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2度の災難 健気に立つナツメヤシ 沖縄

ナツメヤシの幹に開いた10か所以上の穴。何だと思いますか?
 
実はこれ、機銃弾が命中した痕なのです。場所は沖縄県沖縄市の「東南植物楽園」です。同園によると、40~50年ほど前、台湾からに移植された中の1本で、園創業にあたり輸入した多くのヤシ類を検品中に偶然見つかった、とのことでした。
 
他のヤシより細く、成長も遅れた状態であったものの、植えてみたところ育ってきたため説明書きを付けて公開しているということでした。

ナツメヤシの幹に開いた機銃弾の痕=いずれも2018年、沖縄県沖縄市の東南植物楽園で
説明板

私達が訪れたのは2018年の10月下旬。見たところ葉がなく枯れているように見えました。話では、同年9月下旬から10月1日にかけて南西諸島~東日本を襲った台風24号による暴風で幹が半分に折れてしまったのだそうです。この台風では全国55地点で観測史上最大の暴風を記録しています。
 
「ナツメヤシは生長点が1か所しかなく、樹木医の診断では、その唯一の生長点が失われてしまっているということですので、残念ながら再生は不可能と考えています」(同園)ということでした。

2018年の台風24号の暴風で上半分が折れ、なくなっていました

奇蹟は起こらないものか


あれから6年余、気になって問い合わせたところ、ヤシは折れたままの状態で立っており、蔓性の植物が巻き付いた状態ということでした(2024年11月現在)。
 
やはり再生は不可能だったかー。しかし同園ではこれを切ってなくしてしまうことは一切考えておらず、今後も展示を続けていくということでした。
 

生命力の象徴 ナツメヤシ


機銃掃射と台風という二重の災難に見舞われ、葉をなくしながらも立ち続けるナツメヤシ。説明板には「砂漠のオアシスとして生命力の強さを象徴する樹木」とありました。どうかこれからも優しいスタッフたちに見守られながら幸せな“余生”を過ごしてもらいたいものです。
 
なお、説明板にある「第2次世界大戦時の台湾中部で機銃掃射を受けた」ことに関してですが、台湾は沖縄と違って地上戦はなく、ではなぜ機銃が撃ち込まれたのか。航空機からの攻撃があったのか。それとも試射か訓練か。これらの疑問については創業者の大林正宗さんが既に他界されたこともあり、それ以上の詳細は不明ということでした。

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