単数なのに they って言うの知ってました?
ここにも時々書いていますが、会社を辞めてから僕は趣味で英会話を学んでいます。
で、長いこと英語に親しんできて、昨日ほど驚いたことはありませんでした。
そんなこと知らなかったのか?とおっしゃる方もおられるのでしょうが、僕は初耳で、結構ショックを受けました。
何かと言えば、英会話の教科書に載っている文章で、時々単数の主語を he や she ではなく they で受けていることがあって、初めて目にしたときは誤記かなと思ったのですが、何度か同じようなケースが出てくるんですよね。
例えば、昨日出てきたロールプレイの説明文には、
などと書いてあります。
それで昨日のレッスンの際に先生に「これ、なんで they になってるんですか?」と訊いてみたら、「 he とか she とか書くのを避けるため」という極めて単純な答え。 ──ん? その答えを聞いても僕は何のことか見当がつきませんでした。
それでもう少し聞いてみると、これは性自認が所謂 non-binary な人たち(自らを男性・女性のどちらでもないと認識している人たち)への配慮なのだそうです。
うーむ、これ、PC(Political Correctness)のボキャブラリーだったんですね!
しかし、それでもまだ怪訝な顔をしている僕に対して、先生が例として続いて提示してくれたのは Instagram のプロファイル・ページでした。
英語版のそこには確かに名前の横に「自分のことをどう呼んでほしいか」を書く欄があり、ある人のところには they/them と書いてあります。つまり、「三人称で私のことを表すのに he や she、him や her は使わずに、they/them と言ってほしい」ということ。
え、そんな欄、日本語版にもあるのか?と思って、自分のインスタのプロファイルを見ると、確かに「代名詞の性別」という欄が設けてあり、僕の場合は空欄になっていました。あ、僕もここ埋めといたほうが良いのかな?
しかし、知らないうちにそんな時代になってたんですね。一部の人たちがそういう風に書こうと主張しているのではなくて、今や英会話の教科書がごくフツーに採用するくらいに広がった表現なのです。
でもね、これ、日本人にとってはめっちゃややこしいんですよ。
単数なのに they を使っているのがまず分かりにくいのです。そして、主語が they だと、この場合も当然動詞は複数形で受けて、is ではなく are、does ではなく do になるんです。つまり、文型からはそれが「彼ら」なのか「he でも she でもない誰か」なのか区別がつかないわけです。
どっちかと言えば、後者の場合は they is, they does になってくれたほうがよっぽど分かりやすいのですが…。
しかし、それにしても、単数/複数形も男性/女性名詞の別もない日本語と違って、数や性に対してやたらと meticulous なヨーロッパ言語のひとつである英語が、どうしてこんな紛らわしい表現を採用したんでしょうね。
と言うか、逆に言うと、言語が性に対して meticulous であったがために出てきた弊害であるとも言えますね。
先生によれば、この they の用法に関しては有名な笑い話があるとのこと。それはこんな話です:
笑えます? なんか、笑えなくないですか?
本当にあった話なのか、それとも誰かが作った(あるいは盛った)話なのかは知りませんが、ロシア人という設定がミソで、つまり、我々日本人も含めて、非英語圏の人には却々理解しにくいことなんだと思います。
ところで、先生の甥子さんも実は non-binary なのだそうで、彼女も(この先生は「彼女」と言っても差し支えないみたいです)甥がそばにいるときには言葉遣いにかなり神経を使う(けど時々失敗する)とのことでした。
うーん、えらいことです。
いっそのこと they ではなくて、例えば fe/fim とか thie/thim(the だとザになっちゃうので)みたいな造語を新たに充ててくれたほうが分かりやすいのにな、と思います。
そう言えば he とか she とか書くのを避けるために s/he という書き方もあると聞いたことがあります。
しかし、なんであれ、めっちゃめんどくさいですね。
誤解のないように書いておくと、僕は「non-binary の人に気を遣ってそんな表現をする必要なんかない」と言っているのではありません。ただ、英語を学ぶ外国人にとっては、これまた難儀なハードルやな、とちょっとショックを受けた次第。
皆さんはそんなことになっているのをご存じでしたか?