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うつ病と脳の関連性

全くの推論です。
いつもの思考遊びに近いのです。
(^_^;)

うつ病と言えば、モノアミン仮説という仮説があります。
モノアミンとはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質の総称です。
鬱病に関しては、ノルアドレナリン仮説、セロトニン仮説、ドーパミン仮説があります。
このうちドーパミン仮説というのは、報酬物質(この呼び方もどうかと考えておられる研究者もおられるようです)でもある、脳内ドーパミン機能が低下してしまい、鬱症状が出るというものです。
うつ病の主な症状には、次のようなものがあります。

  • 抑うつ気分、気分の落ち込み

  • 興味や喜びの喪失

  • 食欲の減退や増加、体重の減少や増加

  • 不眠や睡眠過多

  • 精神運動性の焦燥や制止

  • 易疲労感や気力の減退

  • 無価値感や過剰な罪責感

  • 思考力や集中力の減退や決断困難

  • 死についての反復思考や自殺念慮、自殺企図

「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の改訂で、おそらく以前の鬱病と似たような症状を呈した場合、社会的不適応を示すものの多くをうつ病という診断の括りに入れたため、昔のうつ病とは診断基準が異なるようになっていて、本来の疾患的な意味合いが少し希薄になった気もしますけれど。これはこれで「どうかなぁ」と思ったりしていますけれど。
(^_^;)

それでも、このうち、興味や喜びの喪失・食欲の減退・睡眠障害・精神運動の制止・駅疲労感や気力の減退・無価値感・思考力や集中力の減退や決断困難などの症状は、脳の情報処理が現象もしくは遅延したような状態と考える事が出来るのだと思うのです。
これらの症状はドーパミン機能の低下と考える事が出来るのだろうと思います。

ドーパミン仮説というのは、うつ病の原因としてドーパミン機能が関わっているのではないかという仮説ではあるのですが、実は、これは原因ではなくてドーパミン機能と鬱症状は相関関係があるだけではないのかという事を思わせる研究が近年発表されました。

Key Brain Protein Tied to Motivation and Mood Identified
(やる気や気分に関係する重要な脳タンパク質が特定される)

この論文では、アストロサイトの小胞ヌクレオチドトランスポーター(Vnut)が特定され、アストロサイトからVnutが除去されたマウスでは、不安、うつ病のような行動、およびモチベーションの低下が見られたそうです。
この減少は、ドーパミンの減少に関連しているためアストロサイトのVnutがドーパミン調節に関わっていることを示唆しているとしています。

脳の研究者の中には、うつ病はアストロサイトの炎症が引き起こしているのではないかと言う仮説を持つかたもおられるようです。

この話題については、アストロサイトのVnutがドーパミン調節にどの様に関わっているのかと言うこと、アストロサイトの炎症でVnutの機能が失われると言うこととその機序、アストロサイトを中心とした炎症がどの様に引き起こされるのかと言ったことなど、まだ解らないことも多いのだろうと思うのではあります。

仮に、なにかしらの原因でアストロサイトの炎症が起こり、Vnutの機能が阻害され、ドーパミンが減少して鬱症状が出現するという仮定を正しいとするとですね。

鬱症状というのは、もしかすると、アストロサイトの炎症を広げないために情報処理に制限を加えているのかも知れないなぁと思ったりするのです。
もちろん、この仮定には、上記の仮定のうえに、脳の情報処理が活発に行われるとアストロサイトの炎症の回復が遅延する或いは広がると言った可能性を考えなければならないのですけれど。
ただ、アストロサイトはグリンファティックシステムにより脳の中の環境を整えていることを考えると、こう言った仮説も荒唐無稽というわけでは無いような気もします。

まるで身体の怪我などの損傷が起きた際に、痛みというサインが出現して、損傷が起きた場所の動きを余り起こさせないようにして、組織の回復に努めていくようなメカニズムが脳の中にも存在しているのかも知れないと云った発想なのです。
(*^_^*)

そう考えると、うつ病と言われる人に「ガンバレ」とか励ます行為が余り望ましくないという事が脳科学的な根拠につながることもあるのかも知れませんね。

さて、脳梗塞など、脳損傷の場合、脳卒中後うつ病(Post-Stroke Depression:PSD)という病態が知られています。


発生率は、18〜33%だそうです。文献によって差がありますが、私がざっと調べたところ、45%というものも在りました。比較的多いですね。
脳梗塞などの、脳卒中については脳の内部が損傷を起こす訳ですので、アストロサイトも影響を受けています。従って、上記の機序のような仮説も考える事が出来るのだろうとは思います。
ただ、脳卒中の場合は、例えば右脳損傷(左片麻痺)と比較して、左脳損傷(右片麻痺)のほうが鬱症状を起こしやすいことが知られていたりします。
(左前頭葉障害仮説ーRobinson)
また、突然起きた麻痺という身体環境の変化、環境に対する適応力の低下、家庭から病院に入院すると言った環境変化など様々な要因も関係していることでしょう。
ですので、単純にアストロサイトの問題のみを取り上げることは出来ないようにも思います。

いずれにしても、脳の中で何が起きているのかという事を知ることは、その対応やリハビリテーションの在り方を考える上で重要だと思いますので、こういった部分の研究が進むことを期待すると同時に、こういった側面の評価・観察・考察も大切そうですね。

それに、ドーパミンは運動学習にも非常に大切な神経伝達物質のひとつですから。
(まぁ、大切でない伝達物質など無いのですけれど)


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