近年、プロ野球が俄然面白くなってきた
僕らのようなオールド・ファンからすると、近年プロ野球が俄然面白くなってきたと思う。それは昔に比べて選手の流動性が遥かに高まってきたからだ。
僕らの小さい頃は、子どもたちの好きなものとして「巨人、大鵬、卵焼き」という表現があったように、子どもたちはみんな読売ジャイアンツが大好きだった。
僕が生まれ育ったのは大阪だったので、当然阪神ファンも多かったが、しかし、小学生がフランチャイズ制に乗っかって阪神ファンになるのはもう少し成長してからで、子どもたちの大半はまだ巨人ファンだった(そして、少なからぬ子どもたちがその後、阪神ファンに転ずるのだが、不思議なことに阪急、南海、近鉄ファンになる子は、少なくとも僕の周りではほとんどいなかったw)。
子どもたちに一番大きく作用したのは、やはり当時の巨人軍には王・長島というスーパースターがいたということもあるのだが、何よりもテレビでほぼ毎日放送されるのは巨人戦だったということだ。
今よりも遥かにテレビっ子だった子どもたちは必然的に巨人ファンになったのである。
それは日本テレビが、同じ読売新聞資本系列だということで後楽園球場の巨人戦の放送権を独占できたということもあるし、何よりもその巨人戦をテレビ番組の目玉にする戦略を採ったからだとも言える。
そういうわけで読売巨人軍は大人気だった。高卒、大卒の選手たちの多くが巨人軍に入りたがった。アニメの主人公も多くは巨人の選手だった。
球団に人気があるから多くの選手が巨人に入りたがって、その結果多くの優秀な選手たちが集まったとも言えるだろうが、人気があるから観客が集まり大きな収入を得ていたのでお金がたくさんあって、金に飽かして優秀な選手をかき集めてきたとも言える。
どっちにしても巨人軍には良い選手が集まるので、おかげでチームは強く、9連覇するほどの独走ぶりで、それによってファンが増え、観客動員が増え、収入が増え、それを使ってまた有望な選手を独占するという時代が続いたのである。
しかし、その後次第に時代が変わり、ドラフト会議(1965年に始まった)をはじめ、さまざまな制度面で各球団の公平性が図られ始めたことによって、巨人も好き放題に選手を集めることはできなくなった。
しかし、だからと言って巨人の人気に急に陰りが出たわけではない。それでもやっぱり巨人に行きたい高校生や大学生が依然としてかなり多かったのである。めちゃくちゃ揉めた江川卓だけではなく、他球団に指名されても巨人以外は全て拒否するような選手たちが結構いたのだ。
そして、やがて FA 制度も始まったのだが、FA権を獲得したら巨人に行きたいという選手も非常に多かった。
結局いつまでも巨人の天下で、それでプロ野球は面白くなかったと、僕なんぞはそういう捉え方をしている。当然巨人ファンはそんなことは微塵も思っていないのだろうけれど…。
僕自身は小学生の時に周りが阪神ファンと巨人ファンと、一握りの阪急ファン(何故阪急ファンがいたのかについてはここでは割愛します)ばかりなのに嫌気が差して、それで東映フライヤーズのファンとなり、以来50年以上、僕は彼ら(今は北海道日本ハムファイターズ)を応援しているわけだ。
で、近年何が変わってきたかと言うと、冒頭にも書いたように、選手の流動性が高まったきたということだ。つまり、何が何でも巨人軍で(あるいは特定の球団で)プレーしたいという選手が減ってきた。
FA 権を得た選手たちが、それぞれ独自の価値判断でいろいろな球団に転ずるようになってきた。
更に、今では多くのトップスターの選手たちが米大リーグを目指すようになってしまった。大谷ばかりが注目されているが、これはやっぱり村上、野茂、イチローらの先駆者の努力と功績の賜物である。
そういうわけで、シーズン・オフになると、FAで他球団に行く選手や海外FAやポスティング・システムでアメリカに渡る選手などが次々に出てきて、シーズンが終わるたびにレギュラー選手の入れ替わりが激しくなってきたのである。
エースが大リーグに行ったり、主力打者が他球団に移ったりして、来季は昨季と全く同じ戦力で戦うなんてことが稀になってきたのである。
その一方で、僕らの子ども時代にはありえなかった、育成契約や現役ドラフト、FA の人的補償などからいきなり大活躍するような選手も出てきて、もはや何が起きるか予想がつかないのである。
だから、昨年ペナントを獲った球団でも全く油断はならない。昨年最下位だったからと行って今年もダメと最初から諦めることはないのである。
そして、テレビ離れなのか野球の人気の陰りなのかは知らないが、幸か不幸か、テレビでは毎日巨人戦を目にすることがなくなった。
その上でチャンネル数の増加や、配信の登場によって、我々はいろんな球団の試合を見ることができるようになった。考えてみたら、今ほど大リーグの試合をテレビで見られる時代はなかったしね。
そんないろいろなことのおかげで、巨人ファンが圧倒的に多いという図式がうまい具合に崩れてきたのである。
それも選手の流動性が高まってきた遠因だと僕は思っている。
だから、50年以上も、どちらかと言うと弱くて人気のない球団を応援してきた僕からすると、俄然プロ野球が面白くなってきたと感じるわけだ。
とか、
とか、
とか、いろいろ考えながら開幕を待つことになるのである。
いちいち具体的な事例は書かないけれど、いやぁ、とりわけ今年は、本当に愉しみである。
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プロ野球については、過去(2023年の開幕前とシーズン終了後)にこんな記事も書いています: