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「悪」について

あなたがよく見ていたテレビ番組は、主人公が敵をやっつけるタイプのものが多かった。仲間と協力して悪を倒す(それを見てぼくは「いじめじゃないか!?」って思ったことがあるけど)。
ただ、最近は敵側にもいろんな背景があることが描かれることが多いので、それはそれでいい傾向だとも思う。

ふと考えてみると、インターネットで正義の味方のように不祥事を起こした芸能人とかをたたく人って、もしかしたら、昔のただただシンプルに悪者が正義の味方に成敗されるような勧善懲悪の話をみて育ってきた人が多いのかもしれないね。
知らず知らずのうちに自分が正義のヒーローになって、悪いことしてる奴らを成敗している気になっている。
「悪」である彼らの背景が描かれていない物語ばかり見てきたから、それらを想像するだけのポテンシャルを持っていないんだろう。

ところで、「悪」って、悪いことってなんだろう?
犯罪とかルール違反かな。
法的に規定されていなくても、人を傷つける行為全般が悪いことだっていう気もする。

じゃあ、それらをしたいと心のなかで思うことは悪いことなのだろうか。行動はしないけど「殺したい」と思うことは?
いまの世界では思うことは自由、という扱いだけど、もしかしたら思っただけで犯罪になる世界がやってくるかもしれない(そういうSFもある)。
というか、一般的には悪いことを思うだけでもよくない、という風潮はある。「そんなこと考えちゃいけません!」とかね。
で、もし「殺したい」とか「やっつけたい」と思うことが「悪」ならば、ヒーローのなかにも「悪」があるんだね。だって、敵をやっつけたいと思っているんだから。

まあそれでいいのかも。
自分のなかにある悪に無自覚で、人をやっつけようとするより、自分のなかにも悪があるってことを自覚しているほうがいい。
さっきも言ったけど、「自分は正しい」と思っている人ほど躊躇なく人を傷つけるから。

一方で、自分のなかに「悪」の要素があると思うことが耐えられない人もいるのかもしれない。
「自分は正しい」と思わないと生きていけない人もいるのだろう。「自分は正しい」という思い込みがもう「間違っている」ような気がするんだけど、それはまあいいか。

だからもしあなたが気に入らないと思う人がいたとしても、その人自身を否定しないようにして欲しい。ほかの人から見たら、あなたのなかにも気に入らない部分とか「悪」があるのだろうから。
なので、できれば「この人はこうやって考えて、こういう言動に至ったんだな」というところまで考えてみて。
そうやって理由がわかっても、まだ許せなかったとしたら。そのときは彼の行為に対して抗議すればいい。ただしそれでも、その人自身は否定しないであげて欲しい。

ただし世の中には理性的に話をしても、反発して食ってかかってくるような人もいる。こっちからしたら支離滅裂な内容を一方的に投げてきて、攻撃してくるような人。
もし相手がそのタイプだったら、物理的にもしくは心理的に、そっと遠ざかってください。それはもう、相手にするのは無駄な物体だから。あ。ぼくの悪が漏れた。

まあそこまでいかなくても、どうしても受け入れられない人が出てくることもあるだろう。
そんなときは、その人自身を否定したくなるような自分のなかの「悪」に目を向けた上で、その人を否定して欲しい。
自分のなかにある「悪」を安易に誰かに投影して、敵とみなすようなことだけはしないでください。
あなたのなかにも「悪」の部分があって、それでもあなたはいい子なんだから。
ただし、ひとつだけ。
あまりに人のことを考えすぎて受け入れすぎて、あなた自身が消耗しないように気をつけてね。「悪」を抱えたあなたやぼくは、たまにはそれを放出しないと生きていけないのだから。

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