クソみたいな将来と美化された過去
#エンジンがかかった瞬間 、僕は90年代に帰る。
幼少の頃から、実家には1台の原付バイクがあります。
父親が高校生の時から所有している、水冷2ストロークオフロード原付のDT50です。
今やオフロードの原付なんて絶滅危惧種、そもそも2ストロークエンジンの市販車なんて無いわけで。
80年代から90年代にかけて、原付が非常にヤンチャだった時代があったわけです。
最大出力7.2馬力。
50ccということは、1リッター換算で約140馬力……?
物心がついた時には「エコ!省燃費!!」という時代に生きていた僕にとって、街でたま〜にすれ違うスクーターとかが撒き散らす2ストオイルの匂いは、まさに「元気で平和なニッポン」の残り香そのものでした。
話を戻しましょう。
父親が持っているDT50、動いていた記憶は1回くらいしかないんです。
しかも、実家の畑での収穫作業が済んだあとに、突然畑で乗り回し始めた時のやつ。
もちろん、父親は祖母に怒られてました。
あれから20年。
ナンバーは切ってしまったが、未だにDT50は実家の倉庫に眠っている。
そして僕のアパートにはもう1台のDT50。
まあ、ここには感動的な出会いや運命のイタズラがあるわけでもなく、
単に「後輩が乗ってたやつを安く譲ってもらった」だけなんですけど。
正直水冷2ストのミッション車なら何でも良かった。
経緯はともあれ、父親と僕の共通の話題として確固たる地位を確立しつつあるDT50。
ちょこちょこ直して乗っては、新たな不具合(もしくは整備時のミスの露呈)によって数ヶ月動かさなくなり、またちょこちょこ直して乗って………
思い返すと「完動品」だった瞬間がほとんどないんだな。
それでも奇跡的な頑丈さによって、いつでもエンジンを始動させるくらいはできます。
妙に軽いキックペダルでクランキングさせつつ、スロットルを調節。
フューエルインジェクション時代になって失われたエンジン、キャブレターとの「対話」がそこにはあります。
エンジンがアイドリングを始めても油断はできません。
暖気が済むまでは、割とちょっとした事でストールします。
たまーに回してやって生存確認をする。
それくらいしかしてなくても、オイルの香りと2ストサウンドが、僕を90年代に連れて行ってくれます。
価値観のアップデートなるものが叫ばれる昨今ですが、そこには失われてしまったなにかがある気がします。
「将来への希望?ないよ?」と言って憚らない僕にとって、ある意味生きる希望かもしれないし、現実から目を背け続ける自分の象徴でしかないかないのかもしれない。
でもそうするしかねえんだよな。
「映え」「見た目」ばかりの汚え現実と、
そこから導かれるクソみてえな未来より、
美化された過去の方が、縋るに値するってもんだ。
春に向けて冬の間に手を入れてやろうかな、DT。
なのでヤマハさん、絶版部品再販してくんねえかな〜〜〜〜
特にハンドル回りのスイッチ類。
付け加えると、9月に手に入れたセリカもエンジンはヤマハですね。
お世話になってます。マジで。
念入りに媚を売ったところでお開き。
タバコ吸ってきます。
大久保
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