あなたも「そば鉄」いかがですか?
前の記事で私が「乗り鉄」であり、「JR全線乗る」ことが夢であると紹介した。実は私にはもう一つ鉄道ファン活動の主目的にしているものがあるので紹介させていただきたい。それはずばり、「そば鉄」である。
「そば鉄」って何?
私が考える「そば鉄」とは、「駅そば」を食べることを楽しむ「鉄道ファン」の総称である。乗り鉄や撮り鉄などと比べるとマイナーなジャンルであるためそば鉄を知らなかったという方でも、駅のホームやコンコースにある(主に立ち食い)そば屋さんを見たことがあったり、あるいは利用したことがあったりするのではないだろうか。そのようなそば屋のことを「駅そば」と呼ぶ。なお、駅そばの定義は人によって様々で、ホーム上にある店しか駅そばと認めない人や、待合所や駅ビルの中にある店も駅そばに含める人もいる。かく言う私は駅敷地外であっても列車を乗り降りする人がついでによく利用する店であれば駅そばであるという認識を持っている。(駅そばだけに駅のそばにあるってね。)
駅そばの魅力とは
魅力① 手軽に楽しめる食文化の違い
私が考える駅そばの魅力として第一に挙げられるのは、地域による食文化の違いを手軽に楽しめるということである。最も分かりやすい違いはやはり「つゆ」であろう。東日本ではかつおをベースにしたしょっぱい醤油だしが多いのに対して、西日本では昆布をベースにした甘いだしが多いように感じる。また北海道など寒い地域では麺が見えなくなるほどつゆが濃いことも珍しくない。つゆのほかにその地域の特徴がよく反映されるのは天ぷらなどの「トッピング」である。聞いたことのない魚や野菜の天ぷらを見つけるとついつい頼みたくなってしまう。
魅力② 乗り鉄との相性の良さ
駅そばは食事をする時間の限られた通勤客をメインターゲットにしているため、乗り換え駅やターミナル駅にあることが多い。また、そばという料理の特性上、注文から調理・提供までの時間がとても短く、客の回転が速い。こういった駅そばの特徴は乗り鉄活動をする上で非常に相性が良いのである。乗り鉄の旅行は、始発から終電まで乗り換えを重ねながらずっと列車に乗り続けることも珍しくない。例えば青春18きっぷを使った乗り鉄旅では、東京駅で改札を入って電車に乗り、次に改札を出るのが盛岡駅や広島駅だったということもある。このような観光地を素通りするといった乗り鉄の旅行は、しばしば「限界旅行」と揶揄され、旅行というよりもはや移動に近い。そのような旅行の際に役立つのが、短い乗り換え時間で食べられる駅そばなのである。この記事を読んでくださっている方の中には限界旅行とまではいかなくとも、名古屋駅や姫路駅での乗り換え時間で駅そばを食べた経験がある方もいるのではないだろうか。(正直私は名古屋城や姫路城を訪れたことはないですが、名古屋や姫路の駅そばは何回か利用しています笑)
おすすめの駅そば紹介
ここからは私がこれまで訪れた駅そばの中からいくつか取り上げておすすめとして紹介させていただきたい。正直私は食リポ(食レポ?)にはあまり自信がないが、上手な文章の書き方や豊かな語彙力を身につけたいというnote開設時の目標のもと、頑張っていきたい。それではどうぞ。
※値段や営業時間などの情報は現在と異なる場合があります。ご注意ください。
おすすめ① 弥生軒「唐揚げそば」(我孫子駅(千葉県))
まず初めにご紹介するのはJR常磐線とJR成田線が乗り入れる我孫子(あびこ)駅で食べられる、弥生軒の唐揚げそばである。我孫子の唐揚げそばはそば鉄のみならず鉄道ファンに広く親しまれている名物であり、「我孫子」と書いて「唐揚げそば」と読むと言っても過言ではないだろう。何と言っても目を引くのは唐揚げの大きさだ。唐揚げ1個で成人男性の握りこぶしに匹敵するほどの大きさがあり、トッピングで2個注文すると下のそばがほとんど見えなくなる。味の想像はつきやすいだろうが、そばの上に唐揚げを乗せたものはありそうで他にはなかなかない。また、つゆも唐揚げに負けないくらい濃い味付けであり、唐揚げは食べ進めていくうちにつゆに浸っていくので味の変化を楽しむことができる。唐揚げ1個でかなりのボリュームがあるため、小腹な時や小食な方には嬉しい唐揚げ単品(そば抜き)も選べるのも魅力的だ。さらに、実は唐揚げ単品は持ち帰ることもできる。その場合、唐揚げはビニール袋に入れて提供される。持ち帰りならば特急列車の通過待ちの僅かな時間でも購入することができる。状況に合わせて様々な楽しみ方ができるのが弥生軒の特徴であり魅力なのだ。なお、私は未訪問であるが、隣の天王台駅にも店舗がある。
(最終訪問日:2024-03-30)
おすすめ② 清流そば「おでんそば」(立川駅(東京都))
JR中央線・JR青梅線・JR南武線に加え多摩モノレールが乗り入れる東京西部一のターミナル駅である立川駅。ここで食べられるのが名物おでんそばである。その名の通りおでんの具がそばの上に乗っている。トッピングは「さつま揚げ1個」「がんもどき2枚」「玉子2個」「がんもどき1枚と玉子1個」の4通りの中から選ぶことができる(値段はすべて同じ)。おでんそばの最大の特徴はそばのつゆでおでんの具を味わうことである。そばにからしをつけて食べるのもおでんそばならではで、おでんとそばのどちらを食べているのかといった若干の違和感がいつも面白い。なお、がんもどきが人気のようで、夕方には売り切れてしまうことがよくあるという。
(最終訪問日:2024-10-15)
おすすめ③ 富士見そば「チーズそば」(静岡駅(静岡県))
静岡駅のJR東海道線ホームで営業している富士見そば。静岡駅には東海道新幹線も乗り入れているが、改札内で乗り換えられる路線はない。それにも関わらず駅そばを利用する客で賑わっている光景を見ると、さすが県の中心駅だという風に感じられる。さて、チーズそばであるが、シンプルに見えて食べ方にはコツがあると思う。そばの上に乗っているのはモッツァレラチーズなのだが、その溶けるスピードが速いので、気を抜いているとあっという間につゆに溶けたり沈んだりしてしまう。もちろんチーズが溶けてまろやかになったつゆも美味しいのだが、それだけでは少々もったいない。そこで(?)ポイントとなるのが一緒にトッピングされている揚げ玉である。この揚げ玉に溶けるチーズを上手く絡めることができれば、揚げ玉を介してチーズとそばを同時に味わうことができるのだ。味わい方は人それぞれであるが、私はこの食べ方が気に入っている。
ちなみに、富士見そばは朝7時30分からの営業であるが、東京方面から東海道線の始発列車(品川4時35分発)で西へ向かう行程の場合、静岡には7時33分に着き15分の乗り換え待ちとなる。なので、青春18きっぷで早朝から西へ旅行するのであれば、静岡駅の富士見そばは朝ごはんの有力候補になるのではないかと私は提唱している。
(最終訪問日:2024-01-09)
おすすめ④ 住よし「ワンコインきしめん」(名古屋駅(愛知県))
名古屋駅は言わずと知れた中部地方一のターミナル駅で、ホームでは名古屋名物のきしめんが味わえる。一応メニューにはそばも載っているのだが、私は一度もそばを頼んだことはなく、またそばを食べている人を見たこともない。JR名古屋駅のホームに漂うつゆの香りは凄まじく、降り立った途端きしめん屋につい引き込まれてしまう。住よしには多様なメニューがあるのだが、迷ったら定番の「きしめん(¥420)」か「ワンコインきしめん(きしめん+えび天)」をおすすめしたい。つゆはかつおベースなのだが、名古屋まで来ると関東とは少し違う優しい風味がどことなく感じられる。トッピングはねぎの他に「お揚げ」と「花かつお」がデフォルトだ。肝心の麺であるが平たいのにコシがあってかつ、のどごしが良いのが不思議で独特だ。店舗はJR名古屋駅の関西線ホーム(12,13番線)を除く全てのホームにあり、噂では「店ごとに味が違う」などとも言われている。ただし、「天ぷらが揚げたての店とそうでない店がある」という噂はどうやら間違いで、在来線全ての店舗で揚げたての天ぷらを提供しているらしい(※注)。また、在来線だけではなく新幹線のホーム(上下線)にも店舗があるのでぜひそちらも訪れてみたい。
(※注) 新幹線のホームにある店舗では、在来線の3,4番線にある店舗で揚げた天ぷらを運んできて提供しているそうです。詳しくは下の記事で紹介されています。
(最終訪問日:2024-08-16)
おすすめ⑤ まねきのえきそば「天ぷらえきそば」(姫路駅(兵庫県))
