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the day

GULIGULIさんが紹介してくれた日具さん。
ぽっと時間が空いたから会いませんか?と連絡をもらう。
お誘いの場所は島の反対側で、なかなか遠い上に(屋久島は結構大きい!)
今日は台風のバックスウェルで波乗りをしようと思っていたから少し迷う。
しかし、なぜだか早めに会っておきたい氣持ちと、島の北側でも波乗りできるかもと淡い期待を胸に、波のサイズが小さくても良いようにロングボードも積んで向かうことにした。

初めましての5分後に、車に乗り込む。
ここがどこか分からないまま、連れて行ってもらったのは
「島ではじめにご挨拶する」という場所。
杉が立ち並ぶ間に生えるクワズイモや
クス?に着生するオオタニワタリ、南の植物の気配と、
山岳信仰の気配が強く混じっていて独特な空気だ。
「岳参り」に詣でた男たちを家族が出迎えたという場所だそうだ。

頭まで苔むした仁王の石像。
その苔の上を2mmほどの小さなカタツムリが「岳参り」している。
山村浩二の頭山よろしく
仁王像の頭の上で壮大な世界が繰り広げられている。
「こんな風になりたい」とポツリと口から漏れる。
5mmほどの小さなキノコ、数センチに満たないシダの葉裏の無数の胞子や、青く光る地衣類。
ひとしきり眺めて、さて帰ろうと歩き出すと
目のチューニングが小さな世界に合ったままで
足元の高さと歩くスピードの速さにくらっとした。

お店に寄らせてもらう。
この旅で一番聴いているだろう青葉市子ちゃんの「海辺の葬列」がスピーカーから流れてくる。
いつも聴いている音とは少し違う乾いた音が、港のビルの2階の空気と合っている。
元ご近所おーちゃんの万華鏡。
初めましての場でありながら「また会ったね~」な氣持ち。
一枚だけ持って来ていた絵は、まさに見たいと思ってくれていた絵だったよう。
壁にかけてみると、みんなの気配に囲まれてすっと馴染んでくれた。
ご縁でそのまま、しばらくその壁にいてもらうことになった。

話は尽きず、また会いましょうとひとまず海へ。
台風の時にみんなが集まるというポイントへ連れて行ってもらった。
坂道を下ると岬の横の湾にきれいな形の波が割れていた。
駐車場には海から上がったばかりのサーファーたち。
「ついさっきまで良かったけどもうなくなっちゃたよ~」と。
しかしロングを持って来ていたので安心、貸切の海で充分楽しめた。
と、遠くの沖から2人のサーファーがやって来た。
そのうちの一人は初日に海で会ったAさんだった。
とても明るいAさんはとびきりの笑顔で話しかけてくれる。
「ヤッホ~!ここ教えてあげようと思ってたんだけど分かったんだね!」
そして、どうやらここからパドルで15分、湾を一つ移動するとシークレットポイントがあるそうだ。
そこの波がとても良かったから是非一本でも乗って欲しいとのこと。
「あと5人くらいいたから行けば分かるよ!日が暮れる前には帰って来てね!楽しんで!」
とちょうど来たセット波に乗ってAさんは海から上がっていった。

さてパドル15分。ひたすらに漕いでいく。
関澤製作所のヒデさんれいかさんとセッションして出来上がった
お守りのようなロングボードなので初めての海でも安心して漕いでゆける。
やがて見えて来た隣の湾には誰も見当たらず
(車でもエントリーできるそうで、みんな海から上がったようだ。)
しかしその小さな湾にブレイクするあまりにもきれいなレギュラーの波を見て、ここだろうと確信する。
ちょうど大潮の満潮で、たっぷりとっぷりと分厚い波はとろけるようだ。
サイズは充分あるがメローな波でロングのシングルフィンにぴったりだった。
遠くの山に夕日が沈んでいく。
誰もいない海で波を探し当てたような。
どこか海外へサーフトリップに来たような時間だった。

翌日もまた違うポイントで入っていると、
どのサーファーもにこやかに挨拶を返してくれる。
「昨日シークレット入ったの?当てたね~!」と嬉しさと悔しさの入り混ざった表情。

「サーフィンしてれば大丈夫だと思うよ◯」
仕事を辞めて旅に出るときに友人が言った言葉がふと思い出される。
海の上での出会いが、人を土地を数珠繋ぎに出会わせて行ってくれる。
やはり波乗りは最高である。

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沖縄本島ラストナイトに波羅蜜でアストロマップというものを見せてもらった。
ホロスコープで見るその人と土地との関係。
屋久島に火星のラインがバッチリ入っていて、
「屋久島なかなか刺激的な旅になるかもね」という予言のような言葉をいただいた。
これが火星的なのかは分からないが、
毎日波乗りしていてやることが追いつかない。
また南に台風が来ているので、せめて今日明日だけは集中して作業しようと
今急いでこれを書いている。


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