たとえテレビ番組であってもインターネットの商品はインターネットのルールで売る
(すんません、以下の文章はちょっと専門的すぎて、一般の方には分かりにくいかもしれません)
先日、とある同時配信関連のウェビナーに参加しました。
登壇者は端的に言って「同時配信やるべし」の人たちばかりでしたが、それは今となっては当然だと思います。
私はテレビ番組のインターネット常時同時配信については、かつて社内で一貫して反対の立場を取っていましたが、それは同時配信を行ったら害があるとか、同時配信はやるべきではないということではありません。
私が言いたかったのは、同時配信よりもまず見逃し配信の拡充、つまり、全番組の見逃し配信実現を目指すべきであって、それに比べると同時配信はユーザにとっても局にとってもプライオリティが低い、ということでした。
加えて、同時配信にかかる費用を営業的にどう回収するのかというのが、私が一番懸念していた点でした。民間企業である限り、ずっと赤字のまま続けるということにはどうしても無理が出てくるのです。
結局はテレビ番組とは別売りにするという方向性が見えてきたので、それならばやればいいんじゃない?というのが私の今の考えです。
今回の登壇者の皆さんは、単にテレビ番組を同時配信するというだけではなく、その番組に対して「何も足さない 何も引かない」、つまり「法律を改正して同時配信も“放送”であるという扱いにして、CMも含めて地上波の放送と全く同じものを流せば、権利クリアも楽になるし視聴者の利便性も上がる」という考え方の人がほとんどだったように思います。
その主張があまりに強く感じたので、私は
とチャット欄で投稿したのですが、何をどう取り違えたのか、登壇者の一人に
みたいなことを言われてしまいました。これはちょっと困ったちゃんです。別に同時配信をやめろと書いたわけでもないのに。
それに今や配信は圧倒的な成長領域であり、その利益は決して「小さな儲け」などではありません。
しかし、そんなことを書くと「小さな儲けじゃないと言っても、地上波の収入と比べるとまだ桁が違うではないか」みたいなことを言われて堂々巡りになる可能性もありますし、逆に「配信するコンテンツがいっぱいあるキー局、準キー局は良いが、ローカル局は置き去りにされる」みたいな、ここでの議論とは違う方向に流れてしまう可能性もあるなと思ってやめました。
別の登壇者から、同時配信を別売りするのではなく、テレビの提供料金に含めて売れば良いのに、みたいな話も出ました。でも、営業経験者なら分かるでしょうが、同時配信を始めるからと言って既存提供社から追加料金をもらえるなんてことはまずあり得ません。
折しも他の受講者の方から、「テレビは率で、ネットは人数(視聴回数)で売っているので、統合はできない」との指摘もありましたが、問題はそれだけではないと私は思っています。
インターネットでの売り物はインターネットのルールで売るべきだと私は強く思うのです。インターネットの商品をテレビのセールスに含めてしまうのは本末転倒だと思うのです。それはテレビの奢りではないでしょうか?
テレビに出稿はしたくないけどネットの広告なら買いたいというスポンサーもあります(そして、そういう会社は今後も増え続けるでしょう)。予約型を買う気はないけど、PMP なら出してみたいという会社もあります。そういうクライアントに売るチャンスを自ら放棄することはないと思うのです。
もっと言えば、将来(近い将来ではないけど)テレビを分社化して、インターネットをメインに事業展開して行くという可能性も決して否定できない中で、「いや、インターネットではテレビ提供社の CM を垂れ流してました」では取り返しのつかないことになるのではないかと心配しています。
壇上の皆さんは概ね、「権利クリアの煩雑さがあるから配信が進まない。配信も放送だということにしてしまえばその問題は一気に解決する」みたいなイメージをお持ちのようでしたが、当日聴講者から登壇者に引き上げられた音事協の方がおっしゃっていたように、実演家の権利許諾作業はすでにかなりスムーズになってきています(報告と配分については依然として吐きそうになるぐらい煩雑ですが)。
だから「何も足さない 何も引かない」にこだわらずに、今のまま別セールスでリアルタイム配信を進めて行けば良いではないですか。そのことを言いたかったのですが、うむ、私の書き方が悪かったのでしょうかね。
──みたいなことを含めて、いろいろチャット欄に加筆しようかとも思ったのですが、向こうは自由に喋れる登壇者、こちらはしこしこ書き込むしかない1聴講者という立場もあり、また、1聴講者があまり時間を食ってはいけないという遠慮もあったりして、結局書くのをやめました。
で、書くのをやめちゃったらなんかもやもやしてきたので、ここに書いてしまいました。すんまそん(笑)
ま、いずれにしても、登壇者の皆さんも私も、同時配信(リアルタイム配信)はやれば良いという立場なので、別に論戦を交えるようなことではないのかもしれません。その処理方法はおのずと固まって行くでしょうから。