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ふりかえりの主役は誰?
はじめに
こんにちは、スクラムマスターでシン・アジャイルコミュニティメンバーのyama_sitterです。
今回は私がスクラムマスターを担って間もない頃の「ふりかえりにおける失敗談」を書かせて頂きました。
シン・アジャイルコミュニティ発の企画で色々な方の体験談を集めており、その1つの事例になればいいなと思っています。
この記事でお伝えしたいのは以下の2つです。
ふりかえりの主役は「チーム」
スクラムマスターは焦らず、場作りに集中する
「当たり前のこと」と思う方もいるかもしれませんが、過去の私はスクラムを成り立たせることに必死になり、成果が出ないことを焦り、当たり前のことすら見えなくなってしまっていました。
スクラムの導入やアジャイルな文化・チーム作りに意欲を持っているが、うまくいかず焦ってしまっている、そんな方に読んで頂ければと思います。
ちなみに本記事はあくまで一個人の「事例」であり、使い勝手の良いTips等を示したものではありません。
ご了承下さい。
当時はどんな状況だったか
ふりかえりに至るまで
スクラムを導入して2ヶ月程度
何度かチームでふりかえり(レトロスペクティブ)を実施している
チームは直近良い成果を出せておらず、またスプリントも安定していない
ふりかえりの参加者
4人構成のWeb開発チームメンバー
組織されてからまだそこまでの時間は経っていない
メンバー同士の関係値は悪くない
但し、自分から場の沈黙を破るようなメンバーは少なく、比較的大人しい
スクラムに触れて日が浅く、情報はあるが知識にまでは昇華されていない
レトロスペクティブのやり方は知っている、但し「ふりかえりの意義」を深く理解している状態ではない
ふりかえりのファシリテーター
元エンジニアの新任スクラムマスター(私)
まだ目に見える成果に繋げられていないため、特にふりかえりの場を良くしようと必死
メンバーとは定期的に1on1を実施しており、メンバー1人1人との関係値は良好
何をやったか(やってしまったか)
当時のふりかえりではKPT的な手法を用い、メンバーに意見を書いた付箋を貼ってもらうようにしていました。
この時、私は以下のようなアプローチでふりかえりの場を進行します。
ふりかえりのテーマ(≒ 目的、背景)は説明せず、ふりかえりの手法については細かく説明する
メンバー1人に意見の発表を促す。それを事細かに拾い、質問し、状況に応じて自分なりの解答を提示
ここで場の文脈が途切れるので、その後また別の1人に意見の発表を促す…を繰り返す
どうにかその1人が挙げてくれたそれらしい意見にフォーカスし、改善アイデアにすることを提案
要はふりかえりの場が「個々のメンバー対スクラムマスター」という構図になっていた、ということです。
どんな結果になったか(失敗をしたか)
ふりかえりの中で、メンバーとファシリテーターとのコミュニケーションは活発化しました。
但しメンバー間、要は「チーム」のコミュニケーションは殆ど発生しませんでした。
メンバーはこの場の真の目的をきちんと理解できていませんし、スクラムマスターである私と個々のメンバーだけで話しているのだから当然です。
ふりかえりで挙がった改善アイデアは個々のメンバーの意見のみが反映されたものが殆どで、チーム全体の関心事にはなりません。
そしてその改善アイデアは実行されないか、あるいは実行されてもそこまで効果を発揮しないまま終わることが殆どでした。
反省点
何が問題だったのか?
この結果を招いた要素は様々だった筈です。
ただそれら以上に、私自身、及び私が作ろうとした場に、以下のような問題があったと考えています。
新任スクラムマスター(私)が失敗を避けようと必死になっていた
目的意識不在で、スクラムを成り立たせるためだけの「ふりかえり、という形のためのふりかえり」を実施してしまっていた
新任スクラムマスター(私)がメンバー1人1人の納得感だけにフォーカスしてしまった
「チーム」に対する問いかけではなく「メンバー」に対する質問を投げていた
「チーム」が気付くためのヒントではなく「メンバー」が求める解答を提示していた
その場の意義を理解していないメンバーが置いてきぼりになっていた
メンバーに手法の説明はしても、目的・背景については伝えきれていない
結果、メンバーは「場を用意されたから参加している」という受動的なスタンスになってしまっていた
ここから気付いたことは何か?
このふりかえりの場をふりかえり、私は2つのことを学びました。
目的意識の重要性
「この時間は誰のため?何のため?」に立ち返る必要がある
ふりかえりはスクラムを成り立たせるために存在するイベントではなく、主役である「チーム」が気付きを得て改善する機会
スクラムマスターはこれを理解し「場作り」に集中することが肝要
目的や意義をチームに伝え続けることも大事
メンバーが「この時間は誰のため?何のため?」を理解できていなければ、受動的になってしまうのは必然
スクラムマスターは忍耐の生き物
チームがうまくいっていない時ほど、スクラムマスターは余裕を持つ
余裕が持てないと本来の目的を見失い、焦り、場の主役を「チーム」に据えることもできなくなってしまう
こうやって文章化すると凄く普通のことしか書いていませんね。
当時の自分は何をやっていたんだ…。
ただまぁ、それが普通のことだと思える程度には成長できていると信じたいと思います。
まとめ
ふりかえりの主役は「チーム」です。
そしてこれを、スクラムマスターを含むメンバー全員の共通認識として持つことが非常に重要です。
当然スクラムマスターがこれを理解することも大事ですが、チームが「自分たちの場である」と理解することで、ふりかえりの場の空気は大きく変わると思います。
また、スクラムマスターが焦って前面に出ても良いことはありません。
チームの成果が出ていなくても、焦らず場作りに集中しましょう。
スクラムマスターは「忍耐の生き物」です。
私と同じようなやり方をしている方、同じような状況で悩んでいる方。
私の失敗談を「アンチパターン」と捉えて改善に活かしてもらえると嬉しいです…。
最後に
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。
この記事を読んだ方にシン・アジャイルコミュニティの企画に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
この企画を通じてアジャイルな組織・文化を作る大きなナレッジを生み出せると思いますので、是非ご参加を!