関係性は導入にスムーズだったし、子どもでも大人でも楽しめるわくわくするテーマは優秀。飽きの来させない展開と期待を裏切らない結末という安心感もあって、まさに大人から子供まで楽しめる作品だったと思う。
 何よりよかったのは、隅々まで丁寧な演劇作品であったことだ。パワーコメディといえど役者たちはキャラクターとして地に足ついていたし、説得力のある衣装や道具、無駄のない舞台装置も良かった。そして、具象にたよらない想像力を掻き立てる演出もとても良かった。小規模でも十分楽しめる演劇満喫セットだったと思う。
 ケンが不思議な世界に迷い込んでから働かせてもらうまでのシーンはちょっと長かった気がするが、それはまあ再現度の高さでカバーされていたし、アドリブなのか台本なのかわからない役者のオフっぽい部分やもたつきもあったけど、それもまた演劇の醍醐味と言えるだろう。
 今度はスケールの違う作品を見てみたい。


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