【note】人の心に巣食うもの
夢の記憶
澄んだ山の上から、ゆっくりと下りていく。
静かな森林に、涼やかな空気。
心地よい空間に包まれながら、舗装された道路を歩いていた。
ふと、見慣れぬものが見えてきた。
工事車両…?
トラックには、伐採された木が積まれており、複数人が作業している。
間伐でもしているのだろうかと思ったが、歩みを進めると、どうにも伐採を進めているようだった。
樹齢の長い木々で包まれた閑静な森が、徐々に切り開かれている。
歩みを進めると、とても大きな巨木が切り倒されているのが見えた。
その近くには赤いのぼりがあり、稲荷神社と書いてある。
御神木すら、切り倒してしまうのか…
その先にある小さなお社も、解体の途中のようだった。
ほんの少し進むと、完全に視界が切り開けた。
本来あったはずの森林はなくなり、建売住宅用の土地となっていた。
これを作るために、切り倒したのか。
人が住むため、生きていくため仕方ないのだろうとも思うが、心が痛い。
ぽつぽつと建っている住宅の間を通っていく。
その中のひとつ、真っ白の家が目に留まった。
正確には、その家の陰に生えかけている蔦。
これは<チル>という。
知らないはずの、「識っている」知識が、すっと頭に浮かぶ。
これが生えてきたら、早めに業者に連絡しなければならない。
専門業者にしか処理できないのだ。
光に照らされた表の庭では、家族が楽しそうに遊んでいる。
蔦は陰に生えるので、気づかない人の方が多いらしい。
この家族もまた、気づいてはいない。
このまま放置すれば、いずれこの蔦は家全体を覆い、家の中にまで陰を落とすことになる。
夢の後で
起きた時の気分を、どう表現したら良いのだろう。
私には、あの蔦を処理する力はなかった。
あの家族に伝えることもできなかった。
家の敷地には、見えない光の壁があり、干渉する余地はなかったのだ。
見えているのに、どうすることもできない。
願わくば、自らその蔦に気づき、処理をしてくれることを…
考察
あの家は、人の心だ。
昔は神社があり、それがあの蔦を若干でも抑制していた。
それを解体してしまっては、蔦が蔓延ることになる。
人は、この蔦の対処を知っていかなければならない。
<チル>とは
なぜ、あれが<チル>と呼ばれるのか。
イメージの深層の世界のことなので、はっきりと理解できるものではないが、まず起きて最初に連想したのは、「chill out」だ。
くつろぐ、のんびりする、という意味のため、リラクゼーションドリンクとしての商品名にも使われている。
チルする?というCMも見た覚えがある。
ただし、夢で感じた響きは、非常に冷たいイメージだった。
そっと寒気を覚えさせるような、どちらかというと本能的な危機感を呼び起こすもの。
後で調べてみると、英語としての「chill」はもともと、冷たさ、悪寒、恐怖などの意味を持つらしい。
俗語としては、殺意まで表すようだ。
さすがイメージである夢の世界、英語がさっぱりの人間でもそのはかとなく意味を表現してしまうようだ。
人の心に巣食う
これへの効果的な対処の仕方を、私は知らない。
ただ言えるのは、自らの心は、自らの力で整えていかなければならない、ということだけだ。
他人がそうそう簡単に手出しできるものではない。
なぜならば、手を出そうとしても蔦に拒絶されるからだ。
蔦にとっては死活問題。
宿主を操り、差し出される手を振り払わせる。
私自身もまた、この心に寄生する蔦が芽を出さないか、悪さをしてこないか、
細心の注意を持って、観察していかなければならない。
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