関西を代表する駅そばがあるのが姫路駅だ。まねきは姫路で長年親しまれる駅そばであり、天ぷらとそばの両方に大きな特徴がある。まず、天ぷらであるが、これは小エビが入っているものの薄くてとても柔らかい。例えるならばまるで巨大たぬきである。ただ、この柔らかく崩れやすい天ぷらは和風だしのつゆと相性が良い。そして、麺はかんすいが入った黄色い中華麺を使用しておりこれも珍しい組み合わせだ。このオリジナルの中華麺はまねきが保存が効くように試行錯誤してたどり着いたものだそうで、和風だしのつゆとの組み合わせによる美味しさには努力の過程を感じることができる。前述の通りまねきにはそば鉄のみならずファンが多く、駅そば以外にも持ち帰り用の乾麺やカップ麺の商品が展開されている。
(最終訪問日:2024-09-17)
おすすめ⑥ かけはし「じゃこ天ぶっかけそば」(松山駅(愛媛県))
(※注)まず申し上げなければならないこととして、JR松山駅は2024年9月に新駅舎に移行しましたが、私はリニューアルオープン後にJR松山駅を訪れていないため、この情報はそれ以前の古いものとなっております。訪問の際など詳しくは以下のサイトをご確認ください。なお、現在かけはしは閉店したそうですが、じゃこ天うどんは新駅舎にあるえひめしやという店舗で食べられるそうです。
じゃこ天とは魚のすり身を揚げて作られる愛媛県の特産品であり、かけはしを運営している安岡蒲鉾のじゃこ天は「ほたるじゃこ」や「おいひらぎ」などの魚を原料としている。そんなじゃこ天がそばに合わないはずがない。訪れたのは日曜日の昼時であったが、店内は満員の大盛況だった。早く食べたいという思いに胸を高鳴らせながら、名物のじゃこ天ぶっかけそばを注文する。しかしどうやらそばを頼む人は珍しいらしく茹でるのに少々時間が掛かるとのことであった。それでもじゃこ天をその場で切るなど盛り付ける様子が美しく、その職人技に魅力されてしまった。
冷たいそばだけあって麺のもちっとした歯ごたえを存分に味わうことができた。口に運ぶ前からすでに磯の香りを醸し出すじゃこ天は魚の旨味をぎゅっと閉じ込めていて、普通のかまぼことは明らかに異なる風味が感じられた。半熟卵も良いアクセントになっており、全く飽きることなく完食した。
(最終訪問日:2024-08-04)
おすすめ⑦ まるうまラーメンぷらっと博多「白旨ラーメン」(博多駅(福岡県))
博多には水炊きやもつ鍋、明太子など名物グルメが多くある。そんな博多駅ではなんとホーム上で本格的な博多ラーメンを味わうことができる。カウンターで提供されたラーメンを立って食べるスタイルはさながら屋台のようだ。営業時間も朝7時から夜11時までと長く、博多で降りて観光をする時間がなくとも乗り換え待ちや一本後の電車を待つ時間で手軽に立ち寄ることができる。
スープは豚骨ラーメンの割にはあっさりとしていて、代わりに細麺が油分を吸っていたように感じた。トッピングのチャーシューやキクラゲもクオリティが高くとても美味しかった。替え玉や麺の硬さを選べるのも嬉しい。そして何より楽しいのは九州を駆ける様々な列車を眺めながらラーメンを食べられることだ。長崎方面へ行く「リレーかもめ」や「ハウステンボス」に加え、大分行きの「ソニック」に、人気観光列車「ゆふいんの森」、さらに九州新幹線も見ることができる。
(最終訪問日:2023-03-16)
おすすめ⑧ 中央軒「かしわうどん」(鳥栖駅(佐賀県))
九州を代表する駅そばは鹿児島本線と長崎本線が分岐する鳥栖駅にある。九州の駅で最初の立ち食いうどん店だという中央軒で一番人気なのがかしわうどんだ。かしわというのは甘辛く炊かれた鶏肉のことであり、程よく柔らかいため口の中でほろほろと溶けていってとても美味しい。中央軒の特徴として挙げられるのはかけうどんがないことだ。つまり、かしわうどんがスタンダードということであり、全てのうどん・そばにかしわがトッピングされているのだ。薄味のつゆは味と香りの両方が素晴らしく、訪れたのは冬で風が冷たい時期であったが、心に染み渡る優しさに暖まったためとても印象に残っている。
(最終訪問日:2025-01-03)
おわりに
そば鉄と駅そばの魅力は伝わっただろうか。おすすめとして挙げた駅そばの他にもまだまだ魅力をお伝えしたい駅そばは多くあるので、またの機会に紹介できたら良いなと思っている。
(本当は2024年のうちに投稿したかったのですが、そばだけに結局年を越してしまいました…)これからもまだ見ぬ駅そばを目指して日本中を駆け巡っていきたいです。ここまでお読みいただきありがとうございました!
あなたも「そば鉄」いかがですか?