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職場でより良い人間関係を築くためのスキル「アサーティブ・コミュニケーション」とは?

「ついついストレートに言いすぎて、相手を傷つけてしまったかも…」
「面倒な仕事をまた引き受けてしまった…」

相手の意見に耳を傾けずに自分の意見を押し付けてしまったり、逆に相手の気持ちをうかがってばかりで自分の意見を言えずにストレスをためてしまったり、職場での人間関係にお悩みの方は多いのではないでしょうか。

今回は、職場でより良い人間関係を築くための、気持ちを伝えるスキル「アサーティブ・コミュニケーション」について紹介します。

アサーティブ・コミュニケーションとは?

アサーティブ・コミュニケーションとは、相手の意見を尊重しながら、自分の意見を正当に伝えるコミュニケーション方法です。

アサーティブ(assertive)には、「自己主張する」という意味がありますが、アサーティブ・コミュニケーションは、一方的に自分の主張をするのではなく、相手が主張することも大切にします。相手と意見が違った場合には、お互いに意見を出し合い、納得のいく結論になるよう歩み寄りながら解決方法を導きます。

アサーティブ・コミュニケーションは、元々アメリカの精神科医ジョセフ・ウォルピらにより、対人関係や自己表現が苦手な人のための訓練方法として開発されました。今では日常生活やビジネスなど、様々な場面で良好な人間関係を作るためのスキルとして重要視されています。

自己表現の3つのタイプ

アサーティブ・コミュニケーションを知るには、まずは自己表現のタイプを知ることから始めましょう。これから、自己表現のタイプを3つ紹介しますので、ご自身がどのタイプに当てはまるか考えてみてください。

アグレッシブ(攻撃的タイプ)

アグレッシブは、相手の気持ちを考えずに自分の意見を一方的に主張する「攻撃的」タイプです。アグレッシブには、次のような特徴があります。

・ 常に相手を見下し、自分が優位に立とうとする
・ 相手から指摘を受けると、言い訳をする
・ 自分の意見が通らないと、不機嫌になり暴言を吐く

自分の意見を伝えることが最優先で、受け入れられないと感情的になることもあり、相手からは疎ましく思われたり、意見を聞き入れてもらえなかったりすることも少なくありません。

自分が優位に立つことを優先させるあまり、相手を委縮させることも多く、良好な人間関係を築きにくいことが特徴です。

ノンアサーティブ(受け身タイプ)

ノンアサーティブは、相手の意見に寄り添うことはできますが、自分の意見を正しく伝えられない人を指します。アグレッシブとは真逆の「受け身」タイプで、次のような特徴があります。

・嫌な仕事を断れないため残業をしていることが多い
・あいまいな表現が多い
・困った時に周囲に頼れない

真面目で責任感が強く、優しい性格の人が多いのですが、周囲の目や評価を気にしすぎるあまり、無理難題でも受け入れてしまい、不満やストレスを溜めやすい傾向があります。

アサーティブ

アサーティブは、アグレッシブとノンアサーティブの中間のような位置づけで、2つの良い部分をバランスよく兼ね備えています。

・相手の意見に耳を傾けられる
・自分の意見をはっきりと主張できる
・相手と意見が違っても、お互いが納得できる結論を導ける

自分の意見を優先するばかりのアグレッシブでもなく、相手の意見を受け入れるばかりのノンアサーティブでもなく、相手の意見を尊重し受け止めながらも、自分の意見も正確に伝えられることがアサーティブの特徴です。

その場面に適した態度や言葉遣いで自分の意見を伝えるため、意見が違っていても相手を傷つけず、お互いが納得できるように解決することを最優先にします。

アサーティブ・コミュニケーションの実践で重要な「4つの柱」

アサーティブ・コミュニケーションを実践するためには、これから紹介する「4つの柱」を身に付けましょう。

(引用)特定非営利活動法人 アサーティブジャパン「アサーティブの4つの柱」
https://www.assertive.org/intro/

誠実

1つ目のポイントは、自分と相手のどちらも尊重し、「誠実」な態度と言葉遣いを心がけることです。

アグレッシブな傾向がある人は、自分と相手の意見が異なった時、一方的に反論するといった自己中心的なコミュニケーションになっていないか注意しましょう。逆にノンアサーティブな傾向の人は、自分の意見を押し殺し本意ではないのに賛同したり、忖度した態度は避けましょう。

率直

2つ目のポイントは、自分の感情を「率直」に、相手に伝わりやすい言葉で伝えることです。

アグレッシブな傾向がある人は、感情的になりすぎずに、相手が受け止めやすい言葉を選ぶことで、信頼関係が築きやすくなります。

ノンアサーティブな傾向がある人は、遠回しな表現で伝えたり、相手の反応を見ながら意見を変えたりするのは避け、自分の意見を率直に相手に伝わる言葉で主張しましょう。

対等

相手に対して威圧したり、萎縮したりするのではなく、「対等」な態度で向き合うことも大切なポイントです。どちらか一方が優位に立つと、アサーティブ・コミュニケーションは成立しません。

仕事をしていると、上司と部下といった立場の違いを感じる場面があるかもしれません。けれども、強い立場を利用して相手に自分の意見を押し付けたり、立場が弱いからといって自分の意見を押し殺したりすることなく、対等な態度と言葉遣いで相手と向き合いましょう。

自己責任

最後のポイントは、自分が言ったこと・言わなかったことについては、全て「自己責任」だということです。

「元々この意見には反対だった」と責任を押し付けたり、「みんな同じ意見です」と第三者の意見に置き換えたりするのではなく、言った責任も、言わなかった責任も全て自分にあると考えることが大切です。

職場でのアサーティブ・コミュニケーションの活用例

アサーティブ・コミュニケーションは職場で活用することで、業務を円滑に進めることが出来ます。職場でのアサーティブ・コミュニケーションの活用方法を紹介するので、ぜひ参考にして下さい。

●活用例
上司から急ぎの仕事を頼まれたが、自分は別の仕事で手一杯のとき…

-アグレッシブ
「今は忙しいので出来ません!」

-ノンアグレッシブ
「あ…はい、分かりました。」

-アサーティブ
「明日が締め切りの業務があるので、今日中には出来そうにありません。明日であれば時間 が取れますがいかがでしょうか?それか、他にもう一人手伝ってくれる人がいれば何とか 今日中に出来るかもしれません。」

アサーティブな態度を心がけることで、職場での対人関係のストレスを軽減したり、ハラスメントを防止したりすることにも繋がります。

まとめ

アサーティブ・コミュニケーションは、生まれもった性格を変えるのではなく、伝え方を工夫する方法です。一朝一夕で身に付くものではありませんので、いつも頭の中で意識しながら、繰り返し実践することが重要です。

相手の意見に耳を傾けつつ、自分の意見を率直に伝えるアサーティブ・コミュニケーションを身につけることで、職場で良好な人間関係が築けるようになるでしょう。

●参考
特定非営利活動法人 アサーティブジャパン「アサーティブの4つの柱」
https://www.assertive.org/intro